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サラサラ もふもふ



『中央の町 アシャズ』に向けての移動中。

 昼からも平和だ良い天気。


 馬車は、交代で御者台に座る事になっているけど、今はミラの番。〈バーサクモード・ミラバージョン〉の決めポーズも完成したからね。ご機嫌の笑顔が眩しいね?


 今度は、アリーと2人で馬車の中。



「ふー。今のところ順調に進めてるから、このまま何事もなく『中央の町 アシャズ』に到着できるといいよね」


「はい。そうですね。ゴブリンも出てきませんし、何事もないのが1番です。私の索敵にも何も引っかかりません。しばらくは大丈夫だと思います」


「そっか。アリーの索敵能力も大幅に向上してるんだよね。ホント有り難いよ。安心感が違うからね。それでどう? 今後、アリーがチカラを入れていきたいものは決まった?」


「はい。私は、お2人の後ろでサポートしていきたいと思います。タビトさんに言われた通り、私は、私のできる事をします。それがタビトさんの為になっているのなら、それだけでも嬉しいですから。

 だから、魔法の適性のない私は、バーサクモードは諦めて、索敵能力と花嫁修業を頑張ります」


「そっか。アリーがそう決めたんなら、それを応援するよ。バーサクモードは出来なくても何の問題もないからね。アリーがバーサクモードを発動させて敵に突っ込んでいくよりは、笑顔でそばにいて欲しいかな。ははは。

 それに、アリーの索敵能力は凄いと思うからね。正直、戦闘能力を付けるよりは、そっちを伸ばしてもらった方が有り難いよ」


「はい! 私もそう思います。やっぱり戦闘は苦手ですから、危険から逃げられる身体能力があれば十分だと思います。それに、私の笑顔が良いって言ってくれるなら、そっちの方が嬉しいです! えへへ」


「うん。アリーの笑顔を見ると安心できるからね。これからもその笑顔でいて欲しいかな」


「はい! ありがとうございます」



 そっか。俺達にとっても有り難い方向に進んでくれるみたいで良かったよ。協力はすると言ったものの、バーサクモードに走られなくてひと安心だ。ふー。でもなぁ、試してみたい事もあったんだよな。どうしようかな。まあ、一応本人に聞いてみればいいのか。


「あのさ、アリー。ちょっと聞きたいんだけど、犬人族の人達には魔法の適性がないっていう事なんだけど、アリーは『魔力』は感じられるの?」


「はい? 魔力ですか? そうですね、何となくですけど、〈身体強化〉を発動させてる時には、これが魔力なのかなって感じはしています。ずっと発動させてると身体がダルくなる気がしますから、多分これが魔力が減ってるって事だと思ってました」


「あ。やっぱりそういう感覚はあるんだね。うん。そうか。じゃあ、お宝の魔法の真髄を活かした〈身体強化〉を使いこなせるようになって、その魔力の減っている感覚はどうなったの? やっぱり魔力の消費も抑えられてる感じがするのかな?」


「えっと、そうですね。そこはあまり意識してなかったですけど、そう言われてみればそうですね。これまでよりは身体能力が強化されているのに、魔力の減ってる感覚は少なかったような気がします」


「やっぱりそうなんだね。うん。魔法の真髄って言うのも、あながち間違ってない解釈なのかもしれないね。凄いね。ミラはここまで分かってて言ってたんだよね? 多分?」


「はい。凄いです。魔法の真髄。だからお宝なんですね。ようやく理解できた気がします。私にもそんなチカラが使えるようになってたんですね。もう感動です」



 うん。そうだよね。という事は、アリーももう1段上を目指せるのか? 補助魔法とはいえ、魔法は使える訳だからね。何となくだけど、魔力も感じられると。うん。俺と似てるよね。どこまで出来るのか検証次第だけど、やってみる価値はあるのかな?


「アリー。ちょっと試してみたい事があるんだけど、いいかな? アリーは、何となくだけど魔力は感じられる訳だから、その感覚をもう少し上げてやる事ができるかもしれないんだ。感覚を上げるというか、魔力を出し入れする感覚だね。そうすれば、自分の魔力の存在も分かりやすくなると思うし、〈身体強化〉にも、もっと応用が利くかもしれないんだよね」


「えっと、そんな事ができるんですか? 魔力をはっきり感じられるようになれば、確かに〈身体強化〉にも応用が利くかもしれません。ミラさんがやってたように、魔力を1部分に集中させたり、必要ない所は弱めたりできれば、凄く便利に効率的に使えるかもしれません」


「あっ。やっぱり分かった? 流石だね。そうなんだよね。そういう使い方が出来るようになれば、凄い便利だよね。もしかしたら、索敵能力が強化できるかもしれないし、消費する魔力を減らせるかもしれないよね」


「はい! そうですよね。そんな事ができるなら、やってみたいです。どうすればいいんですか? 私は何をすればいいですか?」


「うん。アリーは特にやる事はないのかな?

