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第5話 クラスメイト

 目が覚めたら、ベッドの上にいた。そして、見えている天井は大理石で出来ている。


 先程よりは頭痛が弱まった。熱は徐々に落ち着いているようだ。


 神父はここに居ないようだ。とにかくここから離れないと!


「!?」


 ベッドから起きようとするが、縄に縛られていた。動けない……。


 このままだと確実に死ぬ……。死ぬのは嫌だ! お友達が作れなくなる……。


 どうすれば……。


「せ、聖女様! 大丈夫ですか!」


 すると部屋の窓の外から声がした。この声は……おっさん!


「い、今助けます!」


 意外だった。


 どうしてボクを助ける? ボクは君を脅したのに……。


 助けられる理由は不明だが、非常に都合が良い。


 おっさんは頑張って窓から入ってきた。おっさんは太っていたので、時間がかかった。


「ありがとう」

「い、いえ」


 おっさんは縄を解いてくれた。


 フラフラするがギリギリ歩ける。


 ボクは窓から簡単に外に出た。しかし、おっさんは窓に挟まった。


「す、すみません。役立たずで……」


 ボクはおっさんの手を引っ張って、出るのを手伝った。中々抜けない。


「トンさん? 何をしているのですか? 確か脱走させるのは貴方の仕事ではない気がするのですが」


 おっさんの奥から神父の声がした。タイミングが最悪だ。


「し、神父様!? 俺はもう貴方の手伝いをしません! 今日、祭りが終わるまで悩んでいた俺が愚かでした、貴方みたいな外道なんて、神父失格です!」


 おっさんは全力で話した。


「ああ、確かに私は外道だ、だけど君も同類だよ」

「わ、分かってます! 俺も外道だというなんてぐらい! それの罪滅ぼしにはならないけど、聖女様は逃がします! 聖女様! 俺の事なんて良いから、逃げてください! 聖女様を誘うんじゃなかった! 本当にすみません!」

「ん? 分かった、ありがとう」


 ボクはおっさんの手を離して、逃げた。


 別にお友達じゃない人、どうでもいいし。でも、後でおっさんをお友達にしたいなあ。


 何故か助けてくれたから。


「聖女様! 俺、貴女に褒められた時、貴女に惚れました! 生きてください! 本当にすみませんでし――ぐぅ! 鉄壁!」


 おっさんがスキルを使って、神父の攻撃を耐えてくれている。非常にありがたい。【使者】を探す余裕も出来た。


「トンさん、とても邪魔です。早く消えてください」


 神父はイライラしながら、おっさんに剣で攻撃していた。


 おっさんが窓を丁度塞いでいるのがとても邪魔らしい。そして、おっさんの尻が硬い。


 配下ネットワークを使って【使者】を呼ぶが、やはり反応しない。配下ネットワークで場所を確認した所、神父の屋敷は先程祭りが行なわれている所から少し離れていた。

 

 とりあえず【使者】の所まで目指す。


 熱でフラフラして、何回も転ぶが、怪我なんて無視して走る。そのせいで足が血だらけだ。とても痛い。


 しばらく走ると、遠くで【使者】の姿が見えた。まだ神父は追って来ていないようだ。


 ボクは重たい足を動かして、【使者】に近づこうと歩く。もう足の状態がとても走れるものではないし、出血のせいで頭痛が酷くなっている。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 視界がぼやける……身体が重い……休みたい……このまま倒れたい……。


 身体の状態がもう限界だった。いつ意識を失ってもおかしくは無い。


 しかし、ここで倒れると死亡する事は分かっているので、無理矢理身体を動かす。


「はぁ、はぁ、は、は、はやくしないと……うっ!?」


 バタン


 足が限界を迎え、ボクはその場で倒れた。もう歩く事は出来なくなった。


 歩く事が出来なければうしかない。ボクは地面を這った。


 ジュル、ジュル……


 腕を使って、前へ、前へ、前へと。


 必死に地面を這った結果、やっと【使者】の近くに辿り着いた。もう全身血塗れだ。


「ししゃ、たすけて」


 もう声なんてほとんど出なかった。


 しかし、無情にも【使者】は反応しない。


「し、しゃ」


 もう身体が限界で何も考える事が出来なかった。


 だから、ただ【使者】の近くに行く事だけを目標に地面を這う。


 【使者】の目の前に着いた時、見えない壁に当たった。見えない壁が【使者】を囲っていたのだ。非常に絶望的な状況だ。


「貴女、頑張りますね。血の道が出来ていますよ。それ以上、その綺麗な身体に傷を与えないでください、せっかく神様から美しい身体を授かったのですから」


 ボクはゆっくりと首を後ろに向けた。


 神父がもう後ろにいたのだ。とても悲しそうにこちらを見つめている。


「さあ、私の屋敷でゆっくりと休みましょうか」

「や、やめて」


 神父がボクを抱えた。神父の悲しそうな顔の裏に下心たっぷりの笑みが見える。


「まずは怪我を治しましょう、ヒール」


 神父は歩きながら、ボクに回復魔法をかけた。


 暖かい光に照らされ、感覚が麻痺していたボクの身体が徐々に感覚を取り戻す。


「私の屋敷に帰ったら、まずはお茶会をしましょう。そして、私と永遠に……ククク」


 神父が気味の悪い笑顔をこちらに向けた。


 この時、ボクの怪我はほとんど治っていて、どのようにこの状況を抜け出すかを考える余裕は出来ていた。


 【使者】はこの人のスキルで閉じ込められているんだよね。


 確かこの状況になった時は……ボクの元にすぐ来られるお友達……【クラスメイト】! そう、【クラスメイト】だ!


 ボクが【クラスメイト】を単なるネームドという理由で探索をずっと頼んでいた訳では無い。


 【クラスメイト】には特殊なスキル、【忠誠ちゅうせい】があるのだ。このスキルは何時でも、主であるボクの元に転移出来るスキルだ。


 【クラスメイト】はそのスキルを持っている為、探索で危険な目にあってもそれを回避出来る。だから、探索に丁度良い。


 まさかボクを守る為に使うとは……ボクって情けないないなぁ。配下ネットワーク起動。【クラスメイト】、ボクを助けて、お願い。


 【クラスメイト】がボクの近くに現れた。


「!?」


 神父はとても驚いているようだ。まあ、何もない所から突然、何かが現れたなら誰でもこうなる。


「魔族の方ですか?」


 【クラスメイト】は人間を無理矢理人形にした姿だから、別の人型種族だと勘違いしているようだ。


 もちろん人形は言葉を発せない為、無返答。【クラスメイト】のウーノとドゥーエが神父に襲いかかり、トレが【使者】の方向に向かった。


 【クラスメイト】はどれもLvが30であり、共通スキルとして【忠誠】を持っている。背が一番低いのがウーノ、中間なのがドゥーエ、一番背が高いのがトレだ。


 ウーノは1を表し、素早く、手を刀のように使う事が可能で暗殺が得意だ。


 ドゥーエは2を表し、身体が鋼みたいで肉弾戦が得意だ。


 トレは3を表し、回復や解呪の魔法を多く習得していて、サポートが得意だ。【使者】の元へ向かったのも、【クラスメイト】はLv30であり、どう足掻いてもLv48の神父には勝てないので、【使者】を閉じ込めている壁を解除しに行ったのだ。


「人の質問を無視して襲いかかるなんて、やっぱり魔族はけがらわしい。聖女様、ここで待機していてください、一瞬で片付けてきます」


 神父はボクを大事におろして、応戦した。


 ボクはまだ動けなかった。怪我が治っても、熱は治っていなかったのだ。

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