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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
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目が覚めたら

ふと夢を見た。

暗闇の中で、息を切らして何かから逃げる。

大きな恐怖が私の心を支配している。

来ないで、どっか行ってよと言えばいいのだろうけれど、口で呼吸をしていて喉が渇き、まともに声が出ない。

だんだんと近づいてくる足音。心拍数が上がるのがわかる。

耳元で低い声で呟かれた言葉は──


『捕まえた』


肩に触れる冷たい手が、やけに現実的に思えた。

何かに反射的に動くようにまぶたを開ける。


「っ!?」


額から汗が一筋流れる。乱れる息を整える。

心臓の脈打つ速さが異常に早く感じられた。

座っている椅子や目の前にある机が自分が知っている座り心地であり、席は自分の席だとわかる。

周りを見渡すと、緑色の掲示板や少し散らかった床で、真っ直ぐに並んでいない机がある電気がついた夜の教室だった。

窓から見える校庭やサッカーゴール、強い光を出す照明などは全て私が通っている学校から見える景色その物だった。


ただひとつ違うのは、学校の敷地内外が何も見えないことだ。

まるでこの世界にはこの学校しか残っていないのかという錯覚を起こさせるように。


「な、で・・・・・・だって、私・・・・・・!!」


動揺しつつ、夏服に変わりつつある制服を着ている自分の体を見る。

昨日は学校のジャージで寝た。

それが原因で運動する夢見たのかな、だから今も夢の続きで学校にいるんじゃないのかな。


「ゆ、夢だ・・・・・・きっと、夢」


もう一度眠れば自分の部屋のベッドに戻っているはず。

次に起きたらいつもの天井、または学習机やクローゼットが目の前に広がっているだろう。

そう考えた私は机に伏せた。


『夢デハ、無イゾ』


自分の頭の中から低音と高音が混ざったような、電子音とも機械音ともとれる声が聞こえ、ハッと顔を上げる。

そこにはどこかの怪盗が使うような白い仮面が浮いていた。


「お、おば・・・・・・っ!?」


思わず幽霊かはわからないが未確認生物が急に現れ、騒ぐと体が動かなくなってしまった。これが金縛りというやつなのか。

声が出せない、体は動かせないとなるとさらに悪夢を見ている気分になる。


こんな状態になったら心の中で何かの言葉を繰り返し唱えると効果的だと、以前本で見た。

実際は怖いのと、その怖さで何の言葉を唱えればよかったかを忘れてしまうため意味無かったなと思う。


仮面がこちらに向かって徐々に近づいてくる。

怖い怖い、離れろ離れろと心の中で繰り返す。

仮面が目前に迫ると、仮面も動きを止めた。


『ヨウコソ、脱出鬼ゴッコノ会場へ』


脱出鬼ごっこ・・・・・・?

初めて聞く名前に耳を疑う。

仮面はそう言うとボンッと煙を出し、姿が見えなくなった。

それと同時に金縛りのような現象も解けた。

煙が消えてきたと思ったら机の上に一枚の紙が載っていた。


「脱出鬼ごっこ説明会、体育館へお越しください・・・・・・?」


紙の内容をなんとなく読み上げた。

体育館に行かずにこのまま教室で過ごしていたらどうなるだろう。


でも、脱出鬼ごっこ。


これが現実だとしたら言った方が良いのではないか。

鬼ごっこなのに脱出を試みるとはどういうことなのか。

色々な疑問が浮かんだため、どのような説明を受けさせられるのかはわからないが、説明を聞きに体育館へ向かうため私は教室を出た。

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