[レビュー04] 遊海実様の「遠い夜明けー何の力もないのに、こんなこと知ってどうすればいいの?」
イチオシレビュータイトル:幕末オールスターズ世界を行く
投稿日:2022年01月02日
作品タイトル: 遠い夜明けー何の力もないのに、こんなこと知ってどうすればいいの? https://ncode.syosetu.com/n1010fm/
作者:遊海 実 様 https://mypage.syosetu.com/513292/
(レビュー本文)
黒船来航で騒然とした江戸で「日本の悲惨な未来」を幻視した男。
一日本人としての責任感から彼はあるお武家と相談します。
その人は卓越した構想力と行動力を備えた一つの奇跡でした。
人が集まり動き出し日本と世界の歴史を転回させて行きます。
この小説で感心したのは、
第一に人材活用の巧みさ。
「大口たたくなら世界の現実を見て来い」。
世界に雄飛していくサムライたち。
彼らは列強にも臆することなく貪欲に学んで自己改革をしていきます。
第二に創造的な外交。
周到細心にして時に放胆な外交を展開していきます。
未来の情報に依存するだけでなく世界を俯瞰して構想していく力がすごい。
第三に登場人物の志と心情。
私は村田蔵六(大村益次郎)が苦手だったのですが清冽至誠の人だと思い至りました。
史実の幕末ではテロと内ゲバで多くの偉材が失われていきました。
この小説はそうした愛国者たちの夢でもあるのでしょう。
歴史改編小説の傑作。その構想力が素晴らしいです。単に日本の周囲の事だけではなくグローバルに物事の関連を考えて能動的に歴史を動かしていきます。
「なろう」の歴史ジャンルでも異色なのは、主人公が転生者でなくその時代の人間で、「我々のとは違うがあり得た時間線」の未来を幻視した事です。当時生きていた人々へのリスペクトが強いと言うべきでしょうか。
遊海実様は数値目標を挙げてそれを達成するために工夫するという前向きな人で、イチオシレビュー10件という目標を挙げられたときは「読者の尻を叩くんかい」と驚くと同時に発奮したものです。「よし、この作者さんならイチオシレビューくらい書いて差し上げよう」と。
レビューは「行頭を下げない」方式を意図的に採用しています。スマホなどの電子端末でより読みやすい方式だからです。全体としていかに読みやすく書くか注意しました。
連載は続いていて、ネタバレになるので詳しくは書きませんが、更に壮大なスケールで19世紀という時代を描きつつあります。