閑話11 狂愛 2 (ギム視点)
たこ技師視点
読まなくても本編に影響はありません
前話で嫌な予感がした方は回避を推奨します
…たこが癒やしじゃなくなってます(ノД`)
「こんにちは、aはどちらですか?」
部屋に入って来た男に問われて、私は耳を疑った。
自分より十以上若く見え、実際十歳は若いのだが、役職的にも能力的にもはるかに上の人物だ。
その彼が自分などをわざわざ訪ねて来たことだけでも十二分