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学校を守り隊!! でぃふぇんす おぶ すくーる   作者: 時 とこね
最終章 明けの明星
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三 底意地の悪さ

 この試合に決まった始まりの合図は無い。だが、両者は同時に走り出し、あっという間に一合した。


 デオムがつばぜり合いに持ちこんで、すぐに声を荒げた。


 「コノザコガ!!」


 両者が互いを突き放す。その勢いで両者は後ろに飛ばされる。デオムは爪を立て、穂乃佳は足を擦らせてその勢いを殺す。床から擦れた砂煙が、互いの背後に流れて行く。


 穂乃佳は構えを崩さず。デオムは構え直した。砂煙が止むと、両者は再び走り出した。


 その試合を観戦しながら、デゥエスが言う。


 「あの子……。随分と雰囲気が変わるのね。」


 「だよな。竹刀を構えると目の色が変わるというか、けどそれでいて穂乃佳の良いところは消えてねぇ。」


 龍人はデゥエスと並んで観戦していた。彼も穂乃佳には何度も救われていた。グラウンドでの混戦中も常に集中し続けているような。調子が良ければ美菜にも負けない程の腕と精神力を持っていた。ただ、その時デゥエスはため息をついた。


 「力では、完全に向こうの方が上ね。」


 そのことに関しては、龍人も同意した。だが、舞台上では明らかに穂乃佳の方が有利に戦っていた。


 「テリャァ!!」


 デオムが爪を立てて突撃してくる、穂乃佳は静かに構えていたが攻撃を目前にサッと身をかわす。


 「コシャクナァ!!」


 続けざまに、前に突き出していた爪が薙ぎ払うように振るい穂乃佳に迫る。穂乃佳は後ろに跳び下がり、すぐさま反撃に出た。まず、次の攻撃を控えて体勢の変えられないデオムの左手首を竹刀で打つ。


 「ウギャ! クソ!!」


 デオムはその威力に身をのけぞらせながらも飛びかかり、穂乃佳の頭上目掛けて振り上げた腕を振り下ろす。



              パシンッ!!



 穂乃佳は敵の凶刃を寸前で受け止めたのだ。


 デオムはすかさずもう一方の手で穂乃佳を切り裂こうとしたが、痛みが邪魔して上手く動かせない。


           敵の一瞬の隙が功を奏す


 穂乃佳はデオムの爪を弾いて、その無防備な脇腹へ竹刀を打ち込んだ。


             パシィイン!!



 竹刀の快音がその空間に響き渡り、デオムは脇腹を押さえてあえなく倒れてしまったのだ!!


 時音と美菜を除いてみんなは舞台そでに集まった。


 「や、やったぞ!!」


 マモルが歓喜の声を上げた。サキも喜んで飛び跳ねた。


 「やりましたぞ、みのる殿!!」


 しかし、みのるの反応は良くなかった。


 「いや、まだ……。まだ油断できないよ。」


 「みたいだな。」「ええ。」


 龍人とデゥエスもそれに同意した。マモルはみんなノリが悪いなぁと思いながら舞台上を見ると、デオムがゆらゆら立ち上がり、それも笑っていたのだった。


 「あ、あいつ……。」「ひょえぇぇ……!」


 マモルとサキは衝撃のあまり言葉を失った。


 「マサカ、コノオレガ、コノテイドトデモ?」


 「そんな事、思ってないよ。」


 穂乃佳は竹刀をしっかりと構え、敵を見据える。


 そこからの試合展開は一方的なものでなかった。


 動きの素早くなったデオムに対しても、穂乃佳は冷静に見定めて、守り、かわして攻めていった。試合では常に互角か、穂乃佳の方が一枚上手であった。しかし、デオムの恐ろしいところは身体能力は戦闘力ではなく、不屈の持久力であった。徐々に体力が奪われていく穂乃佳は、疲れから動きが鈍くなっていく。


 そののち、何十合目かの攻防の時、穂乃佳は敵の攻撃の威力で体が宙に浮き、放物線を描いて床に叩きつけられてしまった。


 「穂乃佳!!」


 龍人たちが叫んだ。


 「早く交代しろ!!」


 だが穂乃佳は何も言わなかった。


 倒れている穂乃佳に近付き、デオムはあざ笑っている。


 「ドウシタ? オツカレカナ?」


 「まだ……!!」


 穂乃佳は力を振り絞り、竹刀を強く握りしめた。デオムはさらに穂乃佳に近付いて、穂乃佳の頭を目掛けて足を上げた。


 「シネ。」



               ペシン



 穂乃佳の竹刀が弾かれる。倒れた体勢から腕だけの力で振り上げた攻撃を弾くことはいとも容易かった。デオムは足に力を込めて、踏みつける。


 「ごめん……。」


 デオムの足が穂乃佳の頭に触れる寸前、その体があらぬ方向へ吹っ飛んだ!


