呆気ない結末の後始末は味気ない
「俺達は、ガルーマ・ザッヒン様の使者でもある!!
この『書状』が、目に入らぬかぁ!!」 バーン!!
あっ、《エフェクト光》 ぱ~~っ!
書状ですから紙だけど? 読めないとは思うけど、雰囲気だけでもね? でも、『家紋』くらいは見えるよね? ヘイ、カモーン! 兵士達はまだ来ないよね? 《冷風》《スルー》
「自分で言うのもなんだけど、ここにおわす俺を何と心得る。恐れ多くも現在の領主、ガルーマ・ザッヒン様から直接任命された、特殊部隊の一員になるんだぞ!?
皆の者、頭が高い。控え、控えおろう!!」
「あい、分かったのじゃあ! はは~~」
「え? ええ、そうね。分かりましたぁ! はは~~」
え? そこも乗っちゃうの? え? 知ってるの? てゆーか、あなた達も特殊部隊の一員でしょ? 助さん角さん役はどうするの? 俺こそ、うっかり八兵衛役だと思ったのに。残念だ? なんてツッコまないよ? 面倒だから。
「「「ははーー」」」
「お、おい。どうするよ」
「ばか、町長だけじゃなく、団長達まであんなだぞ。ここは逆らわずに様子を見るんだ」
「おお。そうだな。取り敢えずの様子見だな。ははーー!」
あれれ~~? ここは、『ええい、何をやっておる! あんな物は偽物だ! そやつを全員で斬り伏せろ!』とか言ってかかってこないのか? それでオイラが、『お前達、やっておしまい!!』とか言って乱戦にならないの? ポチッとな? 早くも一件落着になっちゃうの? 金さんや?
町長や? それに団長と副団長? そちらも、相当の『ワル』だったようじゃのぉ。誰も味方にならないの? そんなモノ? よっぽどの残念さんだったんだな。
「な、なあ。なんで俺達、あんな『書状』に平伏してるんだ? 家紋が有るのは分かるんだが、ここからじゃ何て書いてあるのか読めないだろ? 何かおかしくないか?」
「確かにな。書いてある内容によっては、ただの『指示書』かもしれないからな。何とも悩ましい状況である事は間違いないな」
「あ、ああ。言われみればそうだけど、あそこまで堂々とやられるとなぁ。嘘を言っているようには見えないだろ?」
「そうだよな。それに皆やってるからな。そういうモノなんじゃないのか?」
「そ、そうなのか? 皆がやってれば、それに従わないとマズいのか? でも、それでいいのかな?」
「なあ、あれが偽物だったらどうなるんだ? 何か分からなくなってきたぞ」
「お、おう。相手はたった3人だからな。ここに居る皆で行けば、何とかなるかもな?」
くっ。転ばせるぞ? 平伏してるのに? でも、この場の全員を相手にするのは厄介だぞ。どんな能力者が居るかも分からないし。出来れば、お互い無傷で終わらせたいんだよなぁ。既にここで倒れてる残念クサクサ3兄弟を除いてはね。やれやれ。
「そこの君達! それは良い意見だね。周りの意見に左右されず、自分の信じた考えを貫こうとする姿勢は素晴らしい。見所があるね! グッジョブだ! もうすぐここに、ガルーマ様がお見えになる。分かるか?
その時に、お前達の事はしっかり伝えておくからな。有望な人材が居たとな。だから、それまでは俺の言う事を聞いて、ここの人達をまとめて欲しい。これ以上事が大きくなると、全員『打ち首』も有り得るからな。分かるだろ?
まあ、そうなりたいと言うのなら話は別だが、真っ先に進言しておくぞ? ここには使えない人材が多いとな」
「ガ、ガルーマ様がここにお見えになるのてすか!?」
「そ、それはマズい! ははーー!! 何でも言う事を聞きますので、どうか、どうかお引き立ての程、よろしくお願いします!!」
「お、お前、自分だけズルいぞ! 俺だって! 何でもやりますので、どうか命だけはお助け下さい! よろしくお願いします!! ははーー!!」
「うむ。苦しゅうない。面を上げよ。それでは、ここに居る者達をまとめ上げ、速やかに混乱を鎮めるのだ。よいな!」
「「「ははー!」」」
これでよし。勢いって大事。拙い演技は、ノリと勢いでカバーだよ? 怯んだら負けだ。諦めないで!
