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第2話 謎の魔術師

「人の皮を被った悪魔め、俺はお前を絶対に許さない!」

 

 令嬢の隣りにいる青年が剣を構えた。その青年の身に付けている剣や防具はとてもボロボロで、青年はとても疲弊しているように見えた。先程の盗賊達と戦ったのだろう。


 青年はこちらに向かって、スキルなどを使用せず直接、切りかかって来る。


「スキルも使わないなんて、お遊びかい?」


 ボクは笑顔で青年を迎えた。


 少し遊んでやろう。


 キンッ


 青年の剣を【使者】が槍で跳ね飛ばす。


 青年は剣を拾い、またもや使者に突っ込むが、剣を跳ね飛ばされる。はっきり言って剣の扱いは初心者レベルだ。


「そろそろ良いかい?」


 見てて暇だから、まだあまり時間が立ってないが、お遊びを終わりたい。こんなにも剣の扱いが下手だとは思わなかった。


「クソ、クソ、クッソォ!! なんで俺はこんなにも弱いんだ!」


 剣を振り回しながら、青年は自分の非力さに嘆いた。


 受けに回っていた【使者】は槍で青年の腹を貫く。青年の腹から血が勢いよく飛び出る。


 そして、【使者】は槍を引き抜き、槍を降って、ついた血を落とした。


 青年はバタンと崩れ落ちた。まだ息はあるようだ。それを見て、【使者】は槍でトドメを刺そうとした。


 しかし、その時だった。突然天から光の矢が降り注いだ。【使者】はとっさにボクの護衛に回る。槍を振り回して、矢を弾いた。


 空を見ると、白いローブを身に付けた魔法使いのような人が浮遊していた。魔力量は【使者】より圧倒的に高かった。


「君は誰? ボクのお友達になりたいの?」


 突然邪魔されて不快だった。ボクは少し嫌そうな顔を向ける。


「そのゴーレム中々に強力だな、お前は軍の魔術師か?」


「軍の魔術師? 何それ。それとまずボクの質問に答えてよ、質問を質問で返さないで」


 魔術師はボクの返事を無視して、いきなり魔法を放ってきた。先程の光の矢とは比べ物にならないぐらい、巨大な火の玉が煙を発しながら、飛んできた。


 ブォン!


 無詠唱!? 初めて見た……それよりこれやばい!


 【使者】は全身を使って受けた。しかし、【使者】はボロボロになって、後ろに倒れた。


「お前、よくも!」


 ボクは怒った。親友を傷つけられたら、怒るのは当たり前だからだ。


 しかし、火の玉の煙が消えると魔術師や青年、令嬢達は居なくなっていた。


 ボクは親指の爪を噛んだ。


 あの人達とお友達になりたかっただけなのに、どうして邪魔をする! 不快だ、とても不快だ。あの魔術師だけは絶対に楽には死なせない。お友達になってあげない。八つ裂きにしてやる!


 ボクはイライラして沢山、魔術師の悪口を口にした。【使者】の怪我を忘れて。


 しばらくすると、やっと我に帰った。


「使者、大丈夫?」


 ボクはとても心配そうな顔を【使者】に向けた。親友が重症なのを見ると心が痛む。


 【使者】は反応しない。


「大丈夫だよ、すぐに治すからね!」


 ボクは人形の町から【Father&Mother】というネームドを配下ネットワークを通じて、呼んだ。それはお父さんとお母さんという意味だ。


「困った時はお父さんとお母さんに頼る! 使者、ちょっと我慢してね……」


 【Father&Mother】は拠点内のネームドの中で一番強力だ。お父さんの方はLv60に匹敵する戦闘力を持ち、お母さんの方はLv60のヒーラーだ。どちらも浮遊能力が備わっている。ボクが一番戦力面で信頼しているお友達だ。


 ここから人形の町はそう遠くない為、すぐに【Father&Mother】は到着した。


 【使者】の傷をお母さんはすぐに癒す。ヒーラーの回復量は対象とのLvのプラマイによって決まる為、Lv40の【使者】を短時間で完全に治すのは簡単だった。


「流石お母さん! ありがとう! 使者もボクの為に攻撃を沢山受けて、ありがとう」


 やっぱり家族は信頼出来る。困った時は、お父さんとお母さんに頼るのが正解だ。


 先程の魔術師のおかげで、この世界はやっぱり上位世界だなあ、と再認識出来た。


 反省を生かし、ボクはこれからの計画を立てる事にした。


 まず、常識を学ばないといけない。


 それを学ぶには……学校! 学校が良いね! 


 ボクはまだ15歳、学校の通える年齢のはずである。それと元いた世界でもボクは、学校に通っていた。そこで常識を学び、それは今でも生きている。だから、学校は一番、常識を学ぶには良いと判断した。


 お友達の強化もしたいね。今のままだと、お父さんでも通用するかどうか……。


 後、お友達を作るのもしばらくは控えめにした方が良いよね、変に目立って、さっきの魔術師みたいなのが来たら危険だから。まあ、もちろん、お友達になれる時にはしっかりとなるけど。


 お友達? お友達……お友達!


「あっ、忘れてた!」


 山賊達や死んだ護衛達をお友達にするのを忘れていた。早速取りかかる。


 ボクのLvは31、所持スキルは生成と分解、魔力探知の3つだ。


 そのうちの生成を使い、木の塊を作った。


 スキルは自身のLvによって性能が上がっていき、生成は簡単な素材を魔力変換によって生成する事が出来る。


 それをスキル分解によって、人形の顔と身体の形になるように削った。


 分解は物体を削ったり、分解したり出来るスキルだ。


 そして、身体の腕や手などの関節に隣接している部位を分解によって切り離し、関節部位を切り抜いてそれらをハめた。


 次は、指先に魔力を込めて、回路のようになるよう、線を描いた。これは人形職人の固有の技でスキルではない。


 その後、山賊の死体から魔力を抽出する。本来ならば専用の魔石のいる作業だが、プロならば必要ない。これも人形職人固有の技だ。


 抽出した魔力を先程描いた回路に混ぜて、何もしない人形の完成。


 人形を動かす為には脳を作る必要があり、これをやるには数日はかかってしまう。だから、多数の人形を作る時はあらかじめ行動原理が定まっている型を活用する。


「行動原理・傀儡かいらい


 ボクは使用する型を詠唱した。魔術師の使う魔法みたいなものだ。脳を作るのはオリジナル魔法を作るみたいなものだから、時間がかかる。


 行動原理・傀儡は適用した全ての人形が1匹の人形による命令で行動するというものだ。ネームドを除き、ボクの全ての人形は人形の町の中央の塔にある【核】という人形の命令で行動している。これらの人形に対して、ボクが命令をする場合は【核】を通してしなければいけない。


 ボクは配下ネットワークを通して、【核】にとりあえず、山賊の役割を兵士にするように命令した。


 これでお友達の出来上がりだ。この世界での初めてのお友達だ。そして、ボクはこの作業を人数分行った。



***



 空も暗くなってきた為、ボクはとりあえずお友達たちと共に人形の町に戻ることにした。


 人形の町には四つの出入り口があり、それぞれを二体のLv40に匹敵している巨人型の人形が守っている。転移前の世界ならば、安心して留守を任せられるぐらい心強い守りだ。


 しかし、先程の魔術師を見てからは不安しかない。早めに人形達を強化する必要がある。まあ、今のボクでは人形の強化なんてどうしようもないが。


「今日は色々な事があって疲れたなぁ~!」


 疲れたボクは人形の町の大浴場で身体の汚れを落とし、人形の町の宿屋で夕食をとった後に、爆睡した。

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