VS 白いボス
ザッ! ザッ!
「おいおい。余裕の顔してるように見えるんだけど、気のせいか?」
「何を言っておるのじゃ。敵を前にして怯えるような顔をしたら、それだけでお仕舞いなのじゃ。例え怖くても、笑って対峙するモノなのじゃ。それが決闘なのじゃ! ふんっ!」 ボワッ!
お、おう。確かにな。俺、納得。不敵な笑みの裏側には、そんな一面もあったのか? 俺だけか?
おっと。そんな事よりミラの『バーサク・モード』が発動されました。強化された炎の色は、早くもオレンジから青色へ。まずは『集中型』でいくみたいだね。スピード重視でいくのかな? 当然か。これは見ものかな? そんな余裕は、俺には無いからな。しっかりサポート致しましょう。
「じゃあ、徐々に防御壁で囲んでいくから、その間のヤツのお相手頼んだよ」
「あい、任せておくのじゃ!」 ダンッ!
「ふんっ! ダッ! はっ!」
うおっ。全然当たらない。相手の攻撃も当たってないけど、お互い、接近戦での体術は互角なのか? 俺は今の内に。
こっそり、にょきっとな! ズズズンッ! ズズズンッ! ズズズンズンッ!
「うおっ!」
しっかり牽制入れてきやがった。ギラッと見られたぞ? まだ余裕があるって事だよな? ミラと対峙しながらこっちに目をやるなんてな。でも、こっちを見ちゃイヤ!
《フラッシュ》 ピカッ!
ほいっと。こっちで、ズズズンッ!
ピカッ! ちょい移動して、ズズズンッ! ズズズンッ!
まだまだぁ。光ってからの土壁祭りだ! ワッショイ?
射程がある分、動きながらじゃないと広範囲に防御壁なんて作れない。これが生活魔法の弱点か? いや。弱点を補ってこその知恵だよな。俺は負けないよ? ちょいと隠れて、《ステルス》からのぉ。
スラッとな。久し振り。俺のレイピアの鋭さを見せてやるぜ! 寄って来るなよ! 詠唱せずに攻撃出来る、俺の雷攻撃だ。『□雷専用貯蔵庫』充電満タンだからな。2つ分あるし。やっちゃうぞ? まさか、俺が地上で戦うコトになろうとは。気合いが大事だな。ふー。ヤツの死角になるように、……今だ!
「(10%)《スラッシュ》! 《スラッシュ》!」
バシュッ! バシュッ!
バッ! ダッ!
「おお。かわすのか! 雷だぞ! それでもこの距離からじゃダメなのか!」
「おおっ! 流石にびっくりしたのじゃ。今のはよい攻撃じゃったのじゃ! じゃが、あれをかわされるとはの。厄介な相手なのじゃ。思ったよりも余裕があるようじゃ。まだチカラを隠しておるかもしれんのじゃ」
くっ。マジか。そこまでやれるのか!
「敵です!! 左右から来ます!! 2頭ずつです!!」
「ちっ! やってくれる! まだ隠し弾があったとは。全く厄介なヤツだ。それで余裕があったのか!」
「まったくなのじゃ。本当に厄介な相手なのじゃ。この期に及んで増援とはの! はっ! ファイア・バレット!」
ドシュッ!
「ここで挟まれるのはマズい。まんまと誘き出されたって事だよな。くっそお。ミラ、こっちだ! 簡易櫓を足場に作るぞ!」
「わしなら大丈夫なのじゃ。この『コの字』の防御壁を背にして戦えば、問題ないのじゃ。ありがとうなのじゃ」
「分かった。じゃあ、そこをサポートできる位置に櫓を作る!」
足元から《櫓作成》低層バージョン。
カモン! 櫓! ズズズズズズッ!
「うっし。ここからなら、狙えるな」
おっと。ミラのお陰で、そいつに邪魔されずに済んだみたいだな。絶賛交戦中だよね。リーンの方は? ちょっと遠いのか。くそっ!
「リーン! 適当にサポートよろしく! 俺達には当たっても大丈夫だから! 遠慮せずに撃っちゃって!」
「ええ! 分かったわ! 任せておいて!」
「よし! じゃあ続きといきますか! 食らえ!!」
「《フラッシュ》」 ピカッ!
「(10%)《スラッシュ》! 《スラッシュ》!」
バシュッ!! バシュッ!!
ギャッン! ガッ!
よし! 俺の必殺コンボは有効だ。この連続攻撃は、やっぱり視覚を持つ相手には効果有りだな。《チャージ》も忘れず発動だ。チキンなオイラは、出来る事ならコツコツと。何発撃つコトになるのか分からないからな。戦いが長引けば、こっちも不利になって行くかもしれないし。
何だ? 白ボスが後ろに下がったぞ? 見てるだけなのか? 新たな展開に、様子見か? 慎重な奴だ。ますます厄介だぞ。おっ。来たか!
