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そういう事だったとしても



「ただいまー。あ。もう2人とも帰ってたんだね」


「おかえりなのじゃ。思ったより早かったのじゃな」


「おかえりなさい。タビトさん。お疲れ様でした」


 2人とも無事で何よりだ。元気そうだし、笑顔が眩しいよ? ダブルプレーでも決めてきたのかな?


「うん。向こうからの要望も少なかったらから、思ったよりも早く施設が作成できてね。それに、土魔法使いの皆さんにも手伝ってもらったしね。この調子なら明日も早くも終わりそうだよ。

 それで、そっちはどうだったの? 狩りの成果はあった?」


「狩りの成果など、当然の事なのじゃ。お主から教わった『魔法の真髄』。パワーアップした〈身体強化〉も、ようやくモノに出来たのじゃ。やはり、狩りでの実戦の方が覚えも早かったのじゃ。身体が格段に軽くなった気がして、攻撃力も思った以上に上がったのじゃ。これは凄い事なのじゃ」


「はい。私も実戦によって、ようやく感覚が掴めました。私の〈身体強化〉も、物凄くパワーアップしたんですよ! それに、索敵範囲も更に広がってました! もう感動だったんです! これで、もっとタビトさんのお役に立てます!」


「そっか。それは良かったね。2人とも、センスは抜群だから。頭で理解して身体を動かすか、身体を動かして頭で理解するか。順番は人それぞれだけど、頭と身体の両方で理解する事により、更に身に付くようになるからね。うん。2人の笑顔を見てるだけでも、その成果が分かるよ。良かったね」


「そうなのじゃ。成果はバッチリなのじゃ。明日は、〈バーサクモード〉の検証をするのじゃ。実際に敵がいた方が、わしはやる気が出るからの。『ふおおーーっ!!』っとやるのが楽しくて仕方ないのじゃ」


 ぐっはぁっ! やはり、そのセリフは変える気はないようだね。うん。そうじゃないかと思ってた。はあ。俺の黒い歴史として遺るんだろうなぁ。《スルー》


「そうなんです! タビトさんの教え方も凄いです。頭と身体の両方で理解するっていうのがこんなに大事だったとは。分かってたつもりだったんですけど、あの〈スマホ〉映像のお陰で、身体の仕組みがよく分かりました。血液の流れ、筋肉の付き方、それを意識する事で、あんなに効率良く身体を動かせるようになるとは思いませんでした」



「うん。そうだね。アリーの場合は、パブロとルイの教育が高い水準にあったからだと思うよ。そこに新しい知識が入った事によって、飛躍的に強化されたんだと思う。アリーの理解力もセンスも良かったし。だから、両親にも感謝しなきゃね」


「はい。ありがとうこざいます。帰ったら両親に伝えます。タビトさんに褒められたよって」


「あ。うん。そうだね。それからね、『百聞は一見に如かず』『百見は一考に如かず』『百考は一行に如かず』『百行は一効に如かず』っていう言葉があってね。


 他者から何回も教えられるよりも、自分の目で1回見てみる方がよく分かる。でも、見てるだけでもダメで、自分の頭で考えてみないと意味がない。そして、考えたら実際に行動してみる事で、より良い成果が現れるようになるって感じかな。


 ちょっと長いけど、二人はそれを実践したって事なんだよね。実感出来ていると思うから、これからも、そういう事を意識していくと良いと思うよ」


「ほう。相変わらず面白い事を言うのじゃ。確かに、おぬしに映像付きで教わって、考えて、実際に行動したからの。それで効果もしっかり現れたという事なのじゃな」


「はい。その通りだと思います。実感できましたから、これからも、そうやって実践していきます」



「うん。そうだね。そうして欲しいかな。でね? この言葉には更に続きがあって、『百効は一幸に如かず』『百幸は一皇に如かず』って言うんだ。

 現れた成果は、それを幸せに繋げるようにしないといけない。それも、自分の幸せの為だけじゃなくて、みんなの幸せにも繋がるような方向に持って行きなさいっていう感じかな。俺の願望も入ってるけどね。

 まあ、簡単に言うと、聞いて、見て、考えて、実際に行動して、その成果を皆の為に使おうねって事だね」


「また、おぬしは難しい事を言っておるのじゃ。まあ、最後の言葉はよく分かったからの。つまり、この強化の成果を、わしらの為だけでなく、これからの皆の為に使って行こうという事なのじゃな」


「はい。何となくですけど分かりました。タビトさんから教わったこの成果を、自分の為だけじゃなく、これからのみんなの為にも使って行きます」


「うん。ありがとう。2人とも。長かったよね。俺でもそう思うし。でも、ミラとアリーの言った通り。俺達のチカラは、これからの、皆の為に使って行こうね。自分達の為だけじゃない。1人のチカラなんて、たかが知れてるけど、こうして同じ思いの仲間が集まっていけば、必ず皆が幸せになれると思うから。だから、これからもよろしくね」


「あい、分かったのじゃ。これからも、よろしくなのじゃ!」 ガバッ!

