表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/84

そういう事でいいんだね?



 ちゅん、ちゅん、ちゅん


 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピッ!


 おっと。スマホの目覚ましか。もう朝ですか? さすが洞窟部屋。快適過ぎて寝過ぎちゃうからね。目覚ましは必須アイテムだ。ん? これも売れるか? 目覚まし時計。洞窟部屋専用目覚まし。うん。無理だな。俺には作れない。そんな便利な技術は、俺には無理過ぎる。




 うん。襲撃はなかったようだな。ある訳がないのかな。土の中だから。



「おはよう、アリー。早いね。よく眠れた?」


「はい。もう、凄い事になりました! 凄いです。私の〈身体強化〉! 凄く強化されました! あれも魔法の真髄なんですね! もう感動です!」


 おう。寝てないのか? いや。さすがに、そんな事はないよね?


「そうなんだ。良かったじゃないか。〈身体強化〉は、アリーにとっては不可欠なモノだからね。更なるレベルアップになった訳だよね」


「はい。そうなんです。だから余計に嬉しくて、もうグッスリ眠れました!」


「あ、うん。よく眠れたなら良かったよ。興奮して眠れなかったのかと思ったからね」


「はい。もうグッスリです。元気満タンです! 〈身体強化〉って凄いです!」


 あれれ~~? 〈身体強化〉って、何なの? グッスリ眠れる強化? あれれ~~? ますます分からなくなってきたぞ? ここも〈スルー〉か?


「おはようなのじゃ。2人とも、よく眠れたかの? わしは、もうグッスリなのじゃ。さすが、魔法の真髄による〈身体強化〉なのじゃ」


「おはようございます。ミラさん。私もグッスリでした! さすが魔法の真髄による〈身体強化〉ですね!」


「おお。そうか、良かったのじゃ。アリーもしっかり修得しておったからの。それは当然の結果かもしれんのじゃ」


「はい。ありがとうございます。それも、ミラさんの指導のお陰です。今までは、理論的な事が多かったですけど、実際に動いて、感覚で掴み取るまで頑張るって、もっと大事だったんですね。勉強になりました」


「そうか、それは良かったのじゃ。わしも、アリーのお陰で、理論的に考えるという事の重要性を学んだのじゃ。ありがとうなのじゃ、アリー」



 おう。2人とも、打ち解け合って成長している訳だね。お互いになかったモノを、お互いから刺激を受けて。うんうん。良い事だ。俺は嬉しいよ。理解に苦しむ所はあったけど、そこは《スルー》しておこう。


「おはよう。ミラ。2人とも、良い感じに仕上がったようで何よりだよ。じゃあ、朝食にしようか。今日中には町に到着したいからね」


「そうじゃの。早く朝食にするのじゃ。今日は、いつもより沢山食べられる気がするのじゃ」


「はい。朝食にしましょう。私も、いつもより沢山食べられそうな気がします」



 おう。出た。それも〈身体強化〉の副産物なのかな? 2人が言う所の魔法の真髄による〈身体強化〉。さて、2人はどこまで食べられるのかな?



  * *


 シェルターは、快適安全設備なんだけど、外に出る時に気を遣う。そう。出入り口の天井に〈ロック〉してある〈専用石戸〉を、〈ロック解除〉して収納する時ね。

 小さい穴を幾つか開けて、外を確認するんだけど、もしかしたら、石戸の上にゴブリンさんが座ってるかもしれないし、出入り口を見つけた刺客が潜んでいるかもしれないからね。用心に越した事はないのです。


 と言いつつも、いつでも攻撃できる体勢は取りながら、最後は一気に収納するしかない。


「よっ。…………はい。大丈夫。みんなも一応、周りの警戒はしておいてね」


 シェルターから出ると、朝日がより眩しく感じられる。その一瞬が怖いんだよね。俺だけかな? アリーの索敵もあるから、よっぽど大丈夫なんだろうけどね。土の中から、外のニオイが分かるのか。うん。不安は残るからね。しばらく周りを警戒してみるが、特に動きはなし。


「大丈夫そうだね。オールグリーンってヤツだ。森の中だけに」


「うむ。何もおらんようじゃな」


「はい。特に危ない感じもしませんし、大丈夫だと思います。オールグリーンって言うんですね。今度から使います。何か、それも格好良いです」


 お馬さんも、問題なさそうだし、馬車に繋げて出発しましょうかね。


  * *



 ちなみに、朝食の件だけど。2人が言う所の魔法の真髄による〈身体強化〉、その副産物と思われる食欲は、ほどほどで済んだ。俺セーフ。まあ、1人約1.5倍と言った所かな。俺達3人で、4人分の食料って感じだね。まあ、可愛いもんだ。うん。可愛いよ? 2人とも。はっ。こうしてまた、引き込まれて行くのか? うん。まあいいけどね。


 それ以上どんどん食欲が増えて行くのは勘弁して欲しいけど、まだまだ許容範囲だね。俺ってば、大人だからね。心もアイテムボックスも広いのであります。



  * *



 ようやく見えて来ました。『獣耳の町 ダッカル』。お待たせ『もふもふタウン』。どこに行けば会えるのかな。町中がもふもふ? お掃除が大変そうだな。うん。


 オイラ、ワクワクすっぞぉ!