では、今のうちに『首輪』を着けてあげましょう。優しいオイラは、ここでも演出付き!
《エフェクト闇》で首回りを覆い隠して、と。町長、団長、副団長。ご案~内~。
カシャ、《魔力供給》ぶわん。ふわぁ~ん×3
大好きな『奴隷』の世界にようこそ! 1度自分でも味わうがいい。2度と戻ってこれないと思うけどね。あ~ら不思議。〈闇〉が晴れると、そこには『隷属の首輪』が着いてたよ? 当然か。俺が着けたから。
リーンが居るけど、《エフェクト氷》で、3人の嘔吐物を氷漬け。臭いからね。汚いし? これで片付け易くなったでしょ? 後はよろしくね。
「さてと。これでよし。これにて一件落着か? んな訳ないか。これからだよね」
「何を言っておるのじゃ、まだまだこれからなのじゃ。やる事は沢山あるのじゃ。さっきの3人を中心にして色々やってくれておるようじゃが、わしらもやる事はあるのじゃ。早くこの場を制圧するのじゃ」
「そうね。私達の演技もこれでお仕舞いって事でいいわよね? それなりに面白かったけど、評論は後にしましょ。お互いに色々言いたい事はあると思うわよね?」
お、おう。評論大会しちゃうのか? オイラ、いつもの癖で、反省点しか思い浮かばないんだよ? あれれ~~? 何したんだっけ?
う~ふぅ~ふぅ~ふぅ~ふ。僕の土人形はどこ行った? ざっぱ~ん! これで証拠隠滅だ。無かった事にしといてね? 恥ずかしい黒歴史になりかねないからね?
「おいっ。見たか? 『殺人のトラップの人』は本当だったんだな。黒いモヤの後で、いつの間にか、あの3人とも『隷属の首輪』を着けられてたぞ!」
「うげっ! そんな『トラップ』まで用意されているのか。やっぱりあの人には、うかつに近付いちゃダメだったんだな」
「ああ。ヤバ過ぎるよな。あの黒いモヤは。『殺人トラップ』だけじゃなく『隷属の首輪』まで使いこなすのか。これじゃあ、近付いたら何をされるか分からないな」
バンッ!!
「よし、そこまでだ!! 全員その場で大人しくしていろ!! 下手に動けば容赦はしない!! いいかぁ! その場で待機だ!!」
おお。丁度いいタイミングでのご登場ですな。皆様。勢いよく扉を開け放ってからの決め台詞だからね。ドラマのワンシーンか? 証拠は隠滅済みだから、良かったよ? オイラの土人形ね?
別に犯罪の証拠でもないけど、俺の黒歴史の証拠にはなる代物だ。危ない危ない。あと少し遅れてたら? 何を言われるか分かったものじゃないからね。俺、グッジョブだ!
セバイラモさんまで張り切っちゃって? 先頭で戦闘態勢とってるよ? 現場はもう落ち着いてると思いますが、何か?
「お? おう。なんだ。思ってたのと随分違う状況になってるな。何があったんだ?」
下手に動くなと言われてますからね。俺は動かないよ? 容赦して欲しいからね? あの人相手に、何のエフェクトも通用しないんだよ? 多分ね。俺はそう思う。だから言われた通り、大人しく待機だよ?
「隊長! 町長、団長、副団長の3人には、既に『隷属の首輪』がはめられております!! もう、状況は『終わっている』ようにも見えますが!」
「お、おう。そうだな。そんな感じの雰囲気だな。せっかく暴れられると思ったのに残念だな。くっそー。『隷属済み』って事は、あれだな。これはアイツの仕業だな。
おい、タビト! どこに居る? ちょっと出てきて、状況を説明してくれ! 流石にこれじゃ分からんぞ!」
ちっ。ご指名が入ったか。このまま〈スルー〉する訳にはいかないか? 逝っちゃうか? 逆らっちゃダメだからね。大人しく出頭いたしましょう。俺は、何も悪いは事してないから、身の潔白を証明するのです!