 あ、そうか。今から、〈MPドレイン〉と〈MP注入〉を使ってアリーの身体から魔力を吸い取ったり、注入したりするから、その感覚に意識を集中させて欲しいかな。循環させてみるのは初めてだから、どんな感覚になるのか分からないけど、少しずつやっていくから危険はないと思うよ。イヤな感じがしたり、怖くなったら言ってね。すぐに止めるから」


「……えっと、そんな事まで出来るんですか? タビトさん? 魔力吸収と魔力注入って言ったら〈闇〉属性ですよね?

 そう言えば使ってましたね。タビトさんのバーサクモードの時に見たような?

 えっと、いくつ属性を使えるんですか? 聞いた事なかったですけど、やっぱり規格外なんですね。いろいろ使え過ぎておかしいと思います。私は補助魔法しか使えないんですよ?」


「あ、うん。そうだよね。その点に関して言えば規格外なのは認めてもいいのかな? でも、いろんな制限もあるからね。魔法の威力も、使い方も、普通の魔法とは違うみたいだからね。例え沢山の属性を使えたとしても、メリットもデメリットもあるんだよね。だから、あんまり教えたくない情報なんだ」


「あっ。ごめんなさい。そう言うつもりで聞いた訳ではないですから。私には補助魔法しか使えないのに、いいなぁって思って、それでつい」


「大丈夫だよ。ミラとアリーには隠す事じゃないからね。でも、どこで情報が漏れるか分からないから、出来れば秘密にしたいかな。ついうっかりなんて、よくある事でしょ?」


「はいっ。ごめんなさい。魔法の適性や能力に関しては、成人してからは家族でも秘密にするべき情報です。知ってました。そう教わってます。規格外って事でも十分なのに、それ以上は聞いちゃダメでした。以後気を付けます」


「うん。ありがとう。でも、ミラなんて自分から話してたくらいだからね。気にする人とそうじゃない人もいるからね。まあ俺の場合は、デメリットを知られたくないから秘密って事でお願いね」


「はい。分かりました。誰にも言いません」


「よし。じゃあ早速やってみようか。分かりやすいように、アリーの背中から魔力を循環させていくからね。背中をこっちに向けて、意識を俺の手に集中させておいてね」


「は、はい。よろしくお願いします。ど、どうぞ?」


「あ、うん。そんなに緊張しなくていいからね。リラックスして、手のひらからの魔力の流れに集中してね。じゃあいくよ?」


「はい。お願いします。……初めての事ですから、や、優しくして下さいね?」



 おっとぉ。いかん、いかんぞ。ついでに、これも登録しておこう。拠点に帰ったらパブロ達にも使うかもしれないからな。

★《魔力循環》アイテムボックスの『□MP専用貯蔵庫』を活用し、手のひらで接触した対象に〈MPドレイン〉〈MP注入〉を繰り返し、MPを循環させる。対象に魔力の流れを感じ取らせるための訓練用魔法。


 うん。いいんじゃないかな。よしよし。では、《魔力循環》


「んっ、…………」


「大丈夫? ゆっくり動かしていくからね」


「は、はい…………何か温かいものがゆっくり出たり入ったりしているような感覚はあります。気持ちが良いです」



「……早いね。もう感じ取れちゃったの? もうちょっと、こう、普通ねぇ。魔力を出し入れしてる訳だから、こう、声もさぁ……まあいいや。忘れて」《スルー》


 言えない。もうちょっと期待してたなんて、言える訳がない。


「えっと、声を出していけばいいんですか? そうですねぇ、手のひらから背中に温かいものが出たり入ったりしてる感覚ですから。今感じている、これが多分、魔力って事ですよね?」


〈スルー〉が効いてない? あ。これは俺専用の魔法だった! おう。これこそ《スルー》だ。しかも普通に会話する流れだし。俺ショック。2重の意味でショックだよ? 落ち着け、落ち着くんだ。俺。こういう時こそ《闇の癒やし》だ。ポワァーン



「うん。そうだね。多分それが魔力だと思うよ。それにしても簡単に感じ取れたね。これもアリーのセンスがあるからかな? 流石のアリークオリティだね」


「あっ。んっ。何か今、感覚が変わりました。魔力が出たり入ったりしている中で、その上から何かに包まれているような感じです。とても落ち着きます。さっきも2回ほど何かを感じましたが、今の方が魔力の感じが強くてハッキリ分かりました」



 おう。しっかり〈スルー〉も効いてたよ? 流石アリーだ。それでも動じず魔力を感じ取ろうとするとは。凄まじいポテンシャルの持ち主だ。正に原石? 何の?


「おお。凄いね。今の変化にも気付けたんだね。今のは、精神耐性を少しだけ上げる魔法だからね。これが感覚として分かるって事は、もう魔力の感覚の方は大丈夫かな?」


《スルー》。話を無視・聞き流ししても、されても、ダメージを軽減できる気がするようになるという、俺専用魔法だ。効き目は不明? 使ってる本人すら気になっていないという、凄まじい効力のある魔法だよ?