 でも、まずは誤解を解かないといけないな。俺は、要望のあった地下施設を作りに来ただけで、町の運営には口出ししませんからねって。施設を作って、もふもふ堪能して、休憩したら、すぐに次の町に行きますますからね。住み着くにしても、その後だ。



 この町の警備を担当している組織の1つ、『ガーディアンズ』次第だけど、これ以上不祥事起こすと、またやっちゃうよ? いいの? 大人しくしてようね? オイラの癒やしを邪魔する罪は重いんだよ?



 ふんふんふん。ふんふんふんふんふん。




 あれれ~~?


 来る町、間違えた?


『獣人の町 ダッカル』


 あれれ~~? 間違ってないぞ? 門の上にデッカく書いてあるし。そうか。中に居るんだね? そうか。そうだよ。まだここは町の出入り口。そうそう『もふっとさん』が居る訳ないよね?


 ふんふんふん? ふんふんふんふんフンっ!



「なんじゃ、こりゃあぁ~~!」



 心の底からの、魂の叫びだ。


『獣人の町 ダッカル』。間違ってない。確かに、間違ってはいない。でも、『もふっとさん』も居ない?


 種族の説明は聞いてたよ?


【鼠人族】非常に小柄で素早い。ダンジョンや洞窟に生息。1匹見つけたら100匹いると言われている。


【牛人族】ミノタウロス。大柄で力強い。ダンジョンに生息。非常に好戦的で会敵(かいてき)即戦闘となる。


【虎人族】獰猛なうえに素早い。獣耳。群れを嫌い、深い森や洞窟に生息。好戦的だが、会敵(かいてき)即戦闘とはならないはず。


【兎人族】小柄で比較的素早い。長獣耳。環境への適応能力が低く、ひと所に落ち着いている。明るい気分屋で、傷つきやすい。


【竜人族】リザードマン。個体差が大きい。ダンジョンや湿地帯を好んで生息。好戦的で単騎戦から集団戦までこなす。


【蛇人族】ラミア。動きはやや遅いが獰猛。ダンジョンや洞窟に生息。会敵(かいてき)即戦闘となる。逃げられない。


【馬人族】ケンタウロス。やや大柄で素早い。比較的環境への適応能力が高い。友好的で頭の回転が早い。


【魔人族】姿は人と変わらず、角がある。身体能力が高く、魔力が大きい。人間と同じく、それぞれに様々な考えを持つ。


【猿人族】人間。個人差が大きいが、知能は高い。特殊な能力やスキルを持つ者が多い。それぞれに様々な考えを持つ、要警戒。


【鳥人族】ハーピー。小柄だが、獰猛で素早い。ダンジョンや山間部を好む。好戦的で集団で襲ってくる


【犬人族】やや小柄で素早い。獣耳。環境への適応能力が高く、比較的どこにでもいる。真面目で社会性が高い。


【豚人族】オーク。やや大柄で動きは遅く、知能が低い。ダンジョンや森に生息。好戦的で、会敵即殲滅(かいてきそくせんめつ)対象。


【鬼人族】ゴブリン、オーガ。

 ゴブリンは、小柄で知能が低い。どこにでも生息し、群を作る

 オーガは、大柄で知能は低い。ダンジョンや深い森に生息し、群れを嫌う。

 双方好戦的で、会敵即殲滅(かいてきそくせんめつ)対象。角もあるため、魔人族と考えられてきたが、知能も低く、外見も醜いため、別の種族であるとされている。



 種族間同士の力関係や、仲の良い悪いは、それこそ個人によっていて、比較的人間と共存共栄の方向にあるのが、魔人族と犬人族。勿論全てがという事ではなく、差別の対象となっていたり、戦闘を繰り返している地域もある。


 過去には種族の生き残りを()けた大戦争が繰り返されていたので、その名残もあると。また、ダンジョンに入らなければ会えない種族もいるが、戦闘は覚悟しておく必要がある。


 気になっていた、エルフやドワーフについては、【妖精】という(くく)りであったり、牛人族、魔人族、猿人族だなどと議論が絶えず、詳細は不明。当の本人達は、そこに(こだわ)りはないらしく、決着がつかない原因にもなっている。



 こんな感じで居るんでしょ? どこ?


 ぐっはぁっ! 町の名前は、あくまでも名前。分け隔て無く種族が集まれるようにと願ってつけた名前だとぉ?


 ひ、ひ、ひ、ひでぶぅっ!


 オイラのHPがレッドゾーンに!


