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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
25/26

この世界から帰るために

「おかえり2人とも」


紅葉ちゃんが手を振って迎えてくれる。

私も軽く振り返して応じる。

サクサクと草を踏みしめて4人で集まる。


「じゃあ、帰ろうか」


冬里くんが私の目を見た。

私は頷いて白い仮面を取った。

みんなもそれぞれ各色の仮面を外す。

4人分の爆発音が鳴り、煙も大きく舞う。

ケホッとむせ返りつつ、4人の、まるで分身したような男性を見る。


「いかがですか、この世界から出る気満々に見えますけれど」


橙の仮面が苦笑しながら言った。

夏川くんが当たり前だろとぶっきらぼうに放つ。


「こいつの考えは、まともだ」


そう言った夏川くんの横顔が作り物のような月明かりに照らされて、少しだけ立派に見えた。

すこし俯いて、すぐに白い仮面を見上げる。


「私は見つけましたよ、このゲームを行っているうちに【自分に足りない部分】を」


白い仮面はほぅ、と声を漏らす。


「それで?」

「お聞きしてもらえますか」

「もちろん」


許可を得たところで、深く息を吸って、吐いた。

全員の目が、私に集中しているのを体感した。

まるで誰もいないステージに1人立たされ、これから何をするのだろうと言った風に視線が集まるように。


私の考えというものは、これだ。


まず【自分に足りない部分】について。

鬼ごっこをしてまで見つけろというのだ。


では、なぜ鬼ごっこをさせるのか?


それは鬼ごっこをしているうちに、私たちに感情や何か別の大切なものを失くさせるためではないからだろう、と思った。


だって、そうでしょう?

元から足りない性格だったり、大切な人の形見であるような宝物を亡くしたと言うのならみんなで机を向き合わせて話し合えばわかるはずだ。


でもそうしなかった理由は私たちに何か足りなかったり失くしていることが前提としておき、裏をかくような形で足りなくさせ、失くさせることが目的だったからではないか。


その結果、私たちに足りなくなった部分は友情面で誰かを信じ、頼ること。

それが欠如し始めたから、紅葉ちゃんと夏川くんから裏切り行為と呼べるものが始まった。

恐怖に負けて相手が傷つく行為をしてしまう、さらにやり返してしまう。


さぞかし仮面は楽しかっただろう、笑っただろう。

だってただの友情ごっこを見せつけられるわけではなく、ちゃんと相手を傷つけるような行動をとったのだから。


仮面は性格が悪い。


それでも私たちはお互いの行為を許せてしまったり、壊れた友情を仮にでも、その気になれば少しは修復できる。


夏川くんが私に謝った。

それは仮にでも、深く抉れた部分を何かで少しでも埋めるような感覚だろう。

そんな感じに、少し、修復できる。


次に4人とも仮面をとった理由。

それはやっぱり、一人ひとりの性格上の問題も言うべきだと思ったからだ。


私はあまり積極性がない。

紅葉ちゃんは男女関係に問題がある子だ。

夏川くんは短気なところ。

冬里くんは自分の意見を曲げないで貫き通し、仲間との調和がうまく取れないこと。


これが、私の考えですと説明を終わらせた。


本当にこれで良いのだろうか。

今更考えたところで、言ってしまった時を戻すことは出来ない。

説明不足のところもあるはずだ。

でも自分ではわからないから仮面の発言を待つ。


綺麗に弧をえがいた唇が開かれる。


「悪くない」


白い仮面はそう言うと軽く拍手をした。

なぜだか褒められている気にはなれず、思わず眉を潜めた。


「ちょっと気に入った。正直花丸はあげられないけれど。今の君の考えを百点満点で評価しろと言われたら、75点」


何が足りないんだ。

私の頭ではこれ以上考えられない。

いや、考えられる。ただこれ以上考えるということをしたくないだけだ。


「楽しいお話と鬼ごっこをありがとう。とても楽しめた。でも、そろそろお別れしようか」


それはもう保健室へ送られる時間だからか、それとも元の世界に帰れるということなのだろうか。

白い仮面は両手を大きく広げた。

とたん、目の前が霞みはじめ、意識が朦朧とし始める。


「あとは夢でお会いしましょう」


白い仮面が言い終わる頃には、目の前はブラックアウトしていた。

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