小話3 いかれ帽子屋の唯一
小話3/5
マーティ視点
客観的に見た某狂人とaちゃん
狂人さん寄り
幼なじみ、と言うには、一方的な関係だったと思う。
将軍の孫であるオレと、宰相の孫であるあいつとは。
年も近く立場の似通ったあいつと、オレは親しくしようとしたが、あいつはオレに、と言うか、人間と言う人間すべてに、興味を持ってないみたいだった。
だから、あいつが浮浪児に目を付け、挙げ句死にかけたそいつを連れ帰ったときは、度肝を抜かれた。
四肢をぐちゃぐちゃに潰され、顔も胴体も傷だらけのそいつはチビで痩せぎすで生きているのが不思議なくらいの状態。とても、兵として役に立つとは思えなかった。
だってのにあいつは、兵器開発のためにあいつに支給されてた研究費を半分以上使い込んで、そいつを機械化兵に造り変えたんだ。
造り変えたそいつ、あいつがaと名付けた奴隷を見て女だったとわかったときには、ますます呆れた。
あんなに痩せこけたチビで、しかも女。
戦場で生き残れるとは、とても思えなかった。
それでも人間に興味を持たないあいつが、ようやく気に掛けた人間ならと、目を掛けて訓練をやった。
その結果が、第二次ベルヴィストク会戦だ。全滅した前線にひとり取り残されたaは、死ぬどころか敵陣を壊滅させて帰還した。
帰還したaはぼろぼろだったが、自分の足で歩いていた。
メンテナンス室に着くなり眠ったそうだが、凄まじい根性に、唖然とした。
その後もすぐ死ぬと言うオレの予想をaは裏切り続け、その根性としぶとさ、口は悪いが情に深い性格に、知らずオレは惹かれて行った。
最初はあいつのために掛けていた目を、いつしか自分のために掛けるようになった。
「良いやつだよなー、a」
あいつに会ったとき何気なくそう言ったのは、単純に思ったことを口にしただけだった。
その瞬間に向けられた視線を受けて、今までオレはあいつからほとんど存在を認知されていなかったんだと気付いた。
本気でオレを見たあいつの視線は、それくらい威圧感があった。
「…aが良いやつで、それがあなたになんの関係があるんですか」
冷え切った声が投げられる。
暴力なんかと無縁の科学者相手だと言うのに身体に緊張が走り、ひやりとした汗が背中を伝った。
「いやー、それでどーだとかー、そーゆーわけじゃなく、単純に、良いやつだなーってさー」
「…そうですか」
「別に、お前からaを奪おうとかー、aとどうこうなろうとかー、そーゆーんじゃねーって」
「そんなこと、僕が許しませんよ」
抜き身の剣でも首に突き付けられた気持ちだった。
ああ、狂ってるんだな、と、心の底から理解した。
「そーかそーかー」
こいつからaを奪うのは無理だと思った。
そんなことすれば、国が滅びかねない。
だから、オレは薄く抱き掛けていたaへの気持ちにきっぱり区切りを付けて、笑ってあいつに言った。
「なら、お前がきっかり守ってやれよなー?良いやつだからさー、幸せになって欲しいんだよー」
「…言われなくてもそのつもりです」
本来いろいろな人間に分散される愛情。
それがひとりに向くのならば、どれほどの重さになるのだろう。
aは必ず、守られる。
そのときオレは、そう信じていた。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
一時間後にたこ技師視点の小話を投下します