 誰もがその瞬間を捉えていた。あまりに突然の事であったが、彼らはよく見ていた。舞台そでから踊り出し、敵を吹き飛ばすその姿を。デオムは彼に顔を蹴られたのだ。


 「……。」


 穂乃佳は僅かな力で目を開きその者を見上げる。そこに居たのは




      「汚ねぇ足で穂乃佳に触んじゃねぇよ!!」




             「龍人……。」



 穂乃佳は力なく微笑み、やがて目を閉じた。


 龍人はしゃがんで、穂乃佳の顔を覗いた。


 「大丈夫か?」


 龍人が話しかけると、穂乃佳は僅かにうなずき、手をついて、ゆっくりと立ち上がった。そして、ふらふら歩いて行く。龍人は声を掛ける。


 「そこ降りるとき気をつけろよ?」


 「……うん。」


 穂乃佳は小さな声で言った。彼女は自力で舞台端まで来た。みんなも穂乃佳の元に集まってふらふらしている彼女が落っこちないように心配して押しかけた。


 「降りれるか?」「気を付けてね。」


 「……うん……。」


 アタルたちが声を掛けるも、嫌な予想はあたり、穂乃佳は力尽きたように、舞台端から落っこちた。それをデゥエスが受け止め、穂乃佳を抱きかかえて頭を撫でた。


 「よく頑張ったわね。次の人にもきっといいバトンが渡ったわ。」


 「……。」


 デゥエスが優しく母親のように語り掛けると安心したのか、穂乃佳は深い眠りに落ちた。


 「さてと。次は……!」


 龍人が舞台から降りようとした時、物凄い勢いで突っ込んでくる者がいた。


 「キサマ……!!」


 「あ、やっぱり。」といったように、龍人は頭を掻いてへらへらしていた。しかし、先程のような禍々しいオーラは感じられず、デオムも相当な無理をしたのか、息が上がっている。龍人は笑って言い訳した。


 「わりぃ、長くて難しい話は聞いてられなくてな。」


 聞いてられない、つまり知らなかったということだ。この為、龍人の乱入は『破滅』に当てはまらないらしかった。もちろん、彼はこのルールを事前に『知ってはいた』が、『正式なルールとしてでは無かった』のだ。なんとも言い難い抜け道だ。デオムは唸った。


 「ソンナイイブンガツウヨウスルカ!!」


 「デオム。貴様に護衛が付いていない事、それがこの世界の出した答えだ。」


 ファテゥがそう言うと、デオムは地団駄踏んで悔しがった。


 「まぁ、次から気を付けるさ。」


 龍人は手を振ってひょうひょうと舞台から降りて行った。




   = = = = = = = = = = = = = =




 穂乃佳はデゥエスの膝枕に治まった。


 「よーっし! サキちゃん踊るよーっ!!」「はーいぃ!」


 優燈とサキは春風の舞を舞った!

 春の風が吹いて来た!!


 「まだまだ!!」「はーいぃ!」


 優燈とサキは舞い続ける!

 春の便りが届いた!!


 「来たー!!」「はーいぃ!」


 優燈とサキは春の便りを開いた!

 ポーション×100が手に入った!!

 一個多かったので投げた!!  

 デオムに当たった!!       「オイッ!!」

 デオムに200のダメージ!!   「グハ!!」

 デオムは『破滅』時空の歪みの援護を待った!!

 しかし何も起こらなかった!!

 優燈とサキはポーションを振りまいた!!

 みんなの体力が200×99回復した気がする!!


 「これで良し!!」「はーいぃ!」


 大喜びの二人、帰って来てそうそう龍人が疲れた表情を見せる。


 「お前らは元気でいいな……。」


 「元気ー!!」「はーいぃ!」   「褒めてねーよ!?」


 龍人はため息をついて座り込んだ。


 「次は誰だったか?」


 龍人が聞くと、みのるが答えた。


 「次は時音だけど……。」


 みのるは言葉に詰まりながら穂乃佳の方を見た。穂乃佳はぐっすり眠っている。


 「起きるまでは無理ってことか……?」


 「だけど、そんなに向こうが待ってくれるとは思わない。」


 「穂乃佳に喋らせないとダメって事ね。」


 龍人とみのるとデゥエスが思案していると、時音が手を挙げた。教室でも見ない光景であった。


 「時音が手を……。何か思いついたの?」


 みのるが聞くと時音はうなずいた。時音は優燈を呼んで美菜に膝枕するようにさせた。それから時音は穂乃佳の元に行き、しゃがんで穂乃佳のほっぺたをツンツンつついた。すると……。


 「時音ちゃん~? どうしたの~?」


 「は!」


 全員驚いていた。


 「しゃ、喋った!!」


 「ま、マジかよ!!」「ね、寝言で……。」「癒されますな~。」「は~いぃ。」


 みんなそれぞれ思うところはあったが、時音は気にせず竹刀を手にして舞台上に上がる。


 「時音、無理はしないでね。」


 みのるはそう言って時音を送り出した。時音はうつむき加減で敵と向かい合う。


 「ククク。ヨワソウダナ、オマエ。」


 デオムが挑発する。確かに時音は小柄で小学生に見えかねないような体型だが、彼女には人に言っていなかった能力がある。彼女は竹刀を構え、敵を睨んだ。この後デオムは、後悔することになろうとは思っても見なかっただろう。

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