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学校を守り隊!! でぃふぇんす おぶ すくーる   作者: 時 とこね
別二章 七日目の鐘
15/42

朝9時以降 第一波

 

 屋上にいるみのるが電話をかける。


 「偵察部隊の総数を1とするなら、第一波の総数は100、いや、それ以上だ。」


 「通りで大変なわけだ。」


 龍人が敵兵を吹っ飛ばして答えた。龍人たちの目の前には敵の大軍勢が次々と現れる。


 敵は一歩も引かず前進してくる。戦力の差は圧倒的だが、士気が違う。龍人たちも引かずに、全力で敵の侵攻を阻止していた。


 屋上ではみのるが砲撃の準備を進める。加えて、ソフトボール部がバットでボールを飛ばして、遠距離攻撃を行っていた。快音が鳴り響く度に、敵の戦艦がどんどん落ちていく。敵はこちらに攻撃すらできないでいた。やってきては落っこちて、やってきては落っこちていった。


 みのるは龍人に指示する。


 「全員後退して、後は砲撃でどうにかなる。」


 龍人は前線の味方に聞こえるよう声を張り上げた。


 「お前ら、退くぞ!!」


 全員が一斉に校舎へ向けて走り出す。しかし、中央の十勇士だけ出遅れた。


 「く、しまった!!」


 彼らはたちまち敵に四方を囲まれた。脱出することも出来ず、戦い続ける。


 「十人が!!」


 穂乃佳が指差して龍人に伝える。龍人は急いで駆け付けようとするが、敵の人数が多すぎて、十勇士のところまで突破することが出来ない。右翼の野球部はそれに気付くことなく、下足室まで下がってしまった。みのるは状況を把握できず、龍人に電話をかけるが繋がらず、穂乃佳に電話しようとした時に、電話が鳴った。


 「みのる、助けて。」


 切羽詰まったような声、それは美菜だった。みのるはすぐに返した。


 「応援を向かわせる。だから、それまで耐えて!」


 それだけ言うと電話を切って、穂乃佳にかける。


 穂乃佳は竹刀片手に電話に出る。


 「何があったの?」


 「十勇士が敵に、囲まれて……」


 穂乃佳の言葉を待たず、みのるは


 「分かった。穂乃佳と時音は、校舎の裏側にいる美菜を助けて。」


 と言った。穂乃佳は耳を疑う。


 「でも、十勇士は!?」


 「いいから行って!!」


 反論するように訊ねた穂乃佳を一蹴するようにみのるは叫んだ。穂乃佳は電話を切って、納得のいかないまま美菜の救援に向かった。時音は何も分からず、しどろもどろしていたが、小さくなっていく穂乃佳の後を追いかけた。


 屋上のみのるは通話後の空虚な音を、ずっと耳元に置いていた。離すことも出来ず、どうすればよいのかも分からず、ただただ、グラウンドを眺めていた。


 龍人と十勇士は必死に敵の包囲網を解こうとしていた。しかし、敵の勢いは増すばかり。戦艦から大量のチップが投下されていたのだ。それらは地面付近で兵士の姿に変わって龍人たちを襲う。見ているよりもずっと多くの敵が、龍人たちと戦っていたのだ。


 中央では十勇士、左翼では優燈と龍人が、何とか持ちこたえていた。誰も居なくなった右翼側から敵が進行してきている。


 みのるは我を取り戻して、すぐに指揮をとった。先ず、砲撃を右翼に集中させ、下足室にいる野球部を左翼側から中央に向かわせる。パイプ椅子砲で左翼の奥を攻撃し、龍人たちの援護を行う。龍人は中央に向かって敵を蹴散らし、十勇士のもとにたどり着いた。


 「大丈夫か!?」


 龍人が見たのは戦い続ける三銃士とアメフト部の幸田。あとの六人はその場に倒れていた。龍人は怒りが頂点に達し、四方から来る敵を次々と倒していった。また、アタルとカケル、マモルと幸田も奮戦した。だが、敵の勢いは全く衰えない。


 「クソーっ!!」


 「ぐはっ!!」


 疲れの溜まっていた幸田が、敵の凶刃の前に倒れてしまう。彼らを取り巻く状況はさらに悪化する。


 「どうすれば……。」


 みのるの思考は行き詰る。グラウンドの状況、そして、荒野の奥からは敵の黒い影。上空にはあれだけ落とされたにもかかわらず浮遊するいくつもの戦艦。砲撃を集中することによって進行を妨げていた右翼だったが、左翼側からも敵が進行して来た。パイプ椅子砲で何とかしのいでいるが、肝心のパイプ椅子は残り少ない。


 龍人は構わずに攻撃を続けた。もはや悪あがきとしか言えないが、彼はこの戦闘の最後まで戦い続けた。


 カケル、マモル、アタル、彼らも懸命に戦った。だが、次第に疲れが溜まり、次々と倒れていった。最後は、龍人が一人で、敵の真ん中。


 優燈は、何も出来ないまま、佇んでいた。


 そして、涙を流した。



             「……龍人。」



           彼女は最後に一言呟いた。



            「ヒへカ ミオラ」



 彼女は、天に手をかざした。太陽を握り占めるように。高々と。

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