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学校を守り隊!! でぃふぇんす おぶ すくーる   作者: 時 とこね
別一章 始まりのチャイム
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四日目 女子はつらいの(特に朝)

 空から巨大な戦艦が迫ってきて、空を覆い隠し、大量の擬人兵士を送り込んでくる。グラウンドは彼らによって覆われて、校舎の中にいる生徒たちを次々と血祭りにあげていく……。


 という夢を優燈は見た。彼女はムクッと起き上がって再び寝た。


 いや、再び寝て良い時間じゃない。集合時間を三十分も過ぎているのに女子は全く起きる気配が無い。しっかり者の美菜があんな感じになっていたので、こうなってしまった。ああだこうだ言う人がいないとこうなってしまう。小学校の修学旅行を思い出す。というか、遅刻してはいけない。


 「遅いな。」


 学校には龍人とみのるだけが来ていた。残りの八人は何をしているのだろうか?


 「二度寝してそうだね。」


 みのるが呆れ顔で言ったのを聞いて、龍人は笑った。


 「ま、人の家に泊まった時はだれでもこんな感じさ。美菜が元気になってくれたら、それでいいんだ。」


 「元気になってるかな。」


 みのるが雨の降りそうな暗い曇天を見上げる。


 「先に二人で作業しとくか。」


 その隣を龍人が通り過ぎた。名残惜しそうしつつも、みのるは龍人に続いて校舎に向かった。




ー=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=




 「だいたいこんなもんか?」


 下足室での仕分けはほとんど片付いてしまった。使えそうなものは金属バットや木製バットなどの武器類がほとんどだが、テニスボールや野球ボール、バレーボールも使うことになった。


 「まさか俺らの学校にこんなものがあるとはな。」


 昨日の道具集めでもみんなが驚いていたのだが、この学校には自動でボールを発射する投球マシーンがかなりの数保管されていた。動くかどうかは分からないが全部合わせて10機。テニスに3機、野球に3機、バレーに2機、ソフトボールに2機である。野球は軟式用であるからほとんど威力は無いが、ビニールで出来た相手なら十分な火力があるはず。主力になるのはテニス専用機、ボールを詰め込めば詰め込むほど連射が利くようになっていた。さらにスコープがついていて、狙ったところを狙撃できる。コンセントにつないでみると、ちゃんと動いた。


 「こんなもん使ってたのかよ、この学校。」


 テニス部が異様に強いわけであった。スコープなんて投球機につけるかフツー?


 「硬式球でも軟式球でも使えるみたいだ。」


 「とんでもないもん持ってきたな。」


 龍人の言う通り、この代物、とんでもないものだった。


 ほかの投球機も動くことが確認された。これで、みのるの作戦は実行に移せるようになった。


           投球機による集中砲火


 みのるの考えた作戦。投球マシーンはこの学校に10機はあると知っていった彼は、敵の攻撃が近接攻撃だけだと推測して、遠距離からの一方的な攻撃にすればよいと考えた。


 敵の攻撃が近接攻撃のみと推測した理由としては、敵がこちらの精神を攻撃してくる、つまりはこちらに「攻撃が通った」と思わせなければならない「視覚効果」を発生させる必要があるからだ。この視覚効果は敵の頭脳ともいうべき「チップ」が発生させている。ならば、この効果は敵の周囲、すなわち「チップ」の近くでなければ発生させることが出来ないはずだ。


 以上のことから、今回の作戦が組まれた。


 ここで改めて龍人は思った。


 「じゃあ、十人じゃ足りなくね?」


 集中砲火は確かに強い。しかし、接近戦になればこちらが不利になる。十人とも投球マシーンで攻撃していたら接近戦に対応できなくなる。みのるはこう返した。


 「その時は柔軟に対応する。投球マシーンでの攻撃を切り上げて接近戦をする人、何があっても遠距離攻撃をする人の二つに分ける。僕が言ったのは最低十人。人数がいれば、いるに越したことは無いよ。」


 龍人は感心した。


 「さすがだな。俺の頭じゃ絶対思いつかなかった。」


 「そんなことは無いよ。この作戦にもダメなところがある。」


 みのるの言う通り、この作戦には天候による欠点がある。この投球機の中で唯一防水仕様なのがソフトボールの内の1機と、なぜか室内用のバレーボール2機。雨が降るとこの作戦は失敗する。


 龍人はそれを聞いて思いついた。


 「運動会用のテントを出したら大丈夫だよな。」


 「確かに。」


 みのるはうなずいた。二人は運動会で使ったテントのばらばらのやつをもって屋上まで上がった。


 「さぁ、立てるか。」


 二人は協力してテントを建てていった。始めのうちは何がどうなっているのか分からずテキトーに建てていたが、慣れてくると関係の無い話をする余裕も出来た。


 「そうだ。ずっと聞きたかったことがあるんだが。」


 龍人は思い出したように言った。


 「なんで俺らに協力しようと思ったんだ?」


 「急にどうしたの?」


 みのるは訊き返した。


 「いや、普通なら無視しておしまいだったけど、みのるは最初の時から手伝ってくれたし、今ではみんなを引っ張っていってるから、なんとなく聞いてみたかったんだ。」


 龍人はそう答えた。みのるは少し考えて、ゆっくりと言葉を口にした。


 「あの時、君が必死にみんなを説得していたから、かな。普通なら嘘だって思うけど、あの日本当に敵が襲撃して来たから信じないわけにはいかなかった。」


 話しているうちに四つ目のテントが建った。彼らは最後のテントに手を付ける。


 「今、こんなこと言っていいのか分からないけど、とても楽しいんだ。前までなら話さなかったような人たちと話せて、それなりに仲良くなれて、だから、あの時君たちに話しかけて良かった。」


 「それなりかよ!」


 と龍人は言った。二人は笑った。


 「これからもっと仲良くなるさ。」


 ひと段落付けて龍人が言った。


 それから着々と作業を続けて、テントの設置が完了した。


 「これが終わったら、全部元通りなのかな。」


 みのるが不安げに呟いた。その隣で龍人は言った。


 「元通りにはならないだろうな。」


 彼らはこれから戦っていかないといけない。今はその敵が見えてもいないが、必ずここに来るのだ。曇天の下、雨が降り始めた。


 「それでもいいんだ。」


 と、龍人は言った。これからどうなるのか分からないが、それでも、彼は前を向いていた。人は後ろに進めない、前に向かうだけだから。


 二人は屋上から教室に戻ろうとした。その時、扉が開いて三銃士がやって来た。


 「あ、わりぃわりぃ、寝坊した!!」


 アタルが平謝りするのを龍人は笑顔で頭をはたいた。


 「いて!!」


 「おせえよ!!」


 ついでに三銃士の残りの分もアタルに当てた。アタルを除いて五人は笑っていた。


 そしてマモルが呟く。



            「学校防衛準備中」


                         と。





ー=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=


 本日の成果


 道具の整理完了!


 投球機の動作チェック完了!


 雨対策完了!

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