小話1 草食系奴隷
小話1/5
完結記念と言いつつ完結とは全く関係ない小話を五話投下予定です
お時間に余裕があるときにでもどうぞー( ^-^)_旦~
マッドサイエンティスト視点
思い付いたけれど本編に入れる余地がなかったネタです
しゃくしゃく
しゃくしゃく
赤い唇に、葉菜がゆっくりと納められて行く。
人形、天使、魔女、鬼、機械と、様々な人外に例えられる女だが、霞を食べて生きているわけではないらしい。
解体して組み立てたのは俺だから、消化器官を持っているのも知っていたが。
霞を食べるわけではないが、普通の人間とも違うらしいな。
普通の食事を出せば文句も言わずに食べたが、次の食事は草が良いと要求した。
草とはなんだと思ったが、まあ問題あればまた要求して来るだろうと、葉菜のサラダを山盛りで作らせた。
結果がこれだ。
何人分かと思う量の葉菜を、黙々と口に運んでいる。
料理人の気遣いか添えられた葉菜以外のものも嫌な顔をせず食べている辺り、好き嫌いではないのだろうが、なぜ、草なのだろう。
我が国の常識から行けば、あまりにも機械化され過ぎた身体。
興味深い。
しゃくしゃくしゃく
しゃく…、
不意に食事の手を止め、女がこちらを見上げて来た。
「あんた、なんで見てるんだ」
どうやら視線がお気に召さなかったらしい。
「お前は、興味深いからな」
答えれば不快げに眉は寄せたが、馬鹿らしいと思ったか何も言わず食事を再開した。
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
葉菜ばかり食べても、エネルギーにはならないはずだが。
寝てばかりだからダイエットに、とか、考える女でもなさそうだ。
つまり、草を食わせろと言うには、何か理由があるのだと言うこと。
「美味いか?」
「塩分が掛かっているから、適当にむしって食べるよりは美味しい」
「道っ端の雑草でも食いそうな言い分だな」
「…食べるけど?」
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
発された言葉の意味を、理解するのにしばらく時間がかかった。
「…草を消化出来るのか?」
「草、と言うか、ホロセルロースとリグニンだな」
「普段何食って生きてるんだ」
「麦藁とミネラル剤が多かったな」
…牛か。
胃は一つだったように思うが。
「消化器官に分解菌を導入されてるんだ」
奴隷にひとの食べもの与えたら、勿体ないだろ。
目の前で草をかじる女は当たり前のように言うが、絶対に当たり前のことじゃない。
やっぱりこいつの国は、気違いだな。
「草、美味いのか?」
「種類によるな。食用にもされるような草ならそれなりに美味しい。美味い不味いより、利便性として草食は良いと思うけど」
エネルギー効率としては、草食は良くないと言う話だったように思うが。
草食動物と肉食動物の食事時間を鑑みるに、必要重量的に見れば肉食の方が少なくて済むのではないだろうか。食糧生産に掛かるエネルギーなら、肉が圧倒的だろうが、別に肉でなくても、芋や豆を食えば雑草を食べるより効率が良いはずだ。
「どっかの狂人のこだわりで燃費が良いんだよ。草の消化率も、牛や羊の数倍らしいし。雑草食ってりゃタダなんだ。ミネラルは別途必要にしても、便利だろ。浮浪児時代に欲しかった機能だ」
「…バランス栄養食で生活する研究狂みたいなこと言ってるぞ、お前」
栄養価的には問題ないとか、だとしても、
「食べる楽しみとか、あるだろ、人間なんだから」
言えば、何を馬鹿なと言いたげに見返された。
「高次の欲求は、より低級な欲求が満たされてこそ、発動するんだぞ?」
栄養失調一歩手前のやつが、食べる楽しみなんか気にしてる余裕あるか。
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
浮浪児が増えたのは、戦争による死者と不況の影響だったか。
「…早く終わると良いな、戦争」
「?ああ、そうだな」
草をくれと言うからには、草を食べなきゃなにか不調が起こるんだろう。
せめて、美味い草を食わせてやろう。
黙って山盛りの草を食べ続ける痩せこけた元浮浪児を見下ろして、俺はそう思った。
拙いお話をお読み頂きありがとうございました
一時間後にフクロウ視点の小話を投下予定です




