起
扉を開け、階段を登ってみるとやはり、暗く、重々しく、怪談屋敷の名にふさわしい空気だった。
なぜこんないかにも“出ますよ“と言わんばかりの場所に来てしまったのか。
問う必要もない。自分の性格、色々なものに興味を惹かれてしまう性格ゆえだ。
そもそもこの屋敷の噂が悪いのだ。
なんでも、この屋敷は『何か』が出るらしい。
これだけ聞くといまいちピンとこないが、その『何か』というのが問題なのだ。
私が初めてその噂を耳にした時その『何か』は『青色の怪物』だった。
しかし、次に耳にした時、その『何か』は『大きなハサミを持った男』に、またその次は『ゾンビ』だった。
私が聞いてないだけで他にも『何か』は別の『何か』として噂されているのだろう。
その『何か』の正体がわからないせいでこの屋敷に不法侵入する若者が後を絶えない。
その『何か』に興味をそそられてしまったがために私はこの怪談屋敷に来てしまったのだ。
噂されるだけあってこの屋敷はなかなか不思議な作りをしていた。
玄関から入ってすぐ、階段があった。
エントランスホールのような空間に階段があるのではなく、まさに玄関の目の前にあったのだ。
外から見た限りでは一階に部屋がるように見えたが、どこか他に降りる階段があるのだろうか。
私はこの階段に違和感を感じていたが、
「おいユウタ、あそこの部屋行ってこい!」
「え、行ってこいって、シュウ君、ぼ、僕一人で行ってくるの?や、やだよぉ」
「どうせただの噂話なんだから適当に探してさっさと戻ってくればいいのよ」
「まだ信じてないのかよユリ!あんだけみんなが話してるんだからいるに決まってるだろ!」
他の3人は特に気にならなかったらしい。
もちろんこんなところに一人で来ているわけではない。元々3人でここへ来るつもりだったらしいが近くにいたために私を誘ったらしい。
目当の『何か』を見つけるためには人は多い方がいいそうだ。
興味はあったが行動には至っていなかったのできっかけとしては有り難かったが、如何せん話したことが一度もない面々だ、どうも居心地が悪い。
結局まとまって行動する事になったらしく、二階の部屋を一部屋づつ探索している。
が、何も見つからない。
わかったことは外装はモダンな雰囲気だったが、内装はかなり古く、歩くたびに気が軋み音がする。そしてもう一つ、
階段が、多い。
とにかく階段が多い。部屋と部屋の間に階段がある。窓の両脇に階段がある。
流石に部屋の中にはなかったが、部屋の外に出ればいやでも目につく。
加えて、それらは全て“上の階"への階段だった。
「こ、ここって二階だよね?降りる階段はどこなんだろうねぇ」
二階で見つけた下の階につながる階段は、入ってきた扉の正面の階段だけだ。だけなのだが
「あたしたちってどこから入ってきたっけ?」
その階段すら、無い。
「確かこの辺りだっただろ...あれ?おかしいな、ここの階段だったと思ったんだけどな」
シュウの言う通り、確かにここに下の階に繋がる階段があったはずだが...
やはり、上の階への階段しかなかった。
大学に入学しましたが新居にまだネットがなく授業もコロナの影響で延期になったため暇になり、思いつきで書いてみました。
続くとは思いますが、如何せん飽き性なので。