壊滅戦
ドォーーーッン!!
どっが~~ん!
「ぎゃ~~!」「ぐぉっ!」「っきゃ~~!」
ちゅど~~ん!!
「ガッァ!」
ボッカーン!! グッシャー!
「助けてくれ~! 俺は関係ないんだ!」
ドンガラガッシャーン!!
「1人も逃すな! 抵抗する者に容赦は要らん!」
「俺達は防衛団だ! 死にたくなければ大人しくしていろ!」
遠近感がおかしくなる。3階建ての住居がすっぽり入りそうな大きさの倉庫に、普通の人間と巨人さん達が入り交じる。
町外れにある大きな倉庫街。そのうちの1つの倉庫を改装し、この町での拠点としていた『ハート』と『スペード』。
『スペード』が狩ってきた『クラブ』の取り引き所にもなっていたらしいが、今はその面影もない。
ガラガラもくもくと音を立て、倉庫が崩れていく。その周辺の建物にも損傷が広がっているのが分かる。煙は火魔法か? それともお食事中だったとか? うん。これから気を付けよう。食事中は気が緩むからね。突然襲われたら、流石に対処が遅れるわ。
凄いね、防衛団。強いね、防衛団。仲間で良かったよね、防衛団。
セバイラモさん? 何してたんだろうね。俺達は外で待機してたから、出番もなかったし、倉庫の中が実際にどうなっていたのかなんて分からない。
分かったのは、セバイラモさんが『ハート』と思われる『猿面のおデブさん』と、もう一人誰かを引きずってきた事くらい?
本当に『5』の言った通りの感じだね。あべしって感じで殺されなくて良かったね? 阿部氏じゃないからね。『ハート』の人。これからもっと酷い取り調べが待ってるかもしれないよ? もう1人は誰だろう。『スペード』の1人かな? ちゃんと【赤の犯罪奴隷】の首輪も着けてるね。流石です。いい仕事してますね!
俺達3人は、後方支援あんど逃走者の殲滅、確保の役目。アリーの索敵能力も、市街地ではその威力が発揮されないけれど、走って逃げるヤツを見つけることはできるから。俺とミラもいるからね。本人達の希望もあり、現場まで足を運びましたとさ。結局何にもやってないけどね。あはは。
ミラは、ちょっと残念がっていたけれど、あの中に入って戦うのも気を遣うのが目に見えているからか、まあ、外での待機にご納得。その代わり、明日はこのストレス発散に、町のお外で狩りをするんだそうですよ。アリーと一緒にね。仲のよろしい事で。お肉とキノコの確保、お願いします。
事後処理は防衛団と関係者の人達にお任せして、俺達はまた衛兵待機所に戻った。牢屋もあるからね。
セバイラモさんが引きずってきたのは、ナンバー『4』だった。指輪持ちで、能力は、全武器使用可能の武器マニア。引き籠もりだから、今日も『ケース』に居たんだろうね。お気の毒?
『ハート』は、ただいま尋問中。もうしばらくお待ち下さい。
ナンバー『9』『10』は、死亡。
鑑定持ちで、全魔法使用可能の魔法マニアの『9』は、すぐに応戦してきたものの、あの人達のスピードとパワーに負け、頭を吹き飛ばされたそうだ。
厄介な魔法使いは、頭を飛ばすのが1番らしいよ? 下手に捕まえようとすると、こっちの被害が拡大する可能性が高いから、魔法で攻撃してきたら即殲滅対象確定なんだって。うえ。
指輪持ちで戦士、戦闘マニアの元軍人の『10』は、警備担当者で、真っ正面から団長のランバールさんと激突。筋肉対筋肉。拳対拳の応戦は、『10』も数撃は耐えたんだけど、巨人さんの筋肉パワーに押され、吹き飛んだ先で串刺しに。
恐らく、ナンバー『7』の遺品であろうと思われる、何に使うのか想像もしたくない『拷問道具』、そこに付いてた金物によって胸を貫通された。
漢と書いて、男と読む者同士の闘いは、何とも残念な結果で幕引きとなった。うん。漢だったよ。俺ってば、《双眼鏡》で見てたからね。うん。間違いない報告でした。
よくあるパターかもしれないが、『拷問道具』って言うのがね。残念でした。せめて、剣とか斧とかの武器のが良かったな。それくらい壮絶な闘いだったから。
セバイラモさんが回収した『指輪』は、俺にくれるって。『4』と『9』の2つとも。今回の情報料? 参加料?
