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ヘタレ男子のプロポーズ

作者: 蓮ノ華

付き合って4年目の2月某日

オレの家のリビングのソファーには、完全にOFFになっている彼女。



今日、

プロポーズする!


ヘタレと言われて早4年。

ついに、卒業する日が来た。

ヘタレを!


ゲームのコントローラーを握りしめて、背後のソファーに気を散らせながら、もう何度聞いたかわからない、パーティーが全滅したときのBGM。


良し!言ってやれ。

カッコよくビシッと、決めてやるんだ!


「ちょいとユキさん」


想いとは裏腹に、蚊の鳴くような声が出た。


「…何」


ソファーで寛ぐ彼女の気のなさそうな返事にちょっと心が折れそうだ。


「あ、あのさ、」


頑張れオレ!



「うん」


やっぱりどうでも良さそうな返事。

し、心の臓がイタイ…

しっかりしろオレ!

頑張れオレ!

後ろは振り返らないし、目も合わせられなくて、オレの視界にはテレビしか入ってない。

だけど意識は背後のソファーに集中してる。

今世紀最大の集中力をみせている。




「…………けっけっけっけっっっっこん、とか、ししし、して、みる?」




噛んだ〜!

舌噛みちぎりかけた〜!

これじゃ何言ってるかわかんねーよ……

コントローラーがミシミシ音たてるぐらい手に汗かいた。






「うん」





「…………………え?」



今、何か聞こえたような…



「うん」


もう一度聞こえた。

空耳じゃない。

え?

うん?

あ、うん?

え?

何?



ゆっくりとぎこちなく後ろをむいてみる。

彼女は数分前と全く変わらない体勢で、雑誌を見ている。

あ、もしかしてオレに言ったんじゃないとか?



「ちょっと、聞いてた?」


確認してみる。



「うん」


やっぱりそのままの体勢とどうでも良さそうな返事。

だけど、


え?


「ちょっ、あのっ、お、オレの話し、聞いてました?」



「うん」


またそれかっ


「あの、アンタさっきからうんしかいってませんけどっ⁉︎」



「うん」


………ちょっと腹立ってきた。


人が一大決心して一生に一度のプロポーズしてんのに、

何だこの態度…



「ユキ、本閉じて、こっち見て」




「………うん」


ゆっくりとソファーからおりてオレの前に正座する彼女。

そういえば、

今、やっと初めて正面から彼女の顔を見た。

今日はアレコレ考えすぎて、今まで目も合わせられなかったから。

そしたら、

ビックリだ…


「…………………え?」


何でだろ。

何でこうなってんだろ…


「…………」


やや斜め左を見ている彼女の顔が…



「真っ赤なんだけど」


つぶやくと、

上目遣いに睨んできた。

その顔、反則。

それダメなやつだから!

さらに、


「………ダレのせいだと思ってんの……」


拗ねてる。

完全に拗ねてる。

オレじゃなくて彼女が、

いつもと立場逆。

滅多にない状況。



「あ〜………オレ?」



「アンタ以外のダレでもないでしょ」


あーオレ今、顔から火が出てる。

いや、身体中から出てるハズ。



「そ、そうですよね。いやあの、あんまり反応がないからさ、こっちは舌噛むぐらい緊張してんのにさ」


「…ゲームしながら言われてもね、ムードのかけらもない…」


泣きそう…

胸に何か刺さった。

言葉の刃がグッサリと。

握りしめたままのコントローラーに気がついて秒速でキッチンに投げ捨てる。

結構高いけど、気にしない。



「いやあの、ホントはさ、さっき、飯食った後の帰り道、あの橋の所で言うハズだったんだって…」


それは本当。

かれこれ1ヶ月前から計画立てて、準備してた。



「あ〜それでめずらしく高そうな店で食べて夜景のキレイな場所通って帰ってきたんだ。このクソ寒い中」



クソって……

こんな時にもいつもと変わらない口調。

慣れたけど。



「寒い寒いばっか言うから早く帰ってきたんだろ!人の気も知らないで…」


八つ当たりだ。

わかってるけど。イタイとこばかりつかれて、情けなくて泣きそうだ。

マジで…



「それはこっちのセリフ………」


「何でだよ」


「アンタね、何年付き合ってると思ってんの」


「4年」


間違えるわけがない。



「…………あたしは2週間前から待ってた」


え?

予想外の言葉。


「な、何を?」


「高そうな店に誘われた時からもしかしてって思ってた」


そうですね、

1ヶ月前から店予約してたのに、

結局誘えたのは2週間前でした。

そこは内緒。


「ば、バレてんじゃん、、、」


「そんな事もわからない鈍感女だと思ってたわけね…」


あれ?

何か空気も声も冷たくなってない?


「いやいやいやいやいやいやそうじゃなくてだね…」


「食べ終わっても何も言わないまま店出るから、ちょっと腹が立った。期待したあたしがバカすぎて」



「期待、してくれたんですか」


そうか…

あの時に、もう、分かってたのか…



「…………悪い?」


だから、

怖いから…


「いやいやいやいやいやいや悪くない!まったく全然!」


いつのまにか正座してる、オレ。



「で?どうすんの?」


「え?」


「結婚するの?しないの?」


いつもの強い口調。でも、

赤い顔

上目遣い

斜め左の視線


かわいい。


「します!是非お願いします!!」



「………こちらこそ」


滅多に見ることのできない照れ笑い。

衝動を抑えられず、勢い任せに抱きしめる。


「かわいいユキ!大好きです!!」



「………あたしも、好きよ………」




反則だ

KOだ

瞬殺だ


ヘタレじゃなくても、この可愛さには負けるだろ。




でも……………


ちょっと待て、

結局、

プロポーズしたのはオレか?

彼女か?


……………





「プロポーズ、オレからしたことにしてください………」



「、、、バカ………」









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― 新着の感想 ―
[一言] 設定もキャラもステレオタイプだから、新鮮味はないけど、逆に、そのステレオタイプをうまく使って、可愛らしいお話に仕上げているなと思いました。 コントローラーが台所に投げ捨てられる間取り…いや…
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