[レビュー03] matsmomushi様の「凌辱物エロゲーのヒロインは究極集合宇宙の夢を見るか?」
イチオシレビュータイトル:タイトル見ただけで逃げ出さないでください
投稿日:2016年09月25日
作品タイトル:凌辱物エロゲーのヒロインは究極集合宇宙の夢を見るか? https://ncode.syosetu.com/n3364di/
作者:matsmomushi様 https://mypage.syosetu.com/598612/
(レビュー本文)
そんなに酷いことはしていません。多分。希望的観測では。
主人公らばる君が「意識のある美少女AIイシキちゃんに色々な事をできる」というエロゲーをやっていると、突然、宇宙警察の刑事に襲撃されます。
「空想上の少女を暴行した罪で貴方を連行します!」
ゲームで「心を持つAI」というのは単なる設定だったのに人権侵害を適用するという素っ頓狂なことを宇宙警察はやっています。それに対抗する理論が、想像し得る宇宙はすべて平行宇宙として存在するという「究極宇宙集合説」で、この物語はそれを探求していきます。
壮大な話で、フィリップ・K・ディックはうなされ、スタニスワフ・レムは笑うかもしれない。
多元宇宙論やシミュレーテッド・リアリティなどの哲学的イディオムをぶち込み、ぐりぐりと議論を展開して行って脱力系の笑いに落ちるところが気に入っています。
物凄いタイトルの小説ですが、極めて真っ当なSFで素晴らしく面白かったですねえ。哲学的であり同時に波乱万丈の冒険でありギャグであるという絶妙の書き方をしています。
フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」(「電気ウナギ」と間違えてはいけない)という「ブレードランナー」の原作になった有名な小説があったのですが、小説のタイトルはそれを意識していると思います。人間の意識と宇宙の在り方の交錯の迫真の表現ではないでしょうか?
連載は2年余りをかけ完結しましたが、読者としてそれを追いかけることができたのは光栄な事でした。また最終話がスケールの点でも発想の面でも圧巻でした。matsmomushi様は見事にこの小説を描き切ったのでした。
こんなに面白い小説なのにポイントが上がらず「なろう」というのは小説の質とポイントが一致しない世界なのだと確信するきっかけになりました。
matsmomushi様はノクターンノベルズでも実験的官能小説「万物破壊の剣士」シリーズを書いてらっしゃいまして、そちらの方が代表作かも知れません。非常にぶっ飛んだ小説です。