勿論、中身はセバイラモさんが没収し、指輪だけ。と言っても便利なアイテムボックスだからね。有り難いですよ? 紐付けされて無い首輪よりはね。あはははは。正規品も、まだいっぱい収納されてるよ?
これで、『スペード』から回収された指輪が4つになった。元『認証の指輪』だ。別に集めてもないのにね。
持ち主が死んでも、普通に『簡易アイテムボックス』として使える便利グッズで、デザインも、どこにでもあるシンプルなもの。だから売らずに取ってあったけど、どうしようかな。
強化された回数によって、指輪の色とアイテムボックスの収納数が変わってくるからね。でも、流石に4つも要らないな。特に俺みたな便利機能も付いてないしな。人それぞれの能力に合わせた拡張機能がある訳でもなかったんだね。残念だ。
活用方法はまた考えよう。
指輪の色によるレベル分けは、
『シルバー→緑→赤→青→黒→?』
俺の指輪は『黒』で、その先があるのかは、まだ分からない。
前回の分
・認証の指輪 緑 0/20 元『6』
・認証の指輪 赤 0/30 元『8』
今回の分
・認証の指輪 緑 0/20 元『4』
・認証の指輪 青 0/40 元『10』
*
ナンバー『4』は、引き籠もりの為、取り立てて有用な情報は出てこなかったとの事。
『ハート』からの新しい情報は、まだ他にも『ケース』があり、『スペード』も居るそうだ。その数や能力までは分からないが、組織としては、これでもまだ1つの勢力に過ぎない。打撃ではあるが、壊滅までは程遠いそうだ。
ホントかな? あとどれだけメンバーが居るのかも分からないのに、そんな事断定出来るのか? 怪しいなぁ。首輪を着けての尋問に抵抗する手段でもあるのかな?
あれれ~~? 相手は『ハート』だからね。
一実行部隊には知らなくてもいい情報でも、裏の奴隷売買を取り仕切る闇の取引所、その担当者だよ?
『クラブ』の売買を管理し、金庫番を兼ねてるのに、持ってる情報がそれだけって言うのもおかしいよね?
うふふふふ。もしかして、1匹の蛇、『ウロボロス』のマークをシンボルとした闇の組織『カーズ』。その成り立ちや、組織構成、ボスや幹部の存在、どれくらい広範囲に展開してるのかくらいは知ってるよね? あと、気になる『ジョーカー』の存在も。
女と金に目がないんでしょ。侍らせてたその女達はどこ行ったの? 生きてるなら、その人達にも聞いてみれば? ここに連れといで。聞き取りにもコツがあるからね?
ふぅふぅふぅふぅふ。僕、どざえもん! ざっぱ~ん!
水攻めや火攻め、拷問道具、体を使って苦しませるだけじゃダメなんだよね。知ってる? 心を攻めて落としてこその1人前のデカなんだよ? カツ丼持ってきて?
と言う事で、『ハート』からの情報引き出しはお任せします。まあ、首輪があるからね。質問の仕方を変えたり、死なない程度に苦しんでもらえばゲロってくれるでしょ? 忍耐力なさそうだしね。あの体。『アベシッ!』って破裂したくなければ、ゆー、喋っちゃいなよ?
もう帰っていいですか? て言うか、休ませて。皆さん元気だね。オイラは休憩したいのさ。
え? お昼の時間ですか? ご一緒に?
そう言えば、昼ご飯はまだだった。この際だから、ご一緒しましょうか。ミラとアリーもお疲れ様。流石に腹も減ったしね。
ランチタイムは過ぎたけど、ランチメニューはありますか? はい。用意してもらった食事を頂きました。ご馳走様でした。
そのまま軽く報告も受けた。
幸か不幸か、奴隷にされてしまった『クラブ』は、あの倉庫の中には居なかったようだ。仮に、あの戦いに巻き込まれてしまったとしても、着けられていた首輪は残る。それが1つも無かったという事は、そう言う事だ。
更に、嬉しい知らせもありました。
流石『ハート』の金庫番。闇の組織って儲かるんだね? お金もたっぷり持ってたらしい。女と飲み食い以外に興味はなかったらしく、出てくる出てくる金銀財宝? 見てないから分からないけど、思った以上の収穫になったそうで、皆さん上機嫌。
こちら側の被害と言えば、反撃を受けた防衛団の負傷者が数名いたくらいで、それも回復魔法で治療済み。死者はゼロだったそうだ。うん。この町の戦力に逆らっちゃダメだよね。国家権力って怖い面もあるけど、味方に出来れば安心だ? 味方でいてくれてるうちはね? あはは。
と言う事は、地下施設利用料の交渉をする大チャンス。倍率ドン。ラストチャンスで更に倍? この機を逃しちゃ男が廃る。ねっ、ダンナ?
