勉強のお時間です 『エルフ』談
悩ましい問題は棚に上げ、ムードを変える為に折角だから気になってた質問もしてみたよ?
主に話してくれたのは、物知り『リーン』さん。
『エルリーンレデス』。緑髪の22歳。特技は弓。適性魔法は、風、木、水、氷。攻撃的で、緑の冷たい風、荒々しい力強さを感じさせる魔力を持った人。〈魔力感知〉より。
さん付けはいらないと言われたけど、何となく? 会ったばかりで仲良くなってもいないよね? だから、さん付けで呼んでます。
相手が年上年下関係なしに敬称を付けてしまうのは、昔からの癖。まあ、特に意味はない。同じ人間としての最低限の礼儀かな? 流石に子供にまでは付けないけどね。
【ハイ・エルフ】
「うーん。初めて聞いたわね。『エリフ』や『エレフ』の事かしら? その2つを纏めてそう呼んでるの? まさか、『エラフ』は違うわよね。エラフは偉人認定者だから、わざわざそんな呼び方しないわよね。
でも、エリフとエレフを纏めて呼ぶなら、便利そうな名称ね。町に帰ったら長老達に聞いてみるわ。もしかしたら、その呼び名は便利そうだから採用されるかもしれないわね。ふふ」
【ダーク・エルフ】
「……うーん。それは、話さなきゃダメかな?
うん。恩人だから話すわよ? お願いだから、ここだけの話にしてね。こほん。
一時期、私達エルフの間で日焼けが流行ってた時期があったらしいの。小麦色の肌っていうの? 健康的に見えて可愛いからって理由でね。もう何百年も前の話だと聞いてるわ。皆全身を真っ黒にしてね。勿論フルヌードよ?
それで、よくパーティーとかして競い合ってたらしいわ。どっちがより黒くて可愛く見えるかってね。日焼けコンテストとかって盛り上がってた時期もあったらしいわ。
それが、ある日誰かが、『日焼けは、シミやそばかすの原因になってお肌に良くないらしい。将来後悔する事になる』って情報を仕入れてきてからは、その流行りはタブー扱い。そんな恥ずかしい事してた時期なんてあったかしら? となって、全て無かった事にされたって話よ?
一部地域では今でも禁句扱いになってるから、その呼び名は使わない方がいいわよ? 多分、それをやってた本人達が居る場所ね。まだそんな呼び名を知ってる人が居たなんてね。そっちの方が驚きだわ」
うん。エルフにもあったんだね。黒歴史。俺だけじゃなかったよ? 若かりし日の、思い出したくもない苦い記憶だよね? 分かる気がする。なんか、親近感すら湧いちゃうよ?
調子こいていろいろしでかしちゃって、写真まで撮っちゃったりしてね? 後で大後悔。ネットで大公開しちゃえる時代になって、海外に大航海して逃げたくなっちゃう的な?
気付いた時には黒歴史は全世界に広がり、クラウドサーバーという実際には制御できないモノの中にいつまでも保存されてたりしてね……。きゃーーっ!
誰にでもある、知られたくない秘密。触れられたくない過去。それが黒歴史。オイラにもいっぱいあったかなぁ? はっ! 現在絶賛編纂中? 《スルー》
気を取り直して次の質問だ。
【ハーフ・エルフ】
「もちろん普通に存在するし、珍しい事じゃないわよ。それが原因で迫害を受けたり、差別されたりするなんて事は、今はもう遠い過去の話よ。
良い意味での自由主義って言うのかしら? 私達エルフは、長い人生全てが自己責任。それは恋愛も同じ事。本人が良いのなら、種族の違いなんて大した問題でもないわ。別に良いんじゃないのかしら? 幸せになれると思ったのなら、その本人の意思を尊重するわよ?
今回の旅だって、そういった出会いを求めてっていう一面もあるのよ? だから、あなたには感謝しかないわ。長寿の私達が奴隷になるって意味が分かるでしょう?
そんな辛い人生を送る未来なら、あのナンバー『8』のように死にたくなる気持ちも分かるわね。まあ、私達ならそんな事しないと思うけど」
なんて感じで話してくれました。うん。スッキリ? 最後は微妙な感じだったけど。確かに、これから何十年、何百年と奴隷で過ごす未来なんてどう? しかも強制的に結ばれた隷属契約による奴隷だよ?
