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ロマンス・カラコール

小学校から一緒だった幼馴染と大学生になって、やっと付き合うことになったのに…………

作者: 羊光

「なぁ、、俺たち付き合わないか? その……男女っていう意味でさ」


 そんな中途半端な告白に対して、

「うん、いいよ~~」

と梨恵は普段通りの平坦な口調でOKをしてくれた。


 大学二年生の四月、俺の二十歳の誕生日、俺と梨恵は幼馴染から恋人になった。




 梨恵とは小学校からの付き合いだ。


 小学校の時は何となく一緒にいて、中学生の時に異性として意識し始めて、高校生の時は学校内で話すことはあまり無かったが、毎晩、連絡を取り合っていた。


 でも、まさか大学まで一緒になるなんて…………


 これだけ長い付き合いだが、小中高、そして大学生になってからも男女としての交際は一度も無かった。


 俺は梨恵との距離や関係を壊すのが怖かったんだ。


 でも、そんなことを言っていられない状況になってしまう。


 梨恵は大学生になると化粧や服装に気を使い始めた。


 その結果、二人で入っているサークル内で、梨恵は他の男子から声をかけれることが多くなる。


 俺は梨恵が誰かと付き合うことを想像し、急に焦りを感じた。


 梨恵が誰かと付き合うのは耐えられない。

 

 俺はそんな歪んだ感情に背中を押されて、告白した。


 そして、あっさりと成功してしまう。


 こうして、俺と梨恵の物語は無事終了…………とはならなかった。




 告白が成功して恋人になってから、すでに半年が経過した。


「俺はいつになったら、()()を開封出来るんだ?」


 俺は引き出しに閉まってある未開封のコ○ドームの箱を見つめながら、気持ち悪いことを言う。

 これは告白が成功した日に浮かれて買ったモノだ。


 あの日は、コ○ドーム(これ)を使う日も遠くないな、と気持ち悪い笑みを浮かべたのにさ…………


 それからすでに半年、そう、付き合い始めてから、すでに半年が経過した!

 

 未だにコ○ドームの箱は未開封、俺は童貞のままだ。


 それだけなら別に良い(いや、良くないけど)。


 俺は他にも焦っていることがある。

 それは付き合い始めてからの方が、梨恵と距離を感じていることだ。



 付き合う前は、一人暮らしを始めた俺の家に梨恵は頻繁に遊びへ来た。

 そして、徹夜でゲームをする。

 そんな流れが出来ていた。


 加えて、梨恵は一限目がある前日には、俺の家が大学から近いことを理由に泊まったりもした。


 それなのに付き合い始めてから、梨恵は一度も俺の家に泊まっていない。


 ゲームが盛り上がっていても、

「あっ、終電の時間だから帰るね」

と言って、泊まらなくなってしまった。


 一限目がある前日も俺の家には来なくなった。


 それどころか、最近は俺の家じゃなくて、外でデートをして、そのまま解散することが多くなっている。


 だから、付き合う前より距離を感じ、俺の童貞卒業が遠のいている気がした。




 でも、今日は違う!


 絶対に今日はコ○ドーム(これ)を開封して見せる!


 だって、今日は特別な日、梨恵の誕生日だ。


 俺はこの日の為にプレゼントを用意し、梨恵の好きな料理も作った。


 あとは今日、六限の講義を終え、俺の家に来る梨恵を待つだけだ。


 俺は落ち着かずに何度も家の掃除をした。


 三度目の風呂場の掃除をしていた時、ピンポーン、とチャイムが鳴る。


「おまたせ~~」といつもの平坦な口調で梨恵がやって来た。


「おう」と俺はいつも通りの受け答えをする。


「うわ~~、良い匂い~~」


 梨恵がバッグを降ろしながら、台所を確認する。


「私の好きな物ばっかりだね~~。いくら払えばいいかな?」


「いや、今日の主役は梨恵なんだから、お金を取るわけないだろ」


「ふ~~ん、、そうなんだ」


 相変わらず、梨恵はいつも通りだった。


 でも、今日は切り札がある。


 俺は料理を盛り付けて、テーブルの上に並べ、強い味方を取り出した。


「せっかく二十歳の誕生日なんだし、こんなものを買ってみたんだ」


 俺は言いながら、お酒を取り出した。


 そう、これ!