 HPなんて知らないけどさ。



 ガルーマ領『獣人の町 ダッカル』。


 うん。確かに、獣人の人ばかりかな。うん。間違ってないよ? 人間も『猿人族』とされてる訳だしね。オイラが勝手に『獣耳の町』って思ってただけだし。ダシだし。出汁と書いて、ダシだし。《スルー》



 くっそー。やられた。騙された。イヤ。騙されてはないな。うん。ごめんなさい?


 こんなオチが待っているとは、…………


 とっとと仕事して、次の町に行こう!



  *


 とっとと仕事して、次の町に行こう! なんて言ったっけ? 言ったかも? 甘かった。とんだ甘ちゃんだった。オイラは、海に潜るしかないのか? それは海女さん。海人だ。はっ。それも獣人なのか? 海人だからな。そういう種族なんだろう。深いな。海の中だけに……


《スルー》


 きゃ~! 待ってました~!

 ようこそ、ダッカルへ! などと、歓迎の()が吹く事もなく、()()()に来たと思われてるのかな?



 どこからか情報が伝わっているのだろう。馬車の家紋を見ては、『首輪の人が来た!』『首輪の人ってあの人?』『あれが首輪の人?』『首輪の人だ!』と聞こえてくる。


 それって俺の事かな? 皆さん、俺の方を見て言ってるよ? 心当たりはあるけどさ。俺はお中元か! お歳暮か? ハムは持って来てないよ? ハムの人じゃないからね? 食べられないし、貰っても嬉しくないでしょ? 首輪なんてさ。


 くそぉ。これこそ黒歴史か。『首輪の人』なんて称号は要らないぞ。オイラの『二つ名』が『首輪の人』って、すげーイヤだ。なんか、『奴隷商』とどっちがいいって聞かれても困るけど、『首輪の人』もイヤだ。ステータスブックは、……しばらく封印だな。



 せめて、【兎人族】とかいないのか? 長獣耳だよ? 実物見たいよね? そこにロマンはあるのかい?

 傷付きやすく、ひと所に落ち着いてるって事だから、この町にはいないのかな? はぁ。


【魔人族】は、ぱっと見判別つかないし、【猿人族】なんて、今はどうでもいい。要警戒種族に認定されてるし。パブロ談。俺もそう思うし。


【犬人族】は、社会性が高く、比較的どこにでもいるんじゃないのかな? 俺は、パブロ一家しか知らないぞ?


 エルフやドワーフは、中央の町にたくさん居るって事だから、今はいい。後のお楽しみだ。


 ふー。(しょ)(ぱな)からこれだ。俺ってば、本当に面倒事しか起こらないのかな。



  * *



 俺達の到着に気付いた役人が迎えに来て、町長の屋敷まで先導してくれた。対応は悪くないのだが、少しはゆっくりさせて欲しかったかな。馬車の上から見てたけど、もふっとさんは、どこですか? いませんか? いないなら、もう帰りたいんですけど?


 せめて、兎人族とか犬人族が、もっとたくさん居てもいいんじゃね? まだ見てないんですけど? 《双眼鏡》使ってるよ? 当たり前だよね。捜さなきゃいけないからね。俺を待ってるはずの、もふっとさん。 


 そんな心の叫びも虚しく、屋敷に到着した。まだだ、まだ諦める訳にはいかんのだよ! 俺にはもふっとさんを愛でる義務がある! ん? ある? 知らない。



「ようこそ、タビトさん。それに、そちらのお2人も。私は、この町の長をやっている『コンスコー』だ。話はガルーマ様より聞いている。地下施設の作成だったな。よろしく頼む」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 思っていたよりもウェルカムな感じだな。俺達の襲撃依頼に、この町長は関わっていないのか? まあ、言っても町長だ。本音と建て前くらいは使い分けて当然か? 


 ミラとアリーには、変に接触されても面倒なので、窓口は俺1人。なるべく大人しくして後ろに控え、周囲の警戒と、参加者等の観察をお願いしてある。



「到着早々で申し訳ないが、早速打ち合わせに参加してもらってもいいだろうか。各部署の面々にも集まってもらっているから、挨拶も1回で済む。その方が、お互いに時間の節約にもなるからな」


「はい。構いません。そのつもりで来ましたからね。お気遣いありがとうございます」


 おや? 時間の節約とか、ちょび髭でっぷりな見た目とは裏腹に、やり手の町長なのか? 第一印象で人を判断しちゃいけないけど、どうなんだろうか。要観察って所かな。それに、各部署の面々が集まっているのなら、『ガーディアンズ』もいるのだろう。丁度いいかもね。


 挨拶も程々に、大きな会議室に通された。



「ミラ。アリー。ここに『ガーディアンズ』の関係者がいるみたいだから、しっかり警戒しておいてくれ。もしかしたら面倒な事になるかもしれない」


「あい、分かったのじゃ。わしらを襲わせた組織の関係者じゃの。もし襲ってくるようなら、わしが返り討ちにしてやるのじゃ。任せておけばいいのじゃ」


「はい。警戒しておきます。何が起こるか分かりませんからね」



 さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。さあ、どっち!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