うん。俺でも嫌だ。買った相手次第とかじゃないレベルだよね。何にも悪くないはずなのに、奴隷として生きて行かなきゃならない数百年? 仲間がいなければ死んだ方がマシかもしれないな。そう考えても仕方がないのかも。
でも、『8』は人間だったからね。違う意味で、思う所があったんだろう。うん。今頃、大勢のゴブリンさん達と仲良くやってるのかな。
本物のエルフさん達に聞いたエルフに纏わる話。これがこの世界の常識だからね。この3人の認識ではこれが正しいと。また、年代や住んでる所が違えば、それも変わってくるのかもしれないけどね。
はい。ありがとう。それともう1つ? いや2つかな?
パブロ逹から聞いてた、『エルフやドワーフは、【妖精】という括りであったり、牛人族、魔人族、猿人族だなどと議論が絶えず、詳細は不明。当の本人達は、そこに拘こだわりはないらしく、決着がつかない原因にもなっている』という話は?
「うーん。それもよく聞く話だけど、本当に興味あるの? ぶっちゃけ、私達にとってはどうでもいい話よ。
どこに分類されていようと、それで何かが変わる訳? 元を辿れば皆一緒なんじゃないのかしら? 命は1つでしょ。『生き物』『生物』として見たら、外見や特徴なんて違って当たり前。そこに拘る意味が分からないわ。
人間って変な所に拘るのよね。それって、戦争のネタにしたいだけなんじゃないのかしら? 争いの種を自ら探し出すような事には興味はないわ。
だから、私達からすれば好きにしてって感じなのよ? でも、『妖精』って言われるのは嬉しいかもしれないわね? なんか可愛いでしょ? ふふ」
うん。パブロ逹の言った通りだったんだね。納得だ。俺もそう思うからね。なんか、エルフさん達とは仲良くやっていけそうな気がする。この合理的な考え方とか、さっぱりした性格とか。うん。人生を達観した感じ? もっと楽しく生きようぜ! 的な?
よし。俺も1杯いっとくか。酒ならいくらでも在るんだよ? 毎日飲んでる訳じゃないし、もう俺しか飲まないし? また仕入れもできたしね。あはは。ありがとう『5』。大事に楽しく飲むからね? 最後にお前も1杯いっとくか? まあ、お前の持ってた酒だったけど?
【精霊魔法】
「う~~ん。ひ・み・つ・って事には出来ないから話すけど、これも口外無用でお願いするわね? いいかしら?
精霊は、見える人と見えない人がいるわ。見えなければ何の意味もない。そして、私達には見えないわ。これが全てよ?
……もう、しょうがないわね。酔ってなんかないんだからね? たかだかお酒の1杯やいっぱいなんて。ひっく。
見えるとどうなるか。だったわね。
精霊が見えても、精霊が居る場所に行かないと意味がないわ。そして、私達にもその場所は分からない。これが全てよ?
……えっと、もう1杯だけよ? あと、ジャンボシイタケももう1本貰えるかしら? それで、何の話だったかしら?
……やっぱり美味しいわね。このキノコ。もう! お酒が進んじゃうじゃない!
…………そうだったわね。精霊が見える人が精霊の居る場所に行くと、精霊と仲良くなれるかもしれないわ。仲良くなれたら、お友達になれるかもしれないの。そうすれば、対価なしに、そのチカラを貸してくれるかもしれないし、何もしてくれないかもしれないわ。
…………それはこちらも同じ事よ? 精霊の為に何が出来るかぁ。お友達の為に何をしてあげられるぅ? ……それが本当のお友達ぃ? ふふ。ふふ。ふっ。すー、すー、すー」
はい。お1人様、ダウンです。
お酒とジャンボシイタケによる見事なワン・ツー。いや、何杯飲んだんだ? そこまで飲んではいないよな? とにかく、見事な連係技によって10カウント入りました。ノックダウンです。カンカンカーン!
見事な眠りっぷり。お疲れ様でした。
美味しいからね。仕方ないよね。香りと歯応えにヤラレたって言ってたし? 流石秘伝の味。止められない、止めてみろ! 勝ったな。今回は、お酒のチカラもあったからね。ふふふ。必ず名物にしてやるぞ? ジャンボシイタケ、略して『ジャンタケ』。
〈精霊魔法〉自体は在るのか、在るのなら、それはどんなモノなのか。俺が知りたかったのは、そういう基本的な事。でも、違う方向から違う答えがが返ってきたよ? はっ、これがアッパーカット? ヤラレたね。『物知りリーン』さん。ありがとう?
言ってた内容は、至極御尤もな事でして。内緒にしたそうな物言いだったから、ちょっと期待もしちゃったんだけどね。無理に聞く必要もなかったんだけど、勝手に話し出しちゃうし?