 お酒を飲めば、お互いに気持ちが盛り上がるだろう。

 買ったのは飲みやすいお酒ばかりだし、これできっと……


「あっ、お酒は要らないかな~~」


 …………あっさりと断れてしまった。


「そ、そうか」


 こうなると無理に勧めるわけにもいかない。


「うん、おいしいね~~」


「喜んでくれてありがとう」


 結局、いつもより豪華な夕食を食べて終わってしまった。


 で、でも、俺の秘策はまだある!


「これ、誕生日プレゼント!」


「え~~、何かな? 開けても良い?」


「もちろん」


 梨恵はプレゼント用に包装されていた包みを丁寧に開いていく。


「あっ、欲しいって言ってたの、覚えていてくれたんだ~~。結構高かったでしょ?」


「気にしないでよ。梨恵に喜んで欲しかったからさ」


 俺が渡したプレゼントはゲーミングキーボードとマウスだ。


 俺と梨恵は二人でよくFPS系のゲームをやっている。

 

 梨恵は少し前からゲーミングキーボードとマウスに興味を持っていた。


「ありがと~~」


「じゃあ、さっそく使ってみよう」


「えっ、あっ、うん」


 こうやって、ゲームを始めれば、夢中になって終電を逃すはずだ。



「あっ、終電の時間になったから帰るね」


 …………そんなことは無かった。


 梨恵はしっかり終電の時間を把握していた。


 ゲームはそれなりに盛り上がっていたと思ったけど、結局、梨恵には帰ると言われてしまった。


「えっ、あっ、うん」


 今日も進展は無いまま終わりそうだ。


「じゃあ、またね」と言う梨恵を玄関で見送る。


「うん、じゃあ、また」


 俺たちはそれだけ言って、いつものように別れる。


 少なくとも俺はそう思った。


「…………ねぇ、智之」


 ドアに手をかけた時、梨恵が急に俺の名前を呼んだ。


「迷ったけど、やっぱり今日、言うね。聞いて欲しいことがあるの」


 梨恵は緊張した様子で振り向いた。


 えっ?

 なんだこの展開は?

 今までになかったぞ。


 もしかして、これって「今日は帰りたくないの」と言う展開か!?


 俺は自然と心が躍った。


 さてとこの後はどうしようか。


「分かったよ」と冷静に返すか?


「じゃあ、一緒にお風呂に入ろうか」って誘ってみるか?

 いやいや、それはやり過ぎだよな!


 どっちが先にお風呂に入るべきかな。

 出来れば、俺が先に入って、梨恵が入っている間に色々と準備がしたいな。




「私たち、別れよっか」




 浮かれていた俺は、梨恵からの突然の宣告に思考が停止し、言葉が出なかった。


「じゃあ、明日から前みたいに普通の幼馴染でよろしくね~~」


 そう言って、出て行こうする梨恵の腕を俺は掴んだ。


 別れ話をされて、聞き分けの悪い男はみっともないと思う。


 でも、納得が出来なかった。


「理由ぐらい聞かせてよ」


「いやさ、智之と付き合い始めてから、なんだかぎこちない感じが続いてるし、これは違ったかな~~って」


 梨恵はいつも通りの平坦な表情と口調で言う。


「だからさ、やり直し。幼馴染に戻ろうよ。そっちの方が楽しいよ。じゃあね~~」


 そう言って、帰ろうとする梨恵の腕を俺は離さなかった。


「痛いよ?」


「ごめん、でも納得できない。俺は梨恵のことが好きなんだよ」


 一度も言わなかった直接的な言葉を使った。


 言われた梨恵は少し驚く。



 続いて、怒った表情になり、顔を俺にずいっと近づける。


「じゃあ、なんで何もしないの?」


「えっ?」


「付き合い始めてからは私が、終電で帰る、って言ったら、一度も引き留めなかったよね? 私が次の日、講義でも智之は智之の家(ここ)に来るかを聞かなくなったよね? デートの後、私をあっさり帰したよね? 私はいつも〝今日こそ引き留められるかな〟って期待したのにさ」