「はい! ここです! 隊長! こっちですよ?」
俺は何を考えていたのだろう。別に証明する必要なんて何もないのにね。つい? 戦闘態勢のセバイラモさんを見て? タビット君? 泣いちゃダメだよ? オムツしてないからね? 濡らすな注意だよ?
素直に言う事を聞き、その場に待機したままのお食事会参加者達。次々と入ってきていた精鋭の兵士達。俺との面識もあるからね? 沢山居たはずの人達が、このやり取りを聞いただけで察してくれた。これが『忖度』か?
さーっと道が開け、俺を認識したセバイラモさんが歩いてくるよ? 海を割ったというモーゼの奇跡? 人波を割って通ってきた跡だから、セバイラモさんの軌跡、この人によって地獄に召された人達の鬼籍、閻魔帳なんてモノまであるのかな? 怖いよね。閻魔様? ピッタリじゃね?
そろそろ手に持った『得物』は下ろそうね? ここらで誰かを攻撃する気なの? 違うよね?
うん。違ったみたいだね。一応、まだ警戒していたみたいだった。うん。良かったね。タビット君? 泣くなよ? やっぱり1度くらいは泣いとくか? 限界かもしれないからね? よし。今だ! ちゅん!!
「まったく、やり過ぎなのじゃ。いくら演出とは言え、まさかあそこで『身代わり』を出すとは思わんかったのじゃ。わしの方がびっくりしたのじゃぞ? わしは前にも1度見た事があるのに驚いたからの、リーンなど、本気でイヤがっておったのじゃ」
「し、仕方ないでしょう。突然目の前に土人形が現れたのよ? 誰でも驚くと思うわよ? あれって、検証の時に『的』にしてたやつでしょ? ミラだって本気で驚いてたじゃない。あれは演技じゃなかったわ? 明らかに声まで違ってたから、あれが演技だとしたら名演技だわ?」
「な、何を言っておるのじゃ。じゃからわしも驚いたと言ったじゃろうに。それでもわしは、リーンと違ってイヤがってはおらんかったがの。ふふふ」
「だ、だから、仕方なかったって言ってるじゃない。次から次からへと色んな演出入れてくるんだから。その対応だけでも精一杯だったのに、いきなり土人形なのよ? そんなの想像できないじゃない。もういい加減にしてって気持ちくらい、少しはあったわよ!」
「まあまあまあ、お2人さんや? 反省会という名の言い合いはそれくらいにして、次の作業に移ろうか? セバイラモさんも待ってくれてるよ?」
「な、何を言っておるのじゃ! 誰のせいでこんな言い合いになったと思っておるのじゃ!」 ボッ!
「そ、そうよ! 誰のせいだと思ってるよの!」 ピッキーン!
ヤバい。タビット君ピーンチ! 折角さっきのピンチは何とか脱したのに! 今度はこっちか。あ。今回ピンチなのは、本体の方だ! でも、間接的にはタビット君にも影響するからな。同じ事だと思うな。やれやれだ。
「まあまあまあ、落ち着こうか、お2人さん? 俺が悪かったからね。それは理解してるから。はい。こんな時には《闇の癒やし》だね?
ほ~ら。段々気持ちが落ち着いてくる~。落ち着いてくる~。寝ちゃダメだよ? でも、気持ちは落ち着いてくるからね? ほ~ら、もう大丈夫かな?」
「ふー。まったく、都合のいい魔法ばかり持っておるのじゃ。こういう時には便利じゃからの。気持ちも落ち着いてきたのじゃ。やれやれなのじゃ。自分で怒らせておいて魔法のチカラで解決するとはの、とんだ魔法の使い手なのじゃ」
「そうね。すっかり気持ちも落ち着いてきたわ。こういうのを、やれやれって言うのね? 私にも理解できるわ。流石、規格外の旦那様だわ。やれやれね?」
とんだ言われようですな。タビット君? 魔法によるノリツッコミ。これが生活魔法のチカラなのだよ? パワーアップした生活魔法のチカラを見せてやったのじゃ! 感謝してよね? やれやれ。《冷風》《冷風》 もうこの場は冷やさなくてもいいよね。俺のせいか? あはは。
さあさあ、一応皆に《殺菌》してから作業に入りましょう。何が残ってるかわからないからね? 廃棄するにしても、毒は毒だから。慎重に扱わないと、余計な手間が増える事になるからね。
あ。廃棄するなら、オイラのアイテムボックスにぶち込んでおけばいいんじゃない? 『ゴミ箱』機能もあるからね。ふふふふふ。別に悪用しないから安心してね。臭いのイヤだし、そんな事は致しません! 失敗したくないので!
