表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/76

小話5 天使のうた

小話5/5

お兄さん視点


ち、遅刻しましたあああぁぁぁあっ orz

ごめんなさい


そしてごめんなさい

小話ラストなのに

すこぶる後味が悪いですごめんなさい(ノД`)


たこのほっこり(?)で終わりたい方は

この小話はなかったことにして下さい…orz

 

 

 

 脅は…こほん、ちょっとした話し合いの末、もぎ取っ…けふん、快く譲り受けた機械人形たちの部品とドッグタグを手に、アトさんの病室を訪れた。

 脅…交渉やら手続きやらでずいぶんと日にちが掛かってしまったが、どうにか彼女のもとに持って来てあげることが出来た。


 アトさんはベッドの上で膝を抱えて座っていた。


 ぼんやりと視線を伏せて止まっていると、良く出来た人形のように錯覚する。

 けれど彼女は人形なんかじゃなくて、上げられた視線は力強く、しっかりとぼくを捉えた。


 「ああ、お兄さんか」


 ふっと微笑んだ彼女が戦場で殺戮の限りを尽くした兵士だなんて、誰が信じると言うのだろう。

 目の前で確かに彼女がひとを殺すのを見た、ぼくですら信じられないのに。


 どうかしたのかと問う彼女に、袋に詰めた機械人形の部品を差し出す。

 手を伸ばして袋を受け取ったアトさんが、中を覗き込んで目を見開く。


 部品と言っても大したものは持ち出せなくて、小さなパーツを各体ひとつずつだけなのだが、彼女はそれがなんだかわかったらしい。


 「これ、θ(シータ)たちの…」


 膝とお腹の間に袋を抱えて、アトさんはゆっくりとまばたきした。

 赤い瞳が、涙で潤む。


 「ごめんね。部品が少しと、ドッグタグだけなんだけど」


 束ねたドッグタグも見せると、かすかに震える手が伸ばされる。

 ドッグタグを受け取った彼女は、いとおしげにドッグタグのプレートを撫でた。

 まばたきに合わせて、ぽろりと涙が頬を伝う。


 しばらく黙って涙を流した後で、アトさんはぼくに柔らかな笑みを向けた。


 「ありがとう、お兄さん」


 すっと息を吸い込み、いつかと同じように、彼女は、赤い髪の天使は歌い出した。

 美しく、けれど、胸が張り裂けそうなほどかなしげな、アリア。

 楽しげに愛と恋を夢見る歌詞なのに、彼女の唇からこぼれる歌は、ひどくかなしく響いた。

 まるでこころない人形が、決して手に入ることのないこころを、渇望するような。


 魂が抜けたように聴き惚れ、我に返ったのは彼女が歌い終えたときだった。


 部品とドッグタグを抱き締めて、アトさんが泣く。

 手が届く位置にいるにもかかわらず、掛けるべき言葉もするべき行動も思い付かず、ぼくはただ立ち尽くしていた。


 これじゃ、崖の向こうから見ていたときと変わらない。


 そう思うのに、なにも出来なかった。


 声を掛けあまつ抱き締めた機械人形を、今なら尊敬出来る。


 今にも壊れそうな彼女に何かするなんて、ぼくにはとても出来ない。


 結局ぼくはアトさんが泣くのをただ見ていただけで、泣き止んだアトさんに声を掛けられてやっと動いた。


 「ひとつ、頼んでも良いか?」

 「ぼくに出来ることなら、いくつでも」


 ぼくの答えに頷いたアトさんは、部品の袋にぼくが渡したドッグタグを入れ、さらに自分の首から外したものも入れた。袋の口を解けないようきつく縛り、ぼくに向かって差し出す。


 「埋めてやって欲しいんだ。どこか、ひとの来ないところに」


 わたしは、行けないから。


 言外に付け足されたであろう言葉が、ぼくの胸を打つ。

 どうしてこの子はこんなにも、生きることを諦めてしまっているのだろう。


 確かに彼女は数え切れないほどの、この国の兵士を殺しているけれど。

 殺せと命じたのは国で、そうしなければ彼女が殺されていた。


 痛みをはらんだぼくの視線をなんと思ったか、アトさんは困ったように首を傾げた。


 「だめ、かな?出来るなら都市からは離れたところに埋めて欲しいんだ。都市部はひとが、多過ぎるから。本当はわたしが埋めたいんだけど、さすがにそんな遠出はまだ、許して貰えないだろ?」


