VS2メン
なんだこれ...地面が俺に近づいてくる...?
咄嗟に手を前に出すと、自分が倒れていることに気がつく。
「大丈夫!?」
杏樹が慌てて俺に駆け寄り、介抱する。
女の子の香りがする。こんな状況なのに...
まったく。これだから男という奴は。
「うん...大丈夫だよ。ごめん。それより今のはなに?」
「ん?今の?ブラジリアンキックだけど?」
お前ジャパニーズじゃんとか考えていると、
「海渡はブラジリアンキック受けたことないの?」
「ない」
あのとき何が起きたのか思い返す。
杏樹の下段をカットしようとして膝を上げたと同時に、地面付近にあった奴の右足は跳ね上がり、俺の頭のすぐ横に。
「あぁ...」
後悔から、ため息だかなんだかよくわからない声が出た。
相手の足を蹴る下段廻し蹴りを受けるガードでも、左手で頭をガードしなくてはならない。
そう。その左手がお留守だったのだ。
そのため杏樹はノーガードの頭を思い切り蹴れたわけだ。
「海渡もまだまだだねw」
と、杏樹はニヤニヤしている。
「もう一回やろう。」
俺は催促するように杏樹に再戦を申し込むが、
「今日はもうダメだよ!あんなにしっかり倒れてるってことは、脳にも負担がかかってるはずだよ。」
「そっか...」
「明日稽古があるじゃん!その後にでもまたしよ!」
「わかった。」
明日は週5日の稽古の日。
道場に行って、基本の型や、移動稽古、スパー、トレーニングといったことを師範の指導の下、行う。杏樹は脱衣場で着替えたあとに
「じゃあ今日は帰るね!」
「あいよ。今日はありがとう。」
「どしたの?今日はやけに素直だねw」
そりゃそうだ。同学年の女の子に一発で倒されたんだから。
「まあね。」
「やっぱり海渡の家で遊んで行こうかな~ww」
まじかこいつ...幼馴染とはいえ、今や高校生
である男女2人がひとつ屋根の下...
そんなことを考えていると俺は咄嗟に答えてしまった。
「いいよ。」
やばい俺なんでいいよなんて言ってんだよ!!!
童貞である俺は焦った。
「えっ」
杏樹は何故か少し顔を赤らめて驚く。
お前が誘ったんじゃねーか
「やっぱりいい!今日は帰る!」
杏樹は急いで帰って行った。