表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/84

そういう事で次行きます



 ちゅん、ちゅん、ちゅん



 いい加減、1羽くらい捕まえてやろうかな? 冗談だよ? こんな爽やかな朝から、そんな事する訳がないじゃないか。ホントだよ?


 まだ、雨は降ってないんだよ。おかしいな? これがこっちの常識なのかもね?



 昨日も、美味しいお酒が飲めました。2人のお陰でね。なんか吹っ切れたよ。あんなに純粋な気持ちには、真面目に向き合わなきゃ申し訳なさ過ぎる。別に、逃げてた訳じゃないけど、後回しにしてた事は確かだからね。


 これからは、もっと俺からも好意を示していかないと、もしかしたら愛想尽かされちゃうかもしれないしね。もう、こんなアホな人はイヤってね? それはやっぱり悲しいから。もっと信頼して、もっと真剣に受け止めていこうと思う。


 俺は、大人の階段を上ってる途中なんだ。登ったり、昇ったりもするけど、違いの分かる男になるために! 何でだろ? それが成長するって事だからだよね?



 部屋は、ちゃんと分けてあるからね。朝ちゅんも、何の意味もないんだよ? ふふふ。



 いくら『ハッタリ』かましたとは言え、警戒は必要だからね。宿屋のオーナーには断りを入れ、扉の前に『防御壁』を〈融合〉しておいた。扉は開かないよ? 〈融合〉を〈解除〉しないとね。


《融合》〈土壁〉〈土柱〉等を接着し、溶とけ合わせひとつにする。


 この防御壁も、強化の指輪によるレベルアップ? により、更に強度が増している。間近で銃撃を受けても貫通しなかった壁。その後、2度の強化をして使える〈属性〉も増えてるけど、なぜか、これまでの〈属性〉のパワーも増しているんだよね。強化の指輪っていうんだから、間違ってはないと思うけど、〈属性〉の追加も兼ねてるって、ホントに凄い指輪だよね。


 2個とも、オデルローザでのあれやこれやの報酬として受け取ったんだけど。うん。いい対価だったと思う。ありがとうこざいます。セバイスさん。謎の多い人だけど、強さと品格は別格だったからね。今後も、逆らうなんて事は、まず考えられないね。あはは。



 とにかく、この防御壁は、簡単にはどうこう出来ないって事。俺の〈鋼弾〉(大)で検証してみた所、3発は何とか耐えられた。だから、宿で夜襲を受けたとしても、簡単には突破できないはずなんだよね。そんな攻撃なんかされれば、すぐに気付けるし、なかなかの防衛手段だと思うんだよね。


 俺がちょっと早起きして、アイテムボックスに回収してやれば、特に問題にもならないし、宿屋の壁にも傷1つ残さないよ。プロだからね? 逆に、そこだけ強化されてキレイになってたりして。

 ミラとアリーも了承済みだ。もう何回もやってる事だからね。例の『ジャメン』の時からやってるし。

 

  *


 朝食を宿で取り、俺は朝からお仕事へ。ミラとアリーは、『獲物』を探しに森に行くらしい。まあ、俺に付いてきても面白くないからね。オデルローザと同じ事をするだけだし、時間の無駄だと思う。


 襲撃の件は、まだ解決しておらず、また狙われる恐れもあるけど、ガーディアンズも調査をしている最中だから、そこまで大っぴらにやっては来ないと思う。甘いかもしれないけど、本人達の希望もある。子供じゃないからね。


 ミラとアリーが本気を出せば、逃げて来る事くらい出来ると思うから、一応警戒はしておいてね、と一言声を掛けるだけにしておいた。あの〈身体強化〉を見た後だからね。強くも言えないし、そんな気もしないかな。あははは。


 まあ、そのパワーアップした〈身体強化〉の検証もしたいだろうしね。分からなくもない、その気持ち。笑顔で見送るのが違いの分かる男だと思ったのです。肉なんて、いくらあっても困らないし、いい運動にもなるのだから一石二鳥。いや、今回は検証もできるから一石三鳥か? 


 凄いよね、トリプルプレー。漢字で書くと三重殺。漢字で見ると、何か事件性を感じるくらいに怖いけど、ドキドキしちゃうからね。流れるような『5・5・4・3』とか『5・5・6・3』とかね。決まった瞬間、敵味方関係無くガッツポーズだね。良い意味と悪い意味で。

 あ、これは野球の話だった。数字は、ボールを処理した順番で、三塁手が捕球して三塁ベースを踏む、二塁に入った二塁手または遊撃手に送球、そこから一塁手へ送球で完成だ。

 やっちまった打者に記録されるのは『併殺打』。『三重殺打』なんて記録はないらしいよ。良かったね? ゲッツーの上のゲッスリーだよ? 本当にゲッソリーだよね。《冷風》《スルー》