話が早過ぎて、助かるを通り越して大丈夫? しかも、現金先払いでいいってさ。
『残念獣耳タウン ダッカル』での反省から、ここではしっかりお金の話をしてから施工に入ろうと思ってたのに、これは嬉しい悲鳴です。勿論良い意味で。いや~ん。まいっちんぐ。
結局として、同じ過ちを繰り返さなかったんだから、これも1つの成長だ。だが、大人の階段を上る程じゃない。
予期せぬ大金が入ったから、もう大盤振る舞い。俺の言い値で払うって? しかも一括で。いつもニコニコ現金払い。うん。良い響き。
でもさ、良い話にこそ裏もある。『言い値』って言われるのも、逆に辛いんだよね。こちらの常識、人間性、価値観、人となりまで晒すことになる。これで、これからのつ付き合い方も変わってくるからね。
余裕があるからこそ出来る提示法。やりますね、町長のフラナガさん。いつの間に?
しかも、工事は明日から。即断即決即行動。早さが売りの町なんだって。『交易の町 アシャズ』とも言うからね。商売にはスピードも必要だ。抱える案件も多いから、決まった事はどんどん進めていかないと、この町の運営は出来ないらしい。
やはり、良い話には裏もありました。地下施設作成の打ち合わせは、今から、ここで行うそうですよ?
言い値で対価を払うからね。それくらいの強引なやり方も通じてしまうし、逆に有り難く感じるのが、あら不思議。みんな笑顔で仕事が回るから、経済も活発に回るんだね。うん。また勉強になりました。
そして、いつの間にか地下施設の打ち合わせ。
団長のランバールさんも加わり話し合い。
町の南北にある衛兵待機所の地下には、10人の巨人さん用の地下施設を作成。
町の東西にある衛兵待機所の地下には、30人用の普通サイズの地下施設を作成。
設備はこれまでと同様、指定した人数分の衛兵が寛いで生活できる地下施設。標準装備で、セパレートでバス・トイレ付き。
交代制勤務を考慮して階層も分ける、衛兵さんに優しい仕様。
『南・北 大型地下衛兵待機所』『東・西 地下衛兵待機所』
巨人さんの防衛団員は、全部で20名と言う事か? そんなに居るの? もう、尖った兜被って海賊になっちゃえば? 似合うと思うよ?
それより、問題なのが『言い値』の値段。元々は、毎月の施設使用料をいただくつもりでいたのに、一括購入だよ? どうしよう。この際、一喝しちゃう? 俺の首が飛びそうだから止めとこう。しかも、この場で提示してくれたら今払うって。
え? いつ払うって? 今でしょ!
え~。それも上手いやり方だよね。判断力を試せるし、どう返答するかでも試される。やり手過ぎるのも辛いんだよね。オイラ素人ですからね。ふふふふふ。
土地はそちらの持ち物、あくまでも請求出来るのは、地下施設の作成費用のみ。
普通サイズの1部屋の作成費用を、仮に10万としよう。安すぎるかな? でも、材料費も掛からないし、使うのは俺の土魔法の魔力だけ。俺1人で1人工。時間にして、ものの5分もあれば作成可能だし。それが30部屋だから、約2時間半で作成出来る訳か。まあ、そんなもんかな。
10万×30部屋=300万。
これが南北で2つだから×2=『600万』。作成時間は、休憩や移動を考えなければ約5時間か。
巨人さん用の大型サイズは、仮に1部屋15万として、同様に10部屋。時間にして、1部屋倍の10分か。それでも1時間40分。
15万×10部屋=150万。
これも東西で2つだから×2=『300万』。作成時間は、約3時間20分。
そこに、オイラ自慢の土魔法の技術を披露する訳だから、専門技術料、アイデア提供料、諸経費、その他を合わせると、
600+300+500+500+50+10=1960。
少しオマケして、切りのいい所で『2000万』エーンでいかがでしょう?
