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僕と卵はこうして始まった

 それは僕と僕の兄貴を含めた4人で村外れのダンジョンに潜っていたときの事。

 僕らは一人前になる為の試練に使う卵を採りに来ていた。

 本当は試練に使う卵は村の周りの木にある大鳥の卵でいい。だけれど兄貴はお前は俺と違って立派になれる!って数人のパーティと僕を連れて村からこっそり抜け出した。


 そして僕が兄貴に連れられてきたのは、稀に強い魔物が生まれ厄害を振りまくと噂のダンジョン。


 僕らがその中に入ってから起きた事は、衝撃的で悲劇的で運命的だった。


僕らはダンジョン奥のモンスターの巣に着いた。

 ここにくるまで大きな戦闘も無く来られたのは前調査をしていた兄貴のおかげだろう。


 巣には卵が1つだけ置いてある。

「いつ孵るか分からないからお前が持ってろ」

 僕は恐る恐る巣から卵を採る。

 卵は硬くて温かくて不思議と優しい気持ちになれた。

 この卵と一緒に強くなると心に誓ったその時、

―グガララッ!

 目の高さが僕と同じ位のトカゲが僕らが来た通路を塞ぎパーティの一人を弾き飛ばした。


「おい、こっちだ!早くこい!」

 仲間は吹き飛ばされたのと、初めて見る大型のモンスターに固まったままの僕は兄貴に腕を引かれモンスターの巣から脱出した。

「ガキんちょ共、早く逃げやがれ!俺が時間を稼ぐ!」

 僕らが逃げ出すと戦士職の仲間がその入り口に我が身を盾に立ち塞がる。

 振り返ろうとする僕を兄貴は叱責し、改めて僕は状況を呑み込む。


 僕らは暫く走り続けた。

 前を見ると一筋の光が見えた。出口だ!目標が見え足にも俄然力が入る。

 「ちっくしょぉ!フラン!強くなれよ!」

 松明が兄貴の叫び声と松明が飛んできた。


 僕は歯を食いしばり兄貴が投げた松明を飛び越え洞窟から飛び出した。

 出口は地面から少し高い所にあり飛び出した僕は体勢が崩れながら地上へ落下する。


 受け身は兄貴に何度も教えられていたからするりと着地出来た。

 僕は急いで手元の卵を抱き抱え僕が出てきた穴の前に立って大声で叫んだ。

 「兄貴!」

 どんなに声を張ろうとも返ってくるのは壁に響いた僕の声だけだった。


 残ったのは僕一人。

 あの時僕が止めてれば誰も死なずに済んだかもしれないのに。


 現在の自分に絶望を感じていると後ろから空気をビリビリと震わす咆哮が轟く。

 慌てて振り向くとそこに立っていたのは周りの木々と同じ位の大きさの熊だった。

「なっ!?グレートベアー!?ついてない!」

 本当についてない。

 こいつはこの森近辺に生息する中型モンスターだ。

 中型とは言ってもその大きさと獰猛さから初心者冒険者の最大の敵である。

 僕も一人では勝率は低い。C級冒険者の兄貴だったらこの程度のモンスターは問題なく倒せることだろう。

 だが、もう兄貴はいない。僕一人でこいつをどうにかしなければないのだ。


 熊の連続前払いを僕は咄嗟に卵でガードする。

―ガキンッ!

 やべっ、卵割れた!?

 慌てて確認して診ても、特に割れた形跡はない。

 よかった。心からそう思う。

 そうか僕には兄貴が残してくれたこの卵があるんだ。

 安心して前を確認すると熊は大きく振りかぶり力を溜めていた。

 やばっ早く回避っ…いやここは僕はこらえてやる。こらえて、兄貴を超えるんだ。それが僕に出来る最大の事!


 僕は卵を持ち直し熊の攻撃を卵でガードした。









『称号"魔物と契約せし者 序"を取得しました』



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