 ちなみに、

『1 投手』『2 捕手』『3 一塁手』『4 二塁手』

『5 三塁手』『6 遊撃手』『7 左翼手』

『8 中堅手』『9 右翼手』だったりする。皆知ってるよね。


 野球やりたいなぁ。こっちでも出来るかな? 厳しいだろうなぁ。球場作りは何とかなりそうだけど、道具作成に、人数揃えて、ルールの説明、審判の育成……うん。ドッジボールとかのが早いかな? スポーツなんてあるのかな? そんな娯楽はまだ早いのか? 魔法があるから、別の競技はありそうだけどな。あ、競技じゃなくて、闘技だね。ヤダヤダ。



 平和になって暮らしに余裕が生まれれば、そういう娯楽も生まれて来るんだろうな。何かしらの娯楽はあると思うけど、そこまで広まってはないんだろうな。モンスターもいるし、他国との争いも絶えないみたいだから、まだまだ先の事なんだろうね。俺が知らないだけかもしれないけど?


 でもやっぱり、やるなら最初は簡単なゲームからかな? ゲーム無双に、スポーツ無双も出来るのか? うん。『俺達の場所作り』が落ち着いたら考えよう。既に何かあるのかも知れないし。そのためにも情報収集しないとね。



 あれ? 何だっけ? そうだ、2人には無理せずに頑張って欲しいんだった。ミラ、アリーの連携で、ダブルプレーの完成か? うん。それ、良い感じだね。そこに俺も加わって、トリプルプレーとかしちゃったりしてね? ふふふ。


 気を付けて、狩りと検証頑張って下さいね。



  * *



「おはようございます。勉強させていただきます。今日から、よろしくお願いします」


 ズラッと並んでいる威圧感のある人達。昨日の打ち合わせで、部屋の壁際に居たローブの人達だ。土魔法の使い手で、俺の地下施設作成に同行し、魔法を学ぶのだそうだ。


 えー。こんなに居るの? ……6、7、8人? 若い人から、それなりのお年の方まで揃ってるようだけど、大丈夫かな。俺の常識は非常識なんだよ?



「おはようございます。こちらこそ。案内と、現場での指示をよろしくお願いします」



 今日は、町の北と東にある衛兵待機所の地下に施設を作成する予定。まずは北から参りまーす。



「あ、あのぉ。少しよろしいでしょうか? そのぉ。私達は、タビトさんの近くにいても大丈夫なんでしょうか? 近付くだけでも発動するトラップがあるとか何とか……。我々は、まだ勉強中の身ですから、命が惜しいと言いますか、ケガをしたくないと言いますか……」


 おっとぉ。こんな所まで『ハッタリ』効果が出てしまっている訳か。どうりで微妙に距離が離れている訳だ。うん。やっぱり、やり過ぎも良くないな。でもな。ガーディアンズからの報告があるまでは、俺も油断できないからな。ふむ。困ったぞ?



「そうですね。そうやって、私に一言声を掛けてから近付いてもらえれば、大丈夫ですよ? トラップは発動しない仕組みになっています。ただ、何も言わずに近付くと、……《ブラックホール》……ほらね? どうなっても責任は持てませんからね?」


「げぇっ! き、消えたっ! 突然『石』が消えたぞ!」


「何だって! 石が突然? そんな事が?」


「ああ、間違いない。俺も、この目で見ていたからな。突然黒い球体が現れて、石が飲み込まれてしまったんだ」


「あお。恐ろしい。そんなトラップがあるなんて! おい、お前達! これからは、タビトさんに近付く時には、必ず声を掛けてからにするように!」


「そうだぞ! 死にたくなければ、声掛けを忘れるな!」



 あ。またやり過ぎかたかも。でもさ、〈ブラックホール〉って、手のひらに球体の暗闇を作り出す演出で、アイテムボックスと併用する事で、それっぽく見えるってだけの効果だよ?


 今回は、ちょっと応用利かせて、発動範囲のなかにあった『石』を、〈エフェクト闇〉を球体にしたヤツで包んでから、俺のアイテムボックスに収納しただけなんだけどな。発動範囲も、前よりは少し広がってるけど、それが余計に防御としては効果的に見えたのかな?

 それに、事前に命に関わるトラップ持ちって情報がインプットされてたから、それっぽい事をやってやれば、それなりの効果があると。そんな感じかな。


 やれやれ。まあいいや。やっぱり、オイラとハサミは使いようだね?