 何だか、めんどくさい時の梨恵になって来たな。


「い、いや、だってさ。付き合い始めて、すぐに()()()()()()に誘うのは駄目かなって思って……」


「ふ~~ん、その結果、半年間、何もしなかったんだ」


「そ、そんなこと言うなら、梨恵の方から誘えばよかっただろ」


 梨恵の攻勢に耐えかねて、俺はみっともないことを言ってしまった。


「怖かったんだもん……」


 梨恵はぼそっと言う。


「えっ?」


「だから、怖かったの。()()()()()()をしたいと思っているのが私だけだったら、どうしよう、とか思っちゃったの」


 梨恵の表情と声は普段の平坦なものじゃなかった。


 不安と恥ずかしさ、そして、怒りが感じられる表情と声だ。


「梨恵!」と俺は叫んで、彼女を部屋の中へ連れ戻した。


「ど、どうしたの!?」


 強引な行動を取ったので、流石に梨恵も慌てる。


 少し怯えているようにも見えた。


 俺は机の引き出しから、あるものを取り出した。

 そして、テーブルにバン、と叩きつける。


「俺、コ○ドーム(これ)を梨恵と付き合い始めた日に買ったんだぞ!」


「…………」


 言った瞬間、梨恵の表情が平坦に戻った。


「うん、気持ち悪いね。その時の智之も、今の智之も」


 声も平坦に戻っている。


 でも、怒っているわけでは無さそうだ。


「ああ、気持ち悪いさ。自覚している。我慢していたんだ。俺は梨恵に嫌われたくないから、慎重になっていたんだよ」


「もっと積極的に来て欲しかったのに……」


「今日は俺なりの積極的だったんだよ!? その為にお酒を買って、二人で盛り上がって、自然に誘える流れを作ろうと思っていたのに……!」


「積極性の方向が間違っているっていうか、姑息っていうか、臆病っていうか、うん、気持ち悪い。もっと直接的な積極性を見せて欲しかったかな~~」


「じゃあ、今から積極的になる」


「えっ?」


「梨恵は俺のことを嫌いになったわけじゃないんだよな?」


「……うん」


「恋人として好きなんだよな?」


「それは……言わない」


 梨恵の平坦な表情がまた崩れ始めた。


「俺は幼馴染としても、恋人としても好きだ」


「さっきから暴走し過ぎだよ~~」


 梨恵は俺の攻勢に耐えかねて、目を逸らした。


「俺は言ったぞ。どうなんだよ?」


「…………言わないといけないの? 分からないの?」


「聞きたい」


 梨恵は照れ隠しに「なんだかなぁ」と呟き、俺と視線を合わせた。


「好きだよ。幼馴染としても恋人としても、じゃなかったら、家に来ないし、こんなに長く付き合ったりはしないよ。あっ、今の付き合う、っていうのは子供の頃からって方の意味ね」


「分かっているよ。じゃあ、今日、俺が誘っても拒絶しない?」


「その言い方、肝心なことは私に言わせようとしていない? 気持ち悪いな~~。ノーコメントだよ~~」


「じゃあさ、好きなようにするよ? 嫌だったら、言ってよ?」


「どうぞ~~」


 梨恵は無理をして平坦な口調を続ける。


 俺は梨恵をベッドへ押し倒した。


「……えっと、大丈夫だよね? これからすることにお互いの相違はないよね?」


 怖くなって、確認すると梨恵は溜息をついた。


「ここまで来て、何を言っているのかな~~。不安なら、私、自分で服を脱いだ方かいい?」


「!!?」


 梨恵は相変わらず、平坦な口調で話すことを努力する。


 でも、限界は近そうだ。


 梨恵はずっとベッドのシーツを握っていし、顔は赤い。


「い、いえ、服はこちらで脱がします」


「なんで敬語? それに言っていること、気持ち悪いね。あっ、でも、ちょっと待って」


 梨恵は自分のバッグを手に取った。


 おい、何をする気だ?


