選ばれし者と脱出方法
「あのオレンジのヤツ、私が起きた場所にいたよ・・・・・・仮面だけだったけど」
声をひそめながら紅葉ちゃんは言った。
私もいたなぁと思いうんうんと頷く。
「俺のとこにも赤、いた」
「僕のところにも青がいましたね」
4人の仮面人間に聞こえているかはわからないが、優雅にお辞儀をすると口を開いた。
「私たちは皆様の案内兼担当者となっております。
というのは、万が一脱出鬼ごっこのルールを違反してしまった場合があるとしたら誰も気づくことが出来ないかもしれないからです」
身振り手振りを交えて説明をしてくれるため、内容はわかりやすい。
「あの、ルールとか私たちがここに連れてこられた理由が聞きたいんですけど・・・・・・」
私がひっそりと手を挙げながら質問をすると、白い仮面をかぶった人は咳払いをした。
「それは失礼。ではまずあなた方をこのフィールドへ招待した理由は抽選で決められたからです」
「抽選!?」
驚いたように夏川くんが言う。
私も紅葉ちゃんも冬里くんも目を見開かせる。
「えぇ。年に1度、世界各国の学校名を記したクジを作成し、それを私たち4人で引きます。それからじゃんけんをし、勝った人が引いたクジに書かれている学校を招待しました。
一応あなた方は選ばれし者なのです、逆に感謝してくれてもいいくらいですよ?」
「年に1度・・・・・・クジ・・・・・・じゃんけん・・・・・・選ばれし者・・・・・・?」
冬里くんが呆気にとられたように単語を繰り返す。紅葉ちゃんがしっかりしろと肩を叩いた。
「僕らはそんなこと望んでいない」
静かに、でも怒りに震えたように叫ぶ。
膝の上で固く握りしめられた手は震えていた。
「なぜそんな簡単な方法であなた達の作ったフィールドで鬼ごっこ、しかもこの学校自体から脱出しなければならないんですか。
普通の世界だったらこんなことしなくたって校舎から出て家に帰れるはずなのに・・・・・・!!」
夏川くんの口からはボソッと自分勝手だ、と言葉が出た。
私は特に同意もしなければ反論することもないので白い仮面の返事を待つ。
「きちんとこの学校だと決定した後は、生徒一人ひとりについて隅から隅まで調べあげます。性格や生活面、身体面や精神面の状態なども。
その上で欠乏された、または欠陥、失ったものがある部分をこの脱出鬼ごっこで見つけてほしいのです」
そこで一旦言葉を止め、右手の人差し指を前に出す。
私たちはその指を集中的に見た。
「【自分の足りない部分】を見つける──これが脱出するために必要なものであり、私達に伝えればこのフィールドから出られます」
「難しく言ってるけどよ、簡単に言えば自分に足りない部分やものが見つかれば脱出完了ってこと?」
頭をグシャグシャとかきむしりながら夏川くんは聞いた。一生懸命話を理解しようと彼なりに努力したのだろう。
「そうです。鬼に3回までは捕まってもいいですが、3回目に捕まるまでにを【自分の足りない部分】を見つけてください」
簡単だ、と思ったがなかなか分からない。
性格?私に足りない性格?感情、か。
ゲームを通してそんなものがわかるのか。