「《フラッシュ》」 ピカッ!
「(10%)《スラッシュ》! 《スラッシュ》!」
バシュッ!! バシュッ!! ザッ! ダンッ!
「げっ! 避けやがった! マジか!」
〈フラッシュ〉の目くらましも効いてない? 剣の軌道を予測した? まさか、学習してるのか? 仲間を囮にして?
でも、胴体の1部が焼け焦げてるから、完全には避け切れてはなかったみたいだけど、あれはヤバい。速過ぎる。赤くないのに速いのか? 白なのに? いや。そんな事言ってる場合じゃない。早めに何とかしないと、ミラの体力がもたないかもしれないぞ。
シュシュシュッ! シュシュシュッ! シュシュシュッ!
「うおっ!! びっくりしたぁ! これがリーンの氷魔法か。こりゃあ、ヤバい攻撃だ」
でも、何か痛いような気がするのは気のせいか? やっぱり寒くも感じるし? 俺だけか? うん。ミラには全く問題ないみたいだな。やっぱり俺だけか? いや。タビット君? お前のせいかもな? 条件反射でブルッときちゃうからな。男としては?
「おっと。逃がさん! 『我が身を守り賜え』! 握り拳の《鋼弾》(中)×3」
ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!
ギャン! ゴガッ!!
「おっし! ナイスサポートだ! リーン!」
「任せなさい!! 早くミラをサポートしてあげて! 圧されてるように見えるわよ!」
「分かった! ミラ! 大丈夫か!
(10%)《スラッシュ》! 《スラッシュ》!」
バシュッ!! バシュッ!! バッ! バッ!
「ちっ! ここからでも当たらないのか!」
「くっ! こやつ、思ったよりも力があるのじゃ。スピードだけではないようなのじゃ。『ホワイトウルフ』は伊達ではなかったのじゃ」
はっ! 待てよ? 赤じゃなくて白いと言う事は、新しいタイプのヤツなのか? 速さもそれなりにあるけど、一撃必殺のパワーもあるのか? マズい!
「ミラ! そいつは、もしかしたらパワータイプなのかもしれない。その場での接近戦なら、スピード型からパワー型に切り替えないとマズいかもしれない!」
「なんじゃと! これでスピードタイプではないのか! くっ! 攻撃が重いのじゃ。確かにここなら、パワー型に切り替えるべきなのじゃ! ふんっ! ダダダダダダダダダダー!」
ドガッ!! ズッシャーー グルゥッ!!
おう。そこで『ミラッシュ』入れるのか。全く読めなかったぞ。流石の白ボスも吹っ飛んだか。今だ!
「《癒やしの光弾》×2」 ぱしゅっ!×2 ポワァーン
「おお。ありがとうなのじゃ。さすがに疲れてきたからの。これは助かるのじゃ。ふー」
「ミラ、交代だ。次は俺がいく。少し休んでて」
本当はイヤなんだけどね。この際仕方ない。《身体強化》魔力充填! バッ!
「あい、分かったのじゃ。無理はするでないぞ。ヤツは速いだけではないのじゃ。パワーもあるし、頭もよいようじゃ。戦い慣れもしておるし、本当に厄介な相手なのじゃ。さすが『ホワイトウルフ』という所なのじゃ。ふー」
「だよね。了解。あの距離じゃあ、いくら撃っても当たらないからね。仕方ないから俺も接近戦にしてみるよ。ここでサポートよろしくね」
ミラの足場から《櫓作成》低層バージョン。
ズズズズズズッ! こんなもんでいいかな。
「おお。ありがとうなのじゃ。しっかりサポートするからの。安心して行って来るのじゃ」
「分かった。頼んだよ! ふふふ。お待たせ。白ボス。お前もやる気満々だな。全く、厄介なヤツだ。行くぞ!」
《フラッシュ連射》パシャパシャパシャパシャパシャ!!
すかさず「(10%)《スラッシュ》! 《スラッシュ》!」
バシュッ!! バシュッ!! バッ! バッ!
「ちっ! この距離でもかわすのか! おう!」
アイテムボックスからの、強化防御壁君、ドン!!
ガンッ!
「あっぶねー。本当に速いな」
ふー。
「ファイア・バレットなのじゃ!」
ドシュッ! ドシュッ!
「アイシクル・レイン!!」
ドガガガガゴガガガガッ!!