ここで燃やすよりも安心安全だからね? 空気の汚染も心配なし。生活魔法は、廃棄物にまで気を配れる、素晴らしい魔法なのですよ? このアイテムボックスも生活魔法の1部です。
これがあれば、『放射性廃棄物』の処理なんかも出来るのかな。多分、出来る? もっと身近な夢の島。ゴミ処理場として埋め立てられ、公園、スポーツ施設、公共施設になっている場所。
綺麗に整えられた足元には、今も負の遺産が眠る。地面の中はどうなっているんだろうね。臭いモノには蓋をした? その代償は? そんな場所なんて無数にあるんだよね。日本だけじゃなく、世界各地にもね?
いつまで隠し続けられるのかな。知らず知らずの内でも、影響は及んでいるはずなんだよね。悪い方の影響が。知らないだけ。公開されてないからね。その真実を知った時、その影響が目に見えて分かるようになった頃には、手遅れになったりしてるんだよね。大後悔が待ってるよ?
いつまで隠し通せるのかな? 誰の責任だ? ツケを支払わされる事になるのは、一般の人達が最初だよ? これまでもそうだったし、これからもそうに違いない。はあ。
そんなゴミ処理問題も一気に解決できるのか? 正に夢の魔法だね。もしもがあったら、大活躍できるよね? 勿論、金は取るけど? 何か問題でも?
皆ハッピーになれるかも? 危ない物質や危険な人物、要らない人達なんかも処理しちゃう? あれれ~~? それじゃあ俺の方が危険人物か? あはは。この妄想は、またの機会にね? そんな機会があるかどうかは分からないけど、ねっ!
はい。ゴミ処理完了。
『お薬』にも、色んな種類があって、町長達『おデブ3ズ』が服用してたのは、『痺れ薬』。人体への影響が比較的少なめなモノらしく、数時間以内に『解毒剤』を飲めば、何て事はない代物だったらしい。そして臭いを浴びせられた相手には、じわりじわりと効果が出てくるような『お薬』だったみたい。
何だよ。じゃあやっぱり、あの『おデブ3ズ』の口臭攻撃は、それなりの威力というか、効果があったって事だよな。くっ。やってくれたぜ。ただ臭いだけじゃなく、そのニオイすらも攻撃に変えてしまうとは。恐れ入った。天晴れじゃ!
なんて思うかよ!! くっそー。臭い上に、追撃で『お薬』効果も与えてくるとは。勿論、悪い意味での効果だけど。用が済んだら即奴隷ってやってれば、それなりに怪しむ人は多いけど、数日でも放置してから奴隷にしていけば、それだけ警戒も薄れると言う事か? 何かの事情があったんだろうかと思われる?
おデブさん達なりに、色々考えてはいたようだね。まずは自らが臭いニオイを醸し出す事により、これは、いつもの事、普通の事なんだと思い込ませる。この町では常識だとね。
そして次第にニオイにも慣れさせていき、ニオイに対する抵抗を薄くしていく。人は慣れてしまうからね。善いも悪いもなく、その中に浸っていると、段々身体も慣れてしまって、感覚すらも狂ってくる。
微妙なズレならまだしも、最初からここまでの強烈なニオイを浴びせられたら、その後の些細なニオイなど、あれに比べたら大した事ないって感じになるからね。
やるじゃないか。グッジョブか? バッドスメルだな。バッスメィル! テイスト・グッド、スメル・バッド! って昔、流行ったか? 美味いが臭いっ! ってヤツ?
違うか。アイツらは、上手くも何ともなかったからな。そもそも味わいたくもない。ボディ・チャビー、スメル・バッドだな。そのままだけど。『害』しかない、『毒』だらけの『おデブ3ズ』だったな。やれやれだ。