午後0時30分 レッドエンド
「何見てるの?」
龍人は驚愕して飛び跳ねた。
「いや何も見てないぞ!!」
龍人が慌てふためくのを、優燈はほくそ笑んで眺めてた。
「顔が赤くなってるよー?」
「ふ、ふざけんなよ!!」
優燈は口元を布団で覆って顔の半分を隠し、龍人をあざ笑うような質問をぶつけた。
「ずーっと私のこと見てたもんねー?」
「ずっとじゃねえよ!!」
優燈はクスクス笑って、焦る龍人に切り返した。
「じゃあ、ちょっと見てただけで赤くなったの?」
「う、うるせえよ!!」
龍人は顔から火が出そうなほど真っ赤になっていた。そしてついに保健室から出て行ってしまった。優燈はそれを確認すると、布団を口元から離した。龍人を散々からかっていたが、実は自分も真っ赤になっていたからだ。初々しい限りである。
「ふぅ。良かった。」
ただ、それを陰から見ていた者がいる。窓の外から声がする。
「いいなー。」
「イチャイチャ」
「らぶらぶだねぇ!」
穂乃佳と時音と美菜だった。
「ふぁうっ!!」
優燈は仰天して裏声になった。恥ずかしくなって布団を被って丸まった。
「あ、照れてるー。かわいいー!」
「アツアツ」
「優燈ちゃんも恥ずかしかったんだね。」
穂乃佳と時音と美菜は笑った。今まで良く分からない事が多かった優燈も、人並みに恥ずかしいと思うものだと知ったから。三人は優燈にからかったことを謝って、屋上に向かった。
「ふぅ。恥ずかしかった……。」
優燈はため息をついて、周りを確認した。今度は誰も居ないようだ。
「でも、龍人が心配してくれてて、嬉しかったな。」
布団の中で呟いた。彼女はまた顔が赤くなった。思い出す度ににやけてしまうのだ。さすがに暑くなってきたので外に顔を出す。
「あ!」
「ふふふ。元気があって良かったぁ!」
目の前に保健野先生が居た。
「せ、先生?」
「なぁに?」
優燈が恐る恐る訊ねる。
「いつから居たの……?」
それを聞いて保健野先生は笑顔で答える。
「誰にも言わないわよ?」
優燈はその言葉の意味がすぐには分からなかった。
それがしばらく経ってようやく分かった。
優燈は叫んで、先生に抱き付いて哀願した。
「先生、誰にも言わないでー!!」
保健野先生は優燈の反応が面白くなって、少し好奇心がわいた。
「え、優燈ちゃんの弱点だし、みんなに教えてあげようかなー?」
「やめてー!!」
優燈が顔を真っ赤にして必死に叫ぶものだから、保健野先生も楽しくなってしまって、いい笑顔で笑った。ただ、優燈はあまりに必死になったので眦に涙すら浮かべている。
ガシャンっ!!
保健室の扉が開いたかと思ったら、三銃士が現れた!!
「大丈夫だ、先生!!」
「俺たちがしっかり聞かせて貰った!!」
「みんなにも知って貰う!!」
保健野先生と優燈はぽかんとして停止した。
そして、三銃士は逃げ去った。
優燈は急いでその後を追う。叫びながら追う。
「お願いだから言わないでっ!!」
三銃士を必死に追いかける優燈。その顔は真っ赤だった。優燈だけに夕日のように真っ赤だった。
タイトル回収。
楽しいひと時はすぐに過ぎ去る。
優燈はもう一つの夢を見た。
周囲が赤い。焼けるように赤い。
その中に一人の人影。黒い人影。
優燈はそれを呼び止めた。
その者はゆっくりと近づいていく。
優燈が後ずさりしてもすぐに追いつく。
その者が近寄って、ようやく分かった。
その者は背景の赤でくり抜かれたような目と口を持つ。
怪物のような人間の容姿。
優燈は叫ぶ。その正体は、かつての天使。
堕天使の姿だった。