うおっ!! ナイス! ミラ、リーン。頼りになります。俺に出来る事なんて、大した事はないんだぞ! 生活魔法を舐めんなよ! 猫じゃないか、狼だ? この濡れた足場でよくやるよ。俺がやったんだけど?
俺の方が動き難いじゃないか。汚れるし。やはり、機動力では四本脚には勝てないか。やはり、脚は飾りじゃなよな。偉い人じゃなくても分かる、この理屈? ここは宇宙じゃないから、あれは適用されないか。〈砂地〉に戻すのも面倒だ。それなら防御壁を倒して足場にすればいい? よしっ。おらぁ!
バッシャー!! バッ! ガウッ!!
「ぐっ。流石にビビったか!」
俺のがビビったか? 案外近くに居たのね。2人のあの攻撃でも、軽い牽制くらいにしかならなかったのか? 俺、ヤバかった? こうなりゃ、エフェクト全開だ! 俺の思考ではこれが限界だ。お前が見た事のない景色を見せてやる!
「《鋼の装備》《身体強化》に更に魔力充填、《バーサクモード》全・開っ!!」
ピカッ・ブワッ・バリバリッ!!!
威嚇効果極大のはったり演出。お前に利くのか分からないけどな! 俺も長くはもたないぞ。その目に焼き付けるがいい!!
〈エフェクト火〉(大)で全身に大きく炎を纏まとい、
〈エフェクト風〉で方向を上へ向け、さらに炎上。
〈エフェクト光〉で髪の毛はやめて、全身を発光させ、
〈エフェクト雷〉(大)で全身から雷を放出。
〈エフェクト闇〉で闇を背景にする事で他の効果を強調。
今回は出し惜しみ無し! 《スペクトル》も入れちゃうぞ! 虹色に輝くヤバいヤツ! 《光学迷彩》で全身を透明に点滅させてやる! 怖いだろう!! 突然姿が消えればな! 瞬間移動してるようにも見えるだろ? 実際に俺が走った分しか移動してないけどな! 《身体強化》3倍を舐めるなよ!! 俺も赤くはないけどなっ!!
「ふおおーーっ!! 勝負だっ! 参るっ!!」 ダッ!
流石にビビって距離を取ったな! こんなヤツが近付いてくれば、誰でも逃げるわな。
「はっ! たぁっ!」 グンッ! ダンッ!
参ると言っておきながらの、ジグザグ・フェイント攻撃。ここだ! 来いっ! 強化防御壁君×3
バッシャー!! バッシャー!! バッシャー!!
どうせ下手な小細工は通じないなら、自分の足場確保を優先だ。これで100人乗っても大丈夫?
「さあっ、来いっ!!」
ガウッ!! ダッ!!
ザシュッ! ガッ!!
「ぐっ! オラアッ!! 重てーなっ!」 バッ!
ミラはこんな攻撃を直接何回も受けてたのか? 魔力増し増しの『強化防御盾』越しに、ヤツの攻撃の重さが伝わってくる。俺の『魔剣』なら折れちゃうぞ? ただのレイピアだから?
この状態の俺に挑んで来るとは、少なからずダメージは入ってるはずだよな? 何なんだコイツは。やっぱり『白』も『赤』もヤバいヤツ認定だな。まともに相手にしちゃダメか?
「《変わり身の術》×8 展・開っ!」
くるっと回って、物理的な土の障壁を展開だ。これならどの方向からでも、ヤツの攻撃を1撃は受け止められるはず。その隙を狙う! こんな感じでどうでしょう?
どうだ! これもびっくらポンか? そっちが来ないなら、ここから攻撃だ。なぜか詠唱要らずの、
「《氷弾》(中)×4だ!!」 ドシュッ! ×4
バッ! バッ! ダンッ! ダッ!
「ちっ! 軽く避けやがって。くっ、来るかっ!」
バッ! バッ! ダンッ!
「上かっ!! いっけぇー(20%)★《スラッシュ》!!」
ピッ、ズドッガーーン!!
ぐっ! これは、俺にもヤバい! 俺の魔力までごっそり持っていかれたぞ!? 体に色々展開させてるから、それが上乗せされたのか。眩く光る炎を纏った雷になってたぞ。これならどうだっ!!
もくもくと上がる土煙と土埃。色々巻き込んだみたいだな。どこ行った? あの攻撃にも反応しやがったか。
ふっ。今の内に、しゃがんで《バーサクモード》解除。代わりに《ステルス》《光学迷彩》発動だ。ドロン! 消えるわよ? レイピアに変身能力。そう、愛の戦士でキューティーなヤツ? 俺ってば、全く可愛くないけどな。知ってるし。《スルー》
足場から《櫓作成》ズズズズズズッ!