施工期間は、そちらの要望通り明日からの2日間。雨天決行。何なら、俺がこの町に居る間は、間取りの変更も受け付けますよ?
保証期間は1年間。以降は定期メンテナンス契約を結んで、保守・補強・軽い間取り変更受付可を俺が行うか、それとも、この町の土魔法使いの皆さんがその役目を担っていくか。
さあ、どうでしょう!
「安い! では、それでお願いする。
メンテナンス契約は、保留。
明日からの施設作成に、こちらから土魔法使いを数名同行させ、その様子を見て結論を出す事にする。
宿の手配は済んでいるから、今日からそこで過ごして欲しい。
後の詳しい打ち合わせは、他の者に任せてある。
それでは、私はこれで失礼させてもらう。
施設が完成したら、また会おう」
まっ、忙しいお方。少しだけ考えて事務的にそう告げると、足早に詰め所を出て行った。
おう。安いって。もっとかかると思ってた? 『ハート』が持ってたお金が凄過ぎて、感覚がおかしくなってるとか? それとも、反対の意味でイヤミとか?
うーん。分からんけど、俺としても、2日間の労働で2000万も貰えれば大満足だしな。だよな? また何かやっちまったか? 確かに、地下施設が1つ当たり500万は安いのか?
計算方法がおかしかったのか? これも初めての事だからな。俺の常識と、町長のフラナガさんとの常識に差があったのかもしれないし。まあ、いいんじゃないかなって事で、乾杯したいな。まだ早いのか?
あっ。また誰か出て来たぞ。秘書の人? 『後の詳しい打ち合わせは、他の者に任せてある』ってこの人か?
こっちの世界では流行ってんの? 確か前は、領主のガルーマさんのお世話係の人だったかな。『化粧』についての、心からの叫びを伝えたと思うんですけど?
『どこだかよく分からない世界のオデルローザの中心で、混沌を叫ぶ』
そう。せっかく瀕死のダメージを負いながらも『セカチュー』したのに。『世界の女性陣に向けて忠告』したんだよ?
無駄だったのか。オイラの叫びは通じて無かったみたいだね。他の男性陣からの忠告が無かったのかな? 残念だ。
化粧は、あ・く・ま・で・も・、調和のとれた範囲でした方が良いと思います。その方がお肌にも優しいし、お財布にも優しいよ? 女性はより美しく、男性はより見る目を養われる結果にもなるからね。いいこと尽くしだよ?
また化粧のぶ厚い秘書さんだった。やっぱり表情が動かないから、コミュニケーションが取りにくい。ははは。
まあ、仕事も心遣いも出来るみたいだから、これがこっちの世界の常識なのかもね。書面にして色々渡してくれました。親切な所も一緒だね。ありがとう。
しっかり2000万エーンもいただきましたよ? 忘れるハズがないし、ちゃんと準備もしてくれてたからね。そう言う約束ですから。出所がどこからだろうと、金は金。キレイもキタナイも無いのです。
仕事の対価としての報酬です。有り難く頂戴致します。しっかり仕方はするからね。やはり、これが普通だよね。『残念獣耳タウン ダッカル』め。覚えてろよ?
保護と言う名目で軟禁されてた仲良しエルフの3人組みは、無事に開放されたらしい。
取り敢えずではあるけど、『カーズ』の拠点の1つの殲滅も完了したからね。安全面を考えても、もう大丈夫そうだから、良かったんじゃないかな。
俺が収納してた馬車も、モークさんが引き取って行ったとの事。やっぱりね。その姿が想像出来ました? 車輪の修理が済むまではこの町に居る訳だから、また会う事もあるかもね。
簡単な街の地図をくれ、主要な施設の名前と場所をチェック。明日からの予定の説明。施設完成後の打ち上げまでしてくれるみたいだよ? え? もうそこまで予定組んでるの? さっき決まったばかりだよ? 早過ぎじゃね?
あれれ~~? これもこっちの常識? この町の常識なんだそうです。
オイラ落ち着かないかもしれないな。
『即行の町 アシャズ』。仕事に関係なく、遊びで来たい町かもね。