「ああ、それで少し精神的に落ち着けている訳ですね。やっぱりタビトさんは優しいです。私の為にそこまでしてくれるなんて嬉しいです。

 はい。もう魔力の感覚はこれで大丈夫だと思います。分かるようになったと思います。ありがとうございます」


 ぐはぁっ。なんでも善意に受け取ってくれるこの純情さ。この信用度。なんて可愛いんだろうか。オイラ間違ってたね。反省だ。いや猛省するよ? 変な声とか期待したオイラが悪いのさ。ごめんなさい!



「よし。じゃあ、第1段階はクリアだね。次は、俺の協力なしに、その感覚を維持できるのか。できるなら、今度はそれを身体の中で循環させてみようかな。どう? 出来そう?」


「はい。やってみます。このまま自分の中に魔力を感じてやればいいんですよね。

 ん、…………はい。大丈夫です。さっきよりは少ないですけど、私の中にも魔力があるのは分かります。これが私の魔力なんですね? 初めてこんな感じで意識できました。

 やりました! 私にも、少ないですけど魔力が感じられます!」


「うん。良かったね。多分それがアリーの魔力だよ。それにしても、1発で感覚を掴んじゃうなんて、流石のアリークオリティだ。俺まで嬉しくなってくるよ。その笑顔。やっぱりアリーは、その笑顔が良いね。うんうん。良い笑顔だ。よしよし」 もふもふ


「えへへ。嬉しいです。そうやってタビトさんに頭を撫でてもらうと、とても幸せな気持ちになります。やったねって感じにもなりますから、また撫でて下さいね?」


 ぐはぁっ!! 公認ですか? もふもふ公認? いや、これは依頼だ。また撫でて下さいって言ってたし。間違いない! もふもふ依頼、謹んでお受け致します!


 おっし!!



「うん。いつでも撫でてあげるからね。いつもその笑顔でいてね。よしよし」 もふもふ


「えへへ~。幸せです」


「俺の方こそ幸せだからね。アリーの笑顔が見られれば嬉しいから。よしよし」 もふもふ



「これ。おぬし達は何をいちゃついておるのじゃ。休憩場所に着いて呼びに来てみればこれじゃ。2人だけでズルいのじゃ。わしも入れるのじゃ。わしも頭を撫でて欲しいのじゃ。1人で御者をしておった褒美に、わしの頭も撫でるのじゃ」


 おう。そんなご褒美をまたくれるので? ミラさんや。それも依頼という事で謹んでお受け致しますよ?


 おっし! おっし!



「ははは。別にいちゃついてた訳じゃないんだよ? アリーが、1発で自分の魔力を感じられるようになったから、そのご褒美で頭を撫でてたんだからね?」


「なんじゃと! アリーが魔力を感じられるようになったじゃと? それはホントか、アリー? もしそうなら、それは凄い事なのじゃ。犬人族のアリーが魔力を感じ取れるようになるとはの。これからの努力次第では、〈身体強化〉も更に向上するかもしれんのじゃ」


「はい。そうなんです。犬人族の私が魔力を感じ取れるようになったんです。タビトさんのお陰なんです。これから努力して、索敵能力も〈身体強化〉も更に向上させていきたいです」


「おお。それは良かったのじゃ。やったのアリー。わしも出来る事は協力するのじゃ。また一緒に検証するのじゃ」


「はい。ミラさんも、よろしくお願いします。えへへ。やっぱり嬉しいです」


「おお。そうだった。そう言う訳じゃから、わしの頭も撫でるのじゃ。わしもアリーに協力するのじゃし、いろいろ含めてご褒美なのじゃ」



 うん。何だかよく分からないその理屈もキライじゃないよ? ミラさんや。これこそ流石のミラクオリティ。俺にとってもご褒美だからね? ありがとう?


「はいはい。おいで、ミラ。いろいろ頑張ってくれてるからね。知ってるからね。いつも感謝してるから。ありがとう。ミラも、いつでも撫でてあげるからね。いつもその笑顔でいてね。よしよし」 サラサラ


「やったのじゃ! いつでも撫でてくれると言ったのじゃ。こんなご褒美の為なら、わしも、いつも笑顔でいるのじゃ。幸せなのじゃ。ふふふふふ」


「うん。よろしくね。ミラ。俺にとってもご褒美だからね。こうしてると、俺も幸せな気持ちになるからね。ふふふ。よしよし」 サラサラ


「タビトさん! 私もお願いします。はい!」


「うん。分かった。ミラも、アリーも、ありがとね。よしよし」 サラサラ もふもふ



 サラサラ 「ふふふふふ」


 もふもふ 「えへへへへ」



【追加登録された魔法】


★《魔力循環》アイテムボックスの

 □MP専用貯蔵庫を活用し、手のひらで接触

 した対象に〈MPドレイン〉〈MP注入〉を

 繰り返し、MPを循環させる。対象に魔力の

 流れを感じ取らせるための訓練用魔法。


◇◇◇◇◇


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