表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
5/26

脱出鬼ごっこ、開始

「……つけ、るか」


夏川くんがステージへと歩きながら言う。

声が震えているように聞こえ、怖いものは怖いのかと思う。私だって怖い。


「早いところ終わらせちゃおうよ」


紅葉ちゃんは明るく言うとタタタッとステージに向かい、短いスカートでも器用にステージに飛び乗った。

そして橙色の仮面を手に取り、顔にかけた。


その瞬間、後ろからドォォォン・・・・・・と重苦しくも大きな音が鳴った。


「えっ?」


全員がバッと振り返ると、体育倉庫から体育科の先生である杉浦先生が、ジャージ姿で竹刀を片手にこちらに来る。

授業の時と変わりのないように見える。


「あっ、せんせーっ!」


紅葉ちゃんは嬉しそうに走り寄っていく。

杉浦先生は竹刀の先を床に叩きつけた。

ビクッと紅葉ちゃんは肩を震わせた。

仮面がなにか話しかけたのか、紅葉ちゃんはコクコクと頷いた。

杉浦先生は歩調を早めに紅葉ちゃんへと近づいていく。


「いやぁぁああああああっ!!!」


迫り来る恐怖を受け入れたくないかように叫び、紅葉ちゃんは走り出す。

その後を杉浦先生が追いかけていった。


パタパタと体育館から出ていく足音が聞こえなくなると、


「鬼は・・・・・・」

「先生・・・・・・」


冬里くんと夏川くんが無気力に言う。

・・・・・・この時間が、紅葉ちゃんのライフを削っているのでは。


「この先も紅葉ちゃん1人で走らせたら、いろんな先生が紅葉ちゃんだけを狙って追いかける・・・・・・そんなの、3回チャンスがあってもすぐ死んじゃうよ」


私たちは顔を見合わせ、うんとお互い頷いた。

夏川くんがステージに上がり、仮面を3つ取ってステージを降りた。

そして、頭にかけた。


「生きて帰りてぇな」


夏川くんが仮面の目の部分の調整をしながら言った。私は頷く。


「生きて帰るんです」


冬里くんが絶対の自信があるように言う。

1人、そう自信がある言葉を言うと、私たちもそんな気がしてくる。


「とりあえず体育館から出るか。そしたら全員散れ」


夏川くんが手をヒラヒラ動かす。


「命令形にしなくてもわかってます」


ムッとしたように冬里くんはそう言うと体育館出入口に向かって走り出した。つられる様に最後に私も出ていった。


目の前には学食のおばちゃんに追いかけられている冬里くん、理科の先生、和泉先生に追いかけられている夏川くんの姿が目に飛び込む。


「え、みんな・・・・・・!?」


見た目はいつもの授業をしている姿と同じなのに、鬼と化した先生はなんだか別人に見えて、生徒を追いかけ回す現実にあれだけ説明などを受けていてもまだ夢なのではないかと思う。


暗くて足元が見えない。転んでしまったらどうしよう。

外に出てまだ一歩も出ていないのにそんな恐怖に襲われる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