  * *



 はい。これくらいの施設なら、もうお手のもの。何度目だ? 作る度に完成までの時間が短縮されてるから、早いものだよ。明智君。


 たかだか20人くらいの衛兵が寛いで生活できる地下施設なんて、目を瞑ってても出来ないよ? 流石にそれは無理。無料でもやりません。安全第一ですからね。オイラ、失敗したくないので。


 オデルローザで作ったのは、50人規模の施設だったからね。さすが国境の町。隣国との争いも警戒して、いろいろ増設したんだった。元町長のお陰で衛兵が減っていたからね。やれやれだ。それに比べたら早いものだ。


 要望通り、階層も分けてあるから、交代制勤務でも周りを気にしなくて大丈夫。大変なお仕事の衛兵さんに優しい仕様になっております。標準装備で、セパレートのバス・トイレ付き。共同の大型施設で十分だと言われたけど、オイラからのささやかな優しさとしてプレゼント。プライベートはお大事に。親しき仲にも礼儀有り。一体感の訓練は食事まで。オン・オフの切り替えこそ、仲間意識を高められると思います。使うか使わないかは、衛兵さん達次第です。


 はい。完成! 一丁あがり!


「こんな感じでどうでしょうか? 何か改善点や、使ってみて不便だと思ったら、まとめて言って来て下さい。改装、修正も可能ですからね。遠慮しないで下さい」


「おお。これが噂の土魔法ですか。聞いていたモノよりも、精度もスピードも段違いですね」


「素晴らしい技術です。しかし、どうすれば、ただの〈土〉がこんな強度のある物質に変わるのでしょうか。私には出来そうもありません」


「うーん。これは凄まじい土魔法だ。規格が違う。私が学んだ土魔法とは、いったい何だったのか、疑問に感じてしまうレベルです」


「こんな事が私達にも出来るようになるのでしょうか? 自信がないです」



「何も、私も最初から、ここまでの事が出来た訳ではありませんからね。使ってるうちに、段々と精度も上がり、早く作業が出来るようになったんですから。要は、いかに練習を繰り返し、慣れ、次のレベルを見据えるかです。こうして、何かを掴めたのなら、皆さんにも可能性はありますからね。個人差はあると思いますが、土魔法の適性があるのですから、諦めなければ何とかなるかもしれません。


 それから、皆が同じ事をする必要もありませんからね。掘り進めるのが得意な人、強化するのが得意な人、成形するのが得意な人。それぞれに分業してもいいんです。そして、土魔法にも区分を設け、それぞれに適性を見ていけば、やる気も持続します。せっかくの機会なんですから、お互いに頑張りましょう」



「おお。何というお方だ。そこまで私達の事を考えて下っていたとは。ありがとうこざいます。頑張ってやってみます」


「はい。感動しました。少しでもタビトさんに近付けるように、私も頑張ってみます」


「そうですね! 土魔法の中にも作業別に区分は付けられます。そうすれば育成度も分かりやすいですし、得手不得手も一目瞭然です。それは素晴らしいアイデアです!」


「そうですよ! 早速、その区分作りをしていきましょう。少しでも早く皆の役に立てるよう、力を合わせて頑張りましょう」


「おお、そうだ。それならこの力も役に立つ機会が増えるはずだ。ようやく日の目を見られると言うものだ」



 うんうん。土魔法の使い手は、どこでも不遇な扱いを受けていると聞いていたからな。既存の建物の補修や強化だけでも、引っ張りだこになってもおかしくないのに、何でだろうね。

 しかも、皆さん真面目そうな人ばかりだからね。何かを掴めれば、上達も早いと思うよ。頑張って下さいね。



 はい。次行ってみよう!




  * *



 はい。次に来ましたよ。町の東の衛兵待機所に到着。


 やる事は同じ。さっきと同じように、ちゃちゃっとやっちゃうよ? せっかくだから、皆さんもやってみる? 使ってなんぼ。魔力が尽きるまで、ゆー達、やっちゃいなよ? 補修はお任せ下さい。〈雷〉によるチカラ業。大概何とでもなるからね。ご安心下さい。


 責任は全て俺が取る! まずは、思った通りにやっちゃいな? まだ時間はあるからね。思ったより早く出来そうだから、張り切って面倒見ちゃうからね。


 感謝の言葉は、終わってからでお願いします。そう。口を動かす前に、魔力を動かしましょう。質問はご自由に。プライベートな事以外は何でも受け付け中。いや。やっぱり土魔法の事だけにしとこうか。うん。今は講習中。お勉強の時間です。ほら、そこも遠慮してないで、やっちゃいなよ? 実施研修ってヤツ?




 おう。やっぱり得手不得手の差が大きいようだね。これを一(くく)りに土魔法と言っても、なかなか目が出ないかも。得意分野を特化して伸ばすか。不得意分野を少しでも埋めていくか。決めるのは、あなた次第です!


 今後の自分の立場を考えて、検討して下さい。慌てる必要はないからね。皆さんと相談して、ゆっくり考えて下さい。



  * *



 少し時間は掛かったけど、完成です。本日は、『北の地下衛兵待機所』『東の地下衛兵待機所』の2施設。


「皆さんもお疲れ様でした。それでは、また明日! じゃっ!」



「「「お疲れ様でした!」」」

「「「ありがとうこざいました!」」」

「「「明日もよろしくお願いします!」」」



 おっ。結構元気だね? これなら、明日はもう少しやってもらっても大丈夫そうだね? ふふふふふ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