小話5 天使のうた
小話5/5
お兄さん視点
ち、遅刻しましたあああぁぁぁあっ orz
ごめんなさい
そしてごめんなさい
小話ラストなのに
すこぶる後味が悪いですごめんなさい(ノД`)
たこのほっこり(?)で終わりたい方は
この小話はなかったことにして下さい…orz
脅は…こほん、ちょっとした話し合いの末、もぎ取っ…けふん、快く譲り受けた機械人形たちの部品とドッグタグを手に、アトさんの病室を訪れた。
脅…交渉やら手続きやらでずいぶんと日にちが掛かってしまったが、どうにか彼女のもとに持って来てあげることが出来た。
アトさんはベッドの上で膝を抱えて座っていた。
ぼんやりと視線を伏せて止まっていると、良く出来た人形のように錯覚する。
けれど彼女は人形なんかじゃなくて、上げられた視線は力強く、しっかりとぼくを捉えた。
「ああ、お兄さんか」
ふっと微笑んだ彼女が戦場で殺戮の限りを尽くした兵士だなんて、誰が信じると言うのだろう。
目の前で確かに彼女がひとを殺すのを見た、ぼくですら信じられないのに。
どうかしたのかと問う彼女に、袋に詰めた機械人形の部品を差し出す。
手を伸ばして袋を受け取ったアトさんが、中を覗き込んで目を見開く。
部品と言っても大したものは持ち出せなくて、小さなパーツを各体ひとつずつだけなのだが、彼女はそれがなんだかわかったらしい。
「これ、θたちの…」
膝とお腹の間に袋を抱えて、アトさんはゆっくりとまばたきした。
赤い瞳が、涙で潤む。
「ごめんね。部品が少しと、ドッグタグだけなんだけど」
束ねたドッグタグも見せると、かすかに震える手が伸ばされる。
ドッグタグを受け取った彼女は、いとおしげにドッグタグのプレートを撫でた。
まばたきに合わせて、ぽろりと涙が頬を伝う。
しばらく黙って涙を流した後で、アトさんはぼくに柔らかな笑みを向けた。
「ありがとう、お兄さん」
すっと息を吸い込み、いつかと同じように、彼女は、赤い髪の天使は歌い出した。
美しく、けれど、胸が張り裂けそうなほどかなしげな、アリア。
楽しげに愛と恋を夢見る歌詞なのに、彼女の唇からこぼれる歌は、ひどくかなしく響いた。
まるでこころない人形が、決して手に入ることのないこころを、渇望するような。
魂が抜けたように聴き惚れ、我に返ったのは彼女が歌い終えたときだった。
部品とドッグタグを抱き締めて、アトさんが泣く。
手が届く位置にいるにもかかわらず、掛けるべき言葉もするべき行動も思い付かず、ぼくはただ立ち尽くしていた。
これじゃ、崖の向こうから見ていたときと変わらない。
そう思うのに、なにも出来なかった。
声を掛けあまつ抱き締めた機械人形を、今なら尊敬出来る。
今にも壊れそうな彼女に何かするなんて、ぼくにはとても出来ない。
結局ぼくはアトさんが泣くのをただ見ていただけで、泣き止んだアトさんに声を掛けられてやっと動いた。
「ひとつ、頼んでも良いか?」
「ぼくに出来ることなら、いくつでも」
ぼくの答えに頷いたアトさんは、部品の袋にぼくが渡したドッグタグを入れ、さらに自分の首から外したものも入れた。袋の口を解けないようきつく縛り、ぼくに向かって差し出す。
「埋めてやって欲しいんだ。どこか、ひとの来ないところに」
わたしは、行けないから。
言外に付け足されたであろう言葉が、ぼくの胸を打つ。
どうしてこの子はこんなにも、生きることを諦めてしまっているのだろう。
確かに彼女は数え切れないほどの、この国の兵士を殺しているけれど。
殺せと命じたのは国で、そうしなければ彼女が殺されていた。
痛みをはらんだぼくの視線をなんと思ったか、アトさんは困ったように首を傾げた。