「はい! よろしくお願いします!」 ガバッ!


「うっ、うん。……よろしくね?」


 2人とも、タックルまで強化されてますけど? 常時発動の〈身体強化〉のお陰で何とか耐えられたけど、不意を突かれると危ないぞ? 危うく、防御魔法の〈エアバッグ〉が、自動発動する所だったかもしれないぞ? オレもうかうかしてられないな。やれる事は、しっかりやって行こう。


 毎日の筋トレも、ぼちぼち量を増やそうかな。魔法の手引き書も読んで勉強しないといけないし、験者の石への〈MP注入〉もしていかないとな。コツコツやって行くしかないからないからね。うん。そうしよう。


 それにしても、二人とも可愛いね。どうしたんだろうか? いきなり飛び付いてきたりして。よしよし。


 こうやって、仲間と一緒にチカラを付けて成長して行けるっていうのも嬉しいね。うん。いいもんだ。ミラのサラサラな髪質も、アリーのもふもふな髪質も。


 うん。『もふっとタウン ダッカル』。いや『獣人の町』だった。来た甲斐がありました。ありがとう。よしよし。『さらもふ』だ。よし。『さらもふタウン』に改名しよう!



 でも、『魔法を体に纏わせる魔法の真髄?』。これは扱いを考えないと、教える相手は選ばないとマズそうだ。信頼出来る仲間だけにしておこう。そうしよう。敵に塩を送るなんて事になっても笑えないからね。あ。俺の必殺技、『スマホに取り込んである映像を、あたかもユニーク魔法のようにして見せちゃいます』大作戦もそうだった。


 ちなみにスマホは、証拠撮影の時以外には目覚ましくらいにしか使ってないけど、普段はアイテムボックスの『□倉庫』に収納。本当は、時間経過のないマジックバッグに入れておきたいけど、何があるか分からないからね。肌身離さない指輪の中の方が安心なんだよね。使い勝手もいいからね。


 モバイルバッテリーソーラーチャージャーも大活躍で、奮発して買った甲斐があった。こっちの天気は良いし、まだまだ使えそうだ。機内モードのお陰で、電池の減りも遅い。今の所、良い循環が出来てるね。ありがとう。



  * * *



 ちゅん、ちゅん、ちゅん


《泥弾》(かなり弱め)×3


 シュッ! シュッ! シュッ!


 ちっ! 外したか?



 冗談だよ? 昨日はあの後、いつもより仲良くなった感じがして、楽しいお食事、楽しいお酒が飲めた。うん。俺、満足。充実感がハンパない。


 勿論? 目覚めは、いつも1人。心地良い朝だ。天気なんて、もう気にしない。雨が降ったら話題になるだろう。



 今朝も、防御壁に変化なし。問題なし。宿屋の中だけど、オールグリーンだ。


 3人で朝食を取り、俺は、昨日の続きのお仕事へ。ミラとアリーは、また森へ。昨日の宣言通り、また検証に行くそうです。〈バーサクモード〉、使いこなせるといいね。アリーも、戦闘には向いていないと言っていたのだが、思った以上に身体が動くようになったので、ミラに習って狩りをするそうだ。うん。ほどほどに頑張ってね。



  * *



 俺は、まず町の西にある衛兵待機所へ。

 本日は、町の西と南にある衛兵待機所の地下に施設を作成する予定です。


「おはようございます。今日も勉強させていただきます。よろしくお願いします」


 もう既に準備万端といった感じで、ローブの人達がズラッと並んでいます。この町の土魔法の使い手。俺の地下施設作成に同行し、土魔法を勉強中。


 あれ?  ……8、9、10人? 人数増えてるね? まあいいか。俺のやる事は変わらない。それに、土魔法の使い方が多い方が作成も(はかど)るからね。〈強化〉魔法なんて、人が多いに越した事はない。



「おはようございます。今日も、よろしくお願いします。特に昨日と変わった要望がなければ、早速始めましょう。早く始めれば、その分早く終わりますからね」


「はい。特に要望はありませんので、昨日と同じようにお願いします」


「はい。分かりました。それでは、昨日と同じように皆さんと協力してやって行きましょう。お願いします」


「「「お願いします!」」」



  *



 ふんふんふんふん ふんふんふんふん


 ふんふんふんふん ふんふんふんふん


 ふんふんふん ふんふんふんふんふーん



 よし完成。


 それにしても皆さん、本当に真面目。やる気も見られるし、その学ぼうという姿勢。うん。オイラ、感動しちゃうね。


 知識がどれだけ大事なものか、分かってるんだね。よしよし。それでは、特別講習しちゃいます? お昼休憩もまだだし、時間はたっぷりあるし。うん。そうしよう。



 『土』とは、『岩石』とは、『地表』とは、その成り立ち、構成、性質、土魔法がいかに便利で生活に役立つか、その重要性と必要性。黒板なんて無いからね、口頭と、少しの実演だけね。


 実際に、〈土〉を〈強化〉して固め、〈岩石〉を砕いて見せ、出血しない大サービスで、〈加工〉〈磨き〉までは見てもらった。〈融合〉〈解放〉〈バルシュ〉は企業秘密です。俺の守りの(かなめ)でもあるからね。ネタバラしは致しません。オイラ、失敗したくないので!