 出来るだけ、早く、静かで綺麗なところに連れてってやりたいんだ。


 アトさんの言う通り、現時点で彼女を遠くへ連れ出すことは不可能だ。

 まだ、と言う言い方は、まるでアトさんが未来を認めているように聞こえる。


 「…だめなら、この敷地のどこかでも良いんだけど」


 しょんぼりと肩を落とされれば、願いを叶えてあげたくなるのが惚れた弱みと言うやつで。

 ちょうど、人里離れた研究施設に用事が出来たこともあり。


 「だめじゃないです。明日から三日ほど、あそこ、あの山の上に行く用事があるので、そこでも良ければ埋めに行きますよ」


 病室の窓から遠く見える山を指差して言えば、アトさんは嬉しそうに微笑んだ。


 「あそこなら、景色も良さそうだな。お願いして良いか?」

 「喜んで」


 きみのそんな顔が見られるなら、お安いご用だ。


 「ありがとう、お兄さん」


 どこか安堵のにじんだ彼女の笑顔の意味を、そのときぼくはきっと取り違えていたのだ。そして、気付いたときには、遅かった。




 山の上の研究施設からは、アトさんのいる研究施設がよく見えた。

 遠くて建物が豆粒のように見えるけれど、豆粒の集まりのどこかに彼女がいるのだと思えば、無機質な建物の集合も愛しく見えた。


 研究施設から少し離れた位置の、目立つ大樹の根元に、託された袋を埋める。深く深く、穴を掘った。決して、掘り返されたりしないように。

 大樹の枝に赤い綱を結び付けて、目印にした。いつか、アトさんがここに来れることを願って。


 そうして、またアトさんのいる研究施設に目を向けた、そのときだった。


 遠く離れたこの山の上にまで爆風が届くような、大爆発が起こったのは。


 圧迫感に目を閉じ、開けたときには、眼下に広がる光景が様変わりしていた。

 一瞬にして、首都が崩壊している。


 「なにが…なんで…」


 わけもわからず、譫言うわごとのように呟く。


 そんな、まるで、爆撃でも受けたみたいな。


 思いかけて、はっと息を飲む。


 振り向いた先の大樹。そこに自分で結わえ付けた、鮮やかな赤の綱。

 そっくりの、でも、より鮮やかで美しい髪を持つ、少女。


 伝聞で聞いた、保護のときの彼女の言葉。

 一言で爆発するから、殺せ−。


 「…きみ、なの?」


 ここにいない、赤毛の天使に問い掛ける。


 生き延びたはずなのに、どこかで生きることを諦めていた。

 仲間の部品を遠くに埋めて欲しいと、ぼくに頼んだ。

 ぼくが遠くに出掛けると聞いて、安堵の笑みを浮かべた。


 「ぜんぶ、わかっていたから…こうなるとわかっていて、行動していたの?」


 答えは、ない。

 きっと、二度と、得られない。


 膝が萎えて、その場に崩れ落ちた。

 滂沱の涙が、頬を伝った。


 「なんで…なんで!!」


 ひとこと、たったひとことでも、助けを求めるすべはなかったのか。

 助かるすべは、ひとつもなかったのか。


 誰も殴ったことなんかない手で、地面を殴り付けた。

 とどまるところを知らない涙が、いくつも土に吸い込まれた。


 「あ、ぁあ、あああぁあああぁぁぁああ゛っ!!」


 雲ひとつない青い空が、ぼくの慟哭を飲み込んだ。


 戦争を止めるために動かなかったぼく自身が、殺したいくらい憎らしかった。






小話までお付き合い頂きありがとうございましたっm(__)m

最後がこんな終わりで申し訳ありませんっ<(_ _)>


割烹でもちょろりと書きましたが

某狂人さん視点のお話を考えてます

もしエタらない自信が出来たらシリーズとして連載するかもなので

ご縁があればそちらも読んで頂けると嬉しいですが

本当に書くかは五分五分な確率です


繰り返しになりますが

拙い作品を読んで頂き

本当にありがとうございました(*^-^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