三日目 長い一日の終りに
龍人と美菜が帰って来て、十人はテキトーに作戦のことを話したり関係ない話をしていたりした。
そんなこんなで夕方になった。さすがに時間があれなので、龍人は今日の締めを行う。
「えー、では、今日はもうこんな時間なので、解散にしましょう。」
そう言い終えてから取り付けたように
「ほかに何かある人?」
と訊く。いつもはここで終わるのだが、今日はみのるが手を挙げた。
「はい、じゃあみのる。」
「はい、みんなも知ってると思うけど、時間がもうないんだ。だから、この後残れる人で作戦に必要なもの、または使えそうなものをそろえたい。手伝ってくれる人はこの場にいてほしい。用事がある人は帰っても大丈夫。」
みのるが言った後、帰る人はだれもいなかった。
「じゃあ、とりあえずトイレ休憩にするか。」
それと同時に、どうでもいい話が始まった。
「まあ、この後どうせ暇だし。」
とアタルが言った。
「でも、結構遅くなるんじゃないか?」
とカケルが言った。
「そん時は俺んちに来い! 家族が出張中だからな!」
とマモルが言った。
「そうなの!? 私の家も出張中だよー!!」
と穂乃佳が言った。
「キラキラ。」
と、優燈が言った。それに対して時音は顔を真っ赤にして怒っていた。
「ぷんぷん!!」
五人はげらげら笑った。周りもつられて笑っていった。
ただ一人だけ笑っていない。
「みんな、無理しないでよ。」
その一言で騒ぎ声が収まった。美菜は続ける。
「なんでそんなに元気なの? 誰も居なくなって寂しくないの? それとも、みんな居なくなって清々したの? それが本当なら、最低だよ……。」
「美菜、どうしたんだよ?」
アタルは心配になって来た。アタルだけではなく、この場にいた全員がそうだったが、今の美菜には無駄だった。彼女はアタルの問いかけに答えなかった。
「こんなに悲しんでるのは私だけなの? こんなに苦しいのは……。それじゃあ、私、バカみたいじゃない!!」
彼女は叫んで、泣き叫び、その場に泣き崩れた。
一瞬誰も動けないでいたが、美菜の後ろから時音が優しく美菜を抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫。」
時音が繰り返し声をかけて、美菜の頭を撫でていた。穂乃佳も美菜のそばに座って、声をかける。
「ごめん、美菜が落ち着くまで教室の外で準備してて。美菜のことは私たちが何とかするから。」
穂乃佳に促され、何も出来ずにいた七人が外に出て準備に取り掛かった。後ろ髪を引かれるような思いで、龍人は教室を後にした。
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七人は学校の中で使えそうなものを探していった。今日は集めれるだけ集めて、選別は明日行うことになった。使えそうなものは下足室に置いていった。
二時間ぐらいでかき集めると、下足室がいっぱいになった。もはや何があるのか分からないが、ある意味頼もしいものも確保することが出来た。
道具集めを終えた龍人たちが教室に戻ると、少し落ち着いた美菜と、彼女に抱き付いて頭を撫でてる時音と、立ち上がって入り口まで出てきた穂乃佳がいた。
穂乃佳は廊下に出てきて扉を閉めて言った。
「一応少しは落ち着いたみたいなんだけど、心配だから、今日は私と時音で美菜の家に泊まることにしたんだ。」
それを聞いて三銃士は同時に手を挙げた。
「俺も美菜が心配なので泊まります!!」
「男子は禁制かなー。」
玉砕。
「あ、女の子だったら大丈夫だから、優燈ちゃんとサキちゃんはどうする? 一緒に泊まる?」
「えーどうしようどうしようどうしよう。」
空久保さんは衝撃のあまり首を360度回転させるような勢いで4時52分の方角に歩みだした。一方の優燈は考えていた。
「そうだねー。美菜ちゃんが大丈夫なら行くけど……。」
考え込む二人を見て穂乃佳は深刻な表情を一変させた。
「大丈夫、大丈夫! 美菜もさっきみたいに叫ばないと思うし、それに、少しでも賑やかな方がいいかなーって思ってるだけだから……男子はダメだけどね。」
チラッと三銃士の方を見た。それぞれ手を挙げようとしているところだった。
「バカだなぁ。」
優燈が言って、その場にクスクスと笑い声がした。
「じゃあ私は泊まるよー。サキちゃんはー?」
「私も泊まろうかなと思っているけど、洗濯物とか食器とかが重たいからタクシーで行かなきゃいけないし……」
「どっちもかばんで運べるよー。」
「そうか。じゃあ……。」
「やったー!!」
「サキちゃんと一緒にお風呂入ろ―!!」
「は、はいぃっー!!」
キャッキャ盛り上がる女子。完全に置いてけぼり食らう男子。男子も女子に対抗して、家に泊まろう大作戦を決行したが結局三銃士しか集まらなかった。
こうして長い一日も終わりを迎えようとしていたが、あるものにとっては、長い夜の始まりに過ぎなかった。
「あの時、俺がもっとしっかりしていれば……。」
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三日目の成果。
盛り上がった!
仲間が増えた!
美菜の悩みが分かった!
お泊りすることになった!
道具をかき集めた!