 もう知ってるかもしれないけど、もしかしたら何かの役には立つかもよ?


 それから、〈スマホ〉映像も止めておいた。俺の秘密の能力として隠しておきたいからね。謎のある男の方が深みが出ると思ってるからだなんて言わないよ? 違いの分かる男を目指してるし? 教える相手は選ぶ。信頼出来る仲間だけに限る。後悔しないように、そう決めたのです。



 でもね、 どれだけ〈エフェクト〉を入れようと思った事か。こんなに真面目な人達の前での〈エフェクト〉だよ? 効果あるに決まってるよね?


〈エフェクト火〉は、今更やる気を演出しても仕方ないし、

〈エフェクト水〉は、ずぶ濡れ感を演出しても意味ないし、

〈エフェクト土〉は、自身を石像にしちゃうから、動けなくなるし、

〈エフェクト風〉なら、格好良さを演出できるな。あ。マント着けてないからダメか。効果が見て取れないからな。今更マント羽織ってもな。遅いよな。

〈エフェクト光〉なら、神々しさを演出できるから、この場では効果があり過ぎるのか? 崇められても困るしな?

〈エフェクト雷〉なんて、ヤバさを演出する前に、とあるアルケミストさんみたく思われちゃうのかな? 知ってる人ならね。

〈エフェクト闇〉は、昨日『ハッタリ』で〈ブラックホール〉使っちゃったらからな。それ以上のヤツは絶対ダメだよな。下手したら皆チビッちゃうぞ? 逆に、俺が絶望感を演出する事になるな。うん。ダメだ。

〈エフェクト氷〉も、こんな所で氷像作っても仕方ないし。



 うん。効果的に使えるとすれば、〈光〉だけなんだよな。でも、俺は誓ったのだ。いや、誓ってはないな。気を付けようと思ったのだ。大切な2人のためにも。


 こういう無邪気な善意を前に、俺のアホ過ぎるノリで色々しでかしちゃダメだって。反省したんだからな。そういう善意は、もっと有効に使った方がいい。だから、今回は止めておこう。ふん。大人になったものだ。…………


 ぐっ、転ばせろ。グッコロだ。せめて、この妄想だけでも……




 その代わり? 魔法を浸透させるコツ、手のひらから押し流してやるような感覚。流石に〈雷〉までは使えないと思うから、その辺はまあ、適当に? とにかく諦めずに、足掻いて、押し込んで、スッと溶けていくように。〈土〉と友達になりましょう的な? うん。感動しているみたいだから、何か思う所があったんだろう。それで良いなら、良いんじゃないかな? 〈土〉は友達だ。岬くーん。ないすぱすだ!


〈雷〉でバチバチ、やっとくか?



  * *


 昼休憩を挟んで、南の衛兵待機所に移動します。『*』で挟んでみました。


  * *



 少し時間は掛かったけど、お手伝いの皆さんには、今まで以上に活躍してもらった。皆さんクタクタだね。良い事だと思うよ。皆さん良い笑顔で倒れてるし、何かを掴めたのかな? それなら嬉しいけどね。


 でも運んではあげないよ? 衛兵さん。よろしくお願いします。この完成した地下施設での初めてのお仕事ですよ? 俺の仕事はここまでだ。



 完成です。本日は、『西の地下衛兵待機所』『南の地下衛兵待機所』の2施設。昨日と合わせて、この町から要望のあった施設は、無事完成しました。


 結局、4つとも同じものだったからね。サクサク進めて、サクサク指導して、サクサクおやつも食べて、サクッと完成だ。




「皆さんもお疲れ様でした。これからも頑張って下さい。土魔法の未来は、皆さんチカラに掛かってますからね。それでは、また来ますので。じゃっ!」



「「「お疲れ様でした!!」」」

「「「ありがとうこざいました!!」」」

「「「今後ともよろしくお願いします!!」」」



 おっ。まだ結構元気だね? これなら、これからも頑張ってやっていけそうだね。それだけ真面目に努力出来れば、きっと良い事があると思いますよ? ふふふ。



 これで何事もなければ、明日は様子見。休息日になります。


 と言っても、ガーディアンズの件があるからね。お休みにはならないのかな。やれやれ。どんな報告が待っているのかな?


 さ。宿屋に帰りましょう。



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