嬉しい検証報告と嬉しくない遭遇
ちゅん、ちゅん、ちゅん
ちゅん、ちゅん、ちゅん
ちゅん、……
「ふー。もう朝か?」
やはり、シェルターは快適だ。目覚ましを掛けないと、起きられる自信はない。うん。そう。アラーム音に『ちゅんちゅん鳥』の鳴き声を設定してある。
勝手に名付けてみた。『ちゅんちゅん鳥』。そのまんま。
スズメ、ハト、ツバメ、カラス、灰色のヒヨドリ、白と黒のハクセキレイ。これくらいの区別はつくんだよ? 難しくはないけどさ。それとも違う鳥。何だろね?
ミラとアリーに聞いても分からない。食べられない、使いようのない鳥の名前になんて興味もないそうだ。俺、納得。
「小鳥の名前など聞いてどうしたのじゃ? あれは食べられる鳥かの? 美味しいのかの?」
「あの小鳥がどうしたんですか? 捕まえて飼うんですか? 私にも懐いてくれますか?」
いえ、ただの興味本位で聞いただけです。ごめんなさい。
音源は自然界? 鳴き声が気になってたら、気に入ってきちゃった的な? だから即録音。さすがに音量が小さかったけどね。怨霊じゃないよ? 《スルー》
ちゃんと生きてるからね。捕まえてもないし、ましてや攻撃なんてする訳がないんだよ? 失礼な。
皆でバーベキューしてる時に、近くの木の枝に止まってたからね。こっそり近づいて再録音してみました。盗撮ならぬ、盗音? 普通に盗聴だよね?
あはは。捕まるのかな? 盗聴行為自体は犯罪じゃなかったけど、家宅侵入してる訳でもないし、この音源をネタにして脅迫する訳でもない。オイラの目覚まし音に使うだけだから、違法となるような潜在的リスクもないと思うんだよ?
誰に教えるでもないし、情報漏洩にも当たらない。そもそも相手は鳥だから? こっちの世界ではどうなんだろうか。まあいいや。無事起きれたし?
ちなみに、ちゅんちゅん音の後には、普通に電子音が鳴るようになっている。ちゅんちゅん音だけじゃ起きられないかもしれないからね。時間をずらして設定済みだ。スマホって本当に便利だね。いつまで使える事でしょう。
結局、昨日のアリーの魔力感知検証は、アリーが魔力を意識できるようになった喜びから、もふもふ天国へ。そのタイミングで休憩場所に到着して、ミラも加わり、サラサラもふもふ天国大作戦へ。お互いの癒やしの時間に突入し、中途半端に終了。そう、お互いに。だから、良いんです!
すぐに快適安全シェルターお馬さんも一緒にねバージョンを作成し、楽しくお食事、乾杯、ほんわか癒やしのお風呂でまったりして終了。じゃなくて、しっかり検証は再開したからね。
で、その結果。
第1段階は、俺からの魔力の感覚が質の違いまで捉えられるようになってクリア。
第2段階は、自分の魔力の感覚もすぐにはっきり捉えられるようになってクリア。
第3段階は、魔力を身体の中で循環させてみる所なんだけど、魔力自体が少ない事もあり、なかなかに苦戦した。それでも、俺の〈魔力循環〉を使ってサポートする事により、何とか1人でも循環させる事ができるようになった。
第1段階では、魔力の流れを感知しやすいように、アリーの背中から魔力を出し入れしたんだけど、今回は両手を使って俺とアリーとの間で魔力を循環させてみた。俺の左手を使ってアリーの右手から魔力をドレインし、俺の右手からアリーの左手に魔力を注入していく流れでやってみた。
何故かその逆回りでは循環がスムーズにいかず、出来ない事もないのだが循環が凄く重く感じた。魔力にも流れる方向があると言う事なのだろうか。
それで言うと、魔力の流れは反対時計回り、左回りの方が効率が良いって事になるのか? これは、地球の自転や公転とかと関係があるのだろうか。うん。そんなの分かる訳がない。ここは地球でもないし、オイラには難しい事は分かりません。そもそも魔力が何かすら分からないのにね。
アリーは、魔力が少ないながらも、1人で自分の魔力を循環させる事にも成功。流石のアリークオリティ。またもや、サラもふタイムに突入。何故かミラまでも? 一緒に協力してくれたからね。感覚と表現は人それぞれだから、ミラからの言葉も何かのヒントにはなる。ミラとアリーの相性もいいからね。お互いを補い合って支え合ってやってました。だから、俺も含めてサラもふタイムだよ?
そう。アリーのための魔力感知の検証のはずが、オイラにも感知出来ちゃいました。てへ。俺の課題の1つ。俺には魔力があるのか。なぜ制限なく生活魔法が使えるのか。合わせて2つだね?
アイテムボックスの『□MP専用貯蔵庫』を使ってる時には分からなかったけど、アリーと手を繋いで魔力を循環させてる時に気付けたよ? あれれ~~? これが魔力ってヤツなのかってね。
両手が塞がってるからリアクションも取れないし、アリーの検証中だから、尚更邪魔しちゃ悪いしね? しね? 俺が? やっぱり、サラサラもふもふタイムの怨みは恐ろしいものだ。でも、あれは良いものだ。これでオイラは、あと10年は戦えるよ?