愛の力じゃなくて生活魔法のチカラを持つお兄さん、今はタビト! オイラの人生、変わるわよっ! て言うか、確実に変わったぞ? こっちの世界でな! 《冷風》
でも安全確保は大事だよ? あんなヤツと同じ土俵で戦うなんて、もう嫌だ。俺はデリケート。そう。臆病なんだよ? 軟弱者なのさ? ぶたないでね? チラッとな?
よし。この高さからならよく見える。思った通り。俺を見失って、ちょっと戸惑ってるな。流石に気付くまい。今の俺にできる精一杯の魔法のオンパレードだ。分かるぞ、その気持ち。本当かな? 少しはダメージ入ったみたいだな。軽く背中が焦げてるか? でもそれだけか?
くっそー。こんなヤツを野放しにはできないし、今更見逃してくれるとも思えない。俺も逃がしはしないからな。こっちを向きな!
「『我は願う! 天の神よ!! 火雷天神様よ!! 我が思い、我が導きによりて、そのチカラを一時貸し賜え!』(30%)《火雷天神の裁き》!!」
ズガガガッ、ドッガッーーン!!
ドンガラガッシャーーーン!!
もくもくと上がる土煙と土埃。さっきの新型★〈スラッシュ〉の数倍は威力があったな。やっぱりヤバい魔法だわ。これ。もう、2つ目の『□雷専用貯蔵庫2』も、『□MP専用貯蔵庫』も残りが心許ないぞ? ここからは通常攻撃だけでいくしかないのか。やっべーぞ? オイラ、ドキドキしてきたぞ? 勿論、悪い意味で?
まだ姿は見えないけど、反応しやがった。あの白ボス。四足歩行だけど、木馬じゃないからね? 分かるかなぁ。ホワイトな基地な奴? 違うか。あれも、最後は沈んじゃったからな。泣けたよなぁ。敬礼しちゃうか? 今ここで?
上から突然聞こえてきた俺の声に驚いてはいたようだけど、なぜか姿は見えないし? でも流石と言うべきか? いつでも避ける体勢を取ってやがったな。こんちくしょうめ。どうだ? やったか? これは、『フラグ』になっちゃうか? 声にしてないから、セーフかな?
グ、グォぅ…… チリ、チリッ ぷす、ぷすっ
「お、おお。生きてたか。かわしたのか、あれを。すごい奴だな、お前。本当に魔物にしとくのは惜しいくらいだな。残念だ」
ボロボロでよろよろになりながらも、まだ負けてないと言わんばかりに、俺に向けて鋭い視線を向けてきやがって。やるじゃないか。怖いぞ? 流石、これだけの群れの『グレイウルフ』のボスだったんだな。結局、何頭居たのか数えてないけどさ。20以上は居たのかな?
雷と炎の追撃まで入って、痛々しく半身を焦がしてるのにな。凄えや。なぜか感動を覚えてしまうのは、ホワイトなベースのせいだからな。勘違いするなよ。思い出しちゃダメなんたぞ?
人は、そんなに便利にはなれないか? 魔法が在っても同じかな? 4、3、2、1、0。
「あの攻撃を食らって生き残ってる奴は初めてだ。初めて敵に使ったし? 半分でもかわした事と、それだけのダメージを負いながらも、まだ立ち上がってきた事には敬意を表する。これ以上苦しまないようにトドメを刺してやるからな。見事だったぞ。感動した!」
チャキッ!
ごめんな。お前にはもう、帰れる所はないんだ……
分かってくれよ? 俺は会いには行かないからな?
【新しく登録された魔法】
★《スラッシュ》剣を使った〈イカズチ〉に
〈火〉〈風〉を上乗せした合わせ技。
上書き再登録。
なぜか詠唱不要(剣があるから?)。
〈帯電〉からの大中小の出力調整可。
〈チャージ〉からの供給量%指定可。
アイテムボックスの『□雷専用機貯蔵庫』
からの供給量%指定可。
◇◇◇◇◇
読んでいただき、ありがとうございます。
『師走』。師が走る。死がそこに御座すことから、『死走』とも言われおります。俺だけに? いつも以上に用心して過ごしましょう? 注意1秒、け、毛があぁっ!!
そうです。髪の毛が抜けて行ってしまう程、後悔が一生続いてしまうような酷い怪我をしてしまうかもしれません。こんな忙しない時こそ時間に余裕を持って行動を。大怪我しても、誰にも面倒見てもらえない?
少しの深呼吸。少しの瞑想を。少し目を瞑っているだけでも目は休まりますし、心は落ち着くモノです。これを読んで下さっている方々に、変な邪気を呼び込んでしまわないように?
そこだっ! 《浄化弾》!! ぱしゅん!
パァ~~!!
信じるモノは救われる?