 俺は今更、止まれないからな!


「はい、これ。お互い初めてだし、痛いのは嫌だから、なるべく緩和できるように使って」


 梨恵が取り出したのはローションだった。


「えっ、あっ、うん」


「それと智之の買ったコ○ドーム、サイズ大丈夫? 未開封みたいだけど、サイズ、確認した?」


「えっと、確認はしていない。なんか、初体験前に開封したくなかったから……」


「うん、気持ち悪いね」


「さっきから『気持ち悪い』を連呼しないでくれないかな!? そろそろ泣くよ!」


「もし、サイズが合わなかったら、こっちのを使ってね」


 梨恵はローションに続いて、S、М、Lサイズのコ○ドームを取り出した。


「あっ、XLは買って来なかったから、そういう大きさだったら、ごめんね。というか、そんなもの、いきなり入る気がしないからね」


「えっ? ええっ!?」


 こんなものを持ってきていたということは、梨恵は本当に期待していたんだな。


「言っとくけど、今日だけじゃないないよ。私、ずっと持ってきていたからね。智之と付き合うことになった日にネットで買って、初体験の際に注意することを調べて……うん、私も気持ち悪いね」


 梨恵は耐えられなくなって、枕で顔を隠した。


 でも、すぐに俺が枕を取り上げる。


 見えた梨恵の表情は普段とはかけ離れたものだった。

 頬が紅潮し、呼吸が浅い。


「あはは」と照れ隠しに笑う梨恵からは、普段の平坦な表情も口調もすっかり消えていた。


 そんな梨恵の姿を見て、俺はさらに興奮する。


「コ○ドーム、これだけあったら、どれくらい出来るんだろうな」


「言っとくけど、三時には寝るからね。私、明日一限から講義だし……」


「なんだか、この半年、凄く回り道をして気がするな」


 俺が言う。

 すると梨恵は俺の背中に両手を回した。


「これから元に戻ろうね。…………それから、前に進もうね」




 次の日の朝、俺は充実した気持ちと経験したことのない脱力感に襲われていた。


「ねぇ、智之」

「なんだ、梨恵」


「私、今日、一限目、あるって言ったよね?」


「…………はい」


「今、何時だと思う?」


「六時過ぎ……こ、講義には出れる時間だね」


「出れる状態だと思う?」


「ご、ごめんなさい!」


 結局、欲望に任せて、気付いたら、朝になっていた。


 俺も疲れたが、梨恵の疲労は俺以上だったようでベッドで横になって動こうとしない。


「……まぁいいや、私、寝るから。シャワー、浴びたいけど動くと体中が痛いし……」


「じゃあ、あとで一緒に入る?」


「…………言っとくけど、今日はもうしないからね」


「じゃあ、明日は?」


「分かんないよ。体の調子次第」


「そっか」と言い、自分が笑みを浮かべていることに気が付いた。


 すると梨恵は俺の顔を見て微笑み、「気持ち悪いね」といつもより少しだけ高い声で言った。

 

成年漫画の導入部分みたいになってしまいました…………


少しでも面白いと思って頂けたら、感想、評価、いいねなどをよろしくお願いします!

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[気になる点] なろう特有ヒロイン万歳小説だなって [一言] 童貞君はいざってときにテンパってるから、相手に気持ち悪いって言われたら心折れる で、心折れない精神力あるっていうなら既に手を出せるはずなの…
[気になる点] 気持ち悪い、って言葉が本当に強いですね……。 こういうこと平気で言う子だから、主人公が臆病になるんだろうなと感じた次第です。 [一言] その後の二人が気になります。
[一言] どっちが悪いって話なら彼女の方が悪いかな。 どっちも怖かったって言うけど、終電だから帰ると言われて強引に迫る奴はまあロクな奴じゃない。 その行為を期待してたというなら、恋人としては相性悪いん…
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