それからは、アリーと同じ流れで検証していった。目の前で見てたし、そんなに難しいものでもなかったかな。俺の場合は、生活魔法とは言え魔法は使えるのだから、魔力はあって当たり前?
だから、第1、2段階もすぐにクリア。第3段階の、身体の中での魔力循環も難なくクリア。〈闇〉属性のお陰かな。MPドレイン、MP注入まで普通に出来るからね。それを回してやる事くらい訳ないさ。なんちゃって。
散々ミラやアリーに説明してきたからね。人体の仕組みとか? スマホに入れてる映像使ってね。あはは。それで出来なきゃ違いの分かる男が廃るってもんですぜ、アニキ。
うん。スッごい頑張った。風呂に入りながらも頑張った。さすが癒やしのお風呂です。日本人の魂です。オイラに魔力循環を教えてくれたよ? 結果としてね。
お湯に、〈癒やしの光〉〈闇の癒やし〉を同時に発動させる《癒やしの光闇》を使うからね。入浴剤代わりにね? そしたら気付いたよ。キラーンって閃く効果音は鳴らなかったけど、そんなエフェクトが出来るようになるといいなぁなんて思ったりもして? フレクサトーンって言う打楽器は売ってないのかな? ニュータイプになれるかも? 新しい変な感じの人間に? 新種類? 《スルー》
恐らく、〈闇の癒やし〉が、魔力を感知するのに効果的なんだと思った。アリーの時もそうだったけど、魔力の感覚として掴みやすかった。ありがとう。アリー。ありがとう生活魔法。ありがとう俺。
でもね? オイラが魔力循環出来たって、だから何って感じだよ? だってしょうがないじゃないかぁ。そんな事しなくても、これまで普通に使えたし、魔力の大小、有無なんて俺には関係ないからね? あははーん。
でも良いんです。俺にも出来るようになりました。風呂上がりに乾杯か?
そして、更にもう1つ? もう3つ? 5つ? もういいや。
そもそも、〈MPドレイン〉と〈MP注入〉は正反対の別物で、同一人物が同時に発動するなんて事はできない魔法らしいよ? 何でだろうね。出来たよね?
アイテムボックスの『□MP専用貯蔵庫』があったから出来た反則級な魔法。それが魔力循環らしいよ。俺じゃないと出来ないみたい。生活魔法だから? ふふふ。えへへ。サラサラもふもふか?
至福の癒やしのお風呂タイムで魔力循環を体得した俺は、既にニュータイプ。いや、こっちの世界では普通の人だけど?
風呂上がりの乾杯をしようとリビングに行ってみると、ミラとアリーは魔法の検証を続けていた。
そこで、ミラも加えて3人で手を繋ぎ、輪になって魔力循環をしてみた所、あぁら不思議。流れるんだね、魔力。手を繋いでいればイケるみたい。方向はやはり左回りのがスムーズに流れたし、何か凄く仲良くなれた気がしたね。うん。サラもふ祭りで盛り上がってたからかな? 死なないよ?
そこでも気が付いた。『魔力の質』ってヤツに。人によって何かが微妙に違うみたい。ミラとアリーには分からなかったみたいだけどね。ミラとアリーの位置を入れ替えてみた所、これまたあぁら不思議。俺の手に流れてくる魔力の『質』が違うような気がした。
ミラの魔力は、大きく力強くて暖かい。攻撃特化の火魔法の使い手だからかな?
アリーの魔力は、少ないながらも暖かく、アリーの優しさまで伝わってくるような気がした。
人によって性格も違うように、魔力にもその人なりの何かが現れているのだろうか? 2人には違いが理解できないみたいだから、これ以上の検証は出来なかったけど、これは面白い検証だった。人の性格によって魔力の質が変わるのなら、魔力を感知できれば、話をしなくても、その人の性格がある程度は分かるかも?
これは世紀の大発見? 正規の決まり事? こっちの世界での常識なんだろうか。うん。いい事気付いた。俺ないす。
しかも、この魔力による大雑把な性格分析、俺が意識出来るようになったからか、手を触れていなくても、俺の生活魔法の射程圏内ならば、何となく感知出来るようになっていた。2人の協力があってこそ知り得たチカラだね。ありがとう。
有効射程も広がってるからね。今後の対人交渉でも使えるかもしれないな。ふふふ。
★《魔力感知》射程圏内にいる対象の魔力を感知し、おおよその魔力の質を感じ取る。有効射程は120㎝。
え? 俺の魔力量? 聞かないで! 聞かないでおくんなせぇ、旦那。殺生ですぜ? アリーの魔力量が少ない何て言えないよ? オイラも大差なかったし? ふんだ。
でも、魔力量は増やせるって聞いてるし、読んでるし?
諦めないでっ!
★《俺用魔力循環》ずっと続けてますが? 何か問題でも?