精霊魔法は特別で、それこそ秘伝でもあるのかと思ったんだけど、この3人にもその能力は無いと。精霊が見える人も特別で、精霊が居る特別な場所に行って、精霊と特別仲良くならないと意味がないと。友達として精霊の為に何が出来るのか。それ次第では、対価なしにチカラを借りられるかもしれないと。
うーん。ま、俺には関係ないと思うけど、友達の為に何が出来るのかってさ、何にもしないよね? 友達だからって特別何かしてあげるの? ん? 俺の常識は非常識?
当然、助けを求められれば、出来る範囲で協力はするけどさ。勿論、悪事には荷担しないけど。こちらから敢えて何かをするなんて事はしないよな? うん。小さな親切大きなお世話? お世話の押し売りなんてしないよね? お互いにとってもマイナスになりかねないし? 程良い距離感は大事だよ? まあいいか。色んな考え方もあるからね。
それで、この『物知りリーン』さん、どうしようか?
『穏やかシーン』さん。どうします?
『エルシーンレデス』。黄緑髪の20歳。特技は弓。適性魔法は、風、木、水、光。物静かで、緑のきらめく風。陽気な暖かさを感じさせる魔力を持った人。〈魔力感知〉より。
「もう! 本当にリーンったら話過ぎ。精霊魔法の事は、私達エルフだけの秘密でしょ? どうせ酔って覚えてないんでしょうけどね。ごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました。精霊魔法の事は、本当に口外無用でお願いします。
いつもはこんなんじゃないんですよ? 信じられないかもしれませんけど、こう見えても『氷結のリーン』って言う二つ名持ちなんです。どうしちゃったんでしょう。こんなにお酒を飲むなんて、初めての事かもしれません」
げっ。出ました『二つ名』です。しかも『氷結のリーン』って格好良よくね? 今のこの状態からはちょっとイメージ出来ないけど、普通にしてる時の立ち振る舞いは、凛としていて格好良かったしな。
『首輪の人』『殺人トラップの人』よりは確実にいい名前だよね。ふー。
『土魔法の大家』『大先生』とかも何か違う気がするし? 二つ名って難しい?
それに、そうなんだね。精霊魔法は、エルフだけの秘密事だったんだね。あれれ~~? みんな聞いてたよ? 大丈夫?
あれ? いつの間にか、ナンバー『5』も寝てたみたいだね。寝落ちか? 自分の話す番が終わったから? 流石に色々あって疲れたか? まあいいか。寝てたのなら丁度いいや。これが最後のお酒になるかもしれないから飲み過ぎたのか? それとも、こっちもジャンボシイタケにヤラレたか?
「ミラ。アリー。『精霊魔法』の事は、エルフさん達にとっては大切な秘密事項だったみたいだから、ここだけの話って事でよろしくね? まあ、最後まで聞いてないし、内容も微妙な所までだったから大丈夫だと思うけどね。ははは」
「あい、分かっておるのじゃ。『お宝』話は、秘密にするに限るのじゃ。それに、そう気にもしておらんのじゃ。話が色々あり過ぎて、何が何だかの。
わしは食べ物の事以外に興味はないのじゃ。最初の頃の話など、もうほとんど忘れておるしの。わっはっはっ」
「はい。『お宝』の話は秘密にしないといけません。誰にも言いません。私も話がたくさんあり過ぎて、よく覚えていません。エルフさん達にも色々あって大変だなぁ、くらいですかね? えへへ」
「そうだよね。俺の興味があった事ばかり聞いてたからね。ははは。ごめんね、2人とも。
でも、そう言う事だから。『シーン』さん、安心して欲しい。俺達から今教えて貰った情報が流れる事はないからね。約束するよ」
「はい。お気遣いありがとうございます。そうしていただけると幸いです。それに、リーンの話した内容も、まあ許される範囲でしょう。隷属の首輪をしているとはいえ、命令もされて無かった事は私達も見ていましたから、あなた方には何の非もない事です」
えー。確かに命令なんてしてないけど、あれ以上聞き過ぎちゃうと何か良くなみたいだね。うん。以後気を付けよう。俺のせいで『リーン』さんが罰を受けるとかってなったら嫌だしな。
今回はセーフだったみたいだけど、エルフには極秘事項みたいなモノがあるんだね。『お宝』ね。うん。聞かない方が双方の為だな。
俺、謙虚。自分がヤラれて嫌な事はヤラないよ? 基本はね? ふふふ。
その後、いつの間にか寝っちゃってたナンバー『5』と、見事な寝落ちをしてくれた『物知り氷結のリーン』さんをそれぞれの小屋に運んび込み、俺たちはまた、『お話』を再開した。
夜はまだ長い。折角の機会を無駄にしないためにも、まだまだ聞いちゃうよ?
ほら、もう1本いっとく? それとも、もう1杯?