「だめ、かな?出来るなら都市からは離れたところに埋めて欲しいんだ。都市部はひとが、多過ぎるから。本当はわたしが埋めたいんだけど、さすがにそんな遠出はまだ、許して貰えないだろ?」
出来るだけ、早く、静かで綺麗なところに連れてってやりたいんだ。
アトさんの言う通り、現時点で彼女を遠くへ連れ出すことは不可能だ。
まだ、と言う言い方は、まるでアトさんが未来を認めているように聞こえる。
「…だめなら、この敷地のどこかでも良いんだけど」
しょんぼりと肩を落とされれば、願いを叶えてあげたくなるのが惚れた弱みと言うやつで。
ちょうど、人里離れた研究施設に用事が出来たこともあり。
「だめじゃないです。明日から三日ほど、あそこ、あの山の上に行く用事があるので、そこでも良ければ埋めに行きますよ」
病室の窓から遠く見える山を指差して言えば、アトさんは嬉しそうに微笑んだ。
「あそこなら、景色も良さそうだな。お願いして良いか?」
「喜んで」
きみのそんな顔が見られるなら、お安いご用だ。
「ありがとう、お兄さん」
どこか安堵のにじんだ彼女の笑顔の意味を、そのときぼくはきっと取り違えていたのだ。そして、気付いたときには、遅かった。
山の上の研究施設からは、アトさんのいる研究施設がよく見えた。
遠くて建物が豆粒のように見えるけれど、豆粒の集まりのどこかに彼女がいるのだと思えば、無機質な建物の集合も愛しく見えた。
研究施設から少し離れた位置の、目立つ大樹の根元に、託された袋を埋める。深く深く、穴を掘った。決して、掘り返されたりしないように。
大樹の枝に赤い綱を結び付けて、目印にした。いつか、アトさんがここに来れることを願って。
そうして、またアトさんのいる研究施設に目を向けた、そのときだった。
遠く離れたこの山の上にまで爆風が届くような、大爆発が起こったのは。
圧迫感に目を閉じ、開けたときには、眼下に広がる光景が様変わりしていた。
一瞬にして、首都が崩壊している。
「なにが…なんで…」
わけもわからず、譫言のように呟く。
そんな、まるで、爆撃でも受けたみたいな。
思いかけて、はっと息を飲む。
振り向いた先の大樹。そこに自分で結わえ付けた、鮮やかな赤の綱。
そっくりの、でも、より鮮やかで美しい髪を持つ、少女。
伝聞で聞いた、保護のときの彼女の言葉。
一言で爆発するから、殺せ−。
「…きみ、なの?」
ここにいない、赤毛の天使に問い掛ける。
生き延びたはずなのに、どこかで生きることを諦めていた。
仲間の部品を遠くに埋めて欲しいと、ぼくに頼んだ。
ぼくが遠くに出掛けると聞いて、安堵の笑みを浮かべた。
「ぜんぶ、わかっていたから…こうなるとわかっていて、行動していたの?」
答えは、ない。
きっと、二度と、得られない。
膝が萎えて、その場に崩れ落ちた。
滂沱の涙が、頬を伝った。
「なんで…なんで!!」
ひとこと、たったひとことでも、助けを求めるすべはなかったのか。
助かるすべは、ひとつもなかったのか。
誰も殴ったことなんかない手で、地面を殴り付けた。
とどまるところを知らない涙が、いくつも土に吸い込まれた。
「あ、ぁあ、あああぁあああぁぁぁああ゛っ!!」
雲ひとつない青い空が、ぼくの慟哭を飲み込んだ。
戦争を止めるために動かなかったぼく自身が、殺したいくらい憎らしかった。
小話までお付き合い頂きありがとうございましたっm(__)m
最後がこんな終わりで申し訳ありませんっ<(_ _)>
割烹でもちょろりと書きましたが
某狂人さん視点のお話を考えてます
もしエタらない自信が出来たらシリーズとして連載するかもなので
ご縁があればそちらも読んで頂けると嬉しいですが
本当に書くかは五分五分な確率です
繰り返しになりますが
拙い作品を読んで頂き
本当にありがとうございました(*^-^*)