『聞いた』のはミラからね。使って減らして食べて回復してってを繰り返していけば、個人差はあるものの、ほんの少しずつでも魔力量は増えていくらしい。食べて回復するのは、あなただけ。それはミラクオリティ。
『読んだ』のは、皆さんご存知、いろんな小説から? うーん。ファンタジー。ここでも役に立つとはね。あっちの世界の常識も通じる所はあるのです。あっちの世界は二次元の? あれれ~~? まあいいや。
心強い? 根拠を元に、新魔法として登録して実践開始。きっと何かの役には立つはずだと、開き直って発動を続けます。
★《俺用魔力循環》〈闇〉の力を借りて、無意識でも体内での魔力循環をし続ける。意識すればより効率は増す。
ミラは、この3人での循環により、更に魔力の効率アップ? 今までも普通に循環は出来ていたのだが、魔力を放出する事は得意でも、魔力が外から入ってくる感覚は初めてで、食事以外にも自然回復による感覚が掴めそうだとのこと。いわゆる瞑想ね。
流石のミラクオリティ。実際に、瞑想の検証中にそのまま眠ってしまいましたとさ。やっぱりそれが1番回復すると思うけどね? いや、ミラの場所は食事が1番か? 安らかにお眠り下さい。
お疲れ様。サラサラ、サラサラ。
そして、アリー。〈身体強化〉への応用が利くかどうかの検証は、絶賛発売中。いや、絶賛奮闘中。俺が言うのも何だけど、魔力量が少ない分、身体の1部分に魔力を集中させるのも大変で、これからも訓練を続けていくそうだ。コツさえ掴めれば出来そうな気がするとも言ってたし、今後に期待しましょう。
俺と一緒に魔力量も増やしていければ、案外簡単にクリア出来るかもしれないしね。そうすれば、索敵能力への応用も簡単らしいから頼もしいものです。流石のアリークオリティ。ちゃんと、おやすみなさいと言って分かれたからね?
うん。おやすみ。アリー。お疲れ様。もふもふ、もふもふ。
うん。やっぱり1つじゃなかったね。1つ言いたいとか、1つ聞きたいとか言われたら覚悟しないとね? 実際には幾つだったんだろうね? ふふふ。
いや~。幸せな1日でした。みんな笑顔。うん。悪くない。サラサラに、もふもふだ。いいね。あの感じ。ずっと続いばいいのにね? あはははは。
「はっ! 正面の街道から恐らく人間! 数は4? 5人くらい? 馬もいますが、止まっているようです」
これがフラグになりました? 何やら不穏な空気が流れて来ております。街道で馬が止まってるって? アシャズの町からやって来たであろう馬車が襲われているのかな? 《双眼鏡》。ふむふむ。踏まれてる?
やってきました変質者? あなたはチート持ちですか? やってきました奴隷狩り? 首輪を持ってるようですね。
『中央の町 アシャズ』。奴隷商館がある町だ。という事は、奴隷狩りとその組織がある可能性も高い。セバイスさんの言ってた通りになったかな。はい。正解。2ランクアップだよ? 嬉しくないけどね?
この幸せな時間の余韻を邪魔しやがって! くっそー。
「ミラ、アリー。多分テンプレ発生だ。首輪を持ってるヤツが奴隷狩り。馬車に乗ってた人が襲われてるみたいだ。……また2人なのかな?」
「なんじゃと! 奴隷狩りとな。よし。ここは、わしの出番じゃな。わしのバーサクモードを見せてやるのじゃ!」
「う、うん。まだ早いからね。まだ距離もあるから、一旦落ち着こうか、ミラ。戦闘になったらお願いするからね。まずは、注意をこっちに向けるから、銃を撃って大きな音を立てるからね。耳を塞いでおいた方がいいかもよ。アリーも、注意してね。撃つよ?」
「はい。分かりました。いつでもどうぞ」
「なんじゃ。以前の奴隷狩りが使っておった銃じゃの。まだ持っておったのじゃな。全て例の奴隷商に預けたと思っておったのじゃ。それは大きな音がするからの、わしは好かんのじゃ」
「うん。渡したのは1つだけで、まだ3つ持ってるよ。もしもの時の為にね。弾数も少ないから練習もできないし、武器としては微妙だけど、こういう時にはいいかなってね?」
正直言って、狙いを定めて撃ったとしても標的に当てる自信はない。誤射って言うのかな。思わぬ所に跳んでいってしまって、違う被害を発生させちゃう的な? そんな予感しかしないので、この銃を戦闘に使うつもりはない。
ダーン!
それならば、威嚇用として、注意を向ける時の合図として使った方が有用性はある。って感じで空に向けて発砲してみました。この距離なら聞こえてるよね?
【追加登録された魔法】
★《魔力感知》射程圏内にいる対象の魔力を
感知し、おおよその魔力の質を感じ取る
有効射程は120㎝
★《俺用魔力循環》〈闇〉の力を借りて、
無意識でも体内での魔力循環をし続ける
意識すればより効率は増す
◇◇◇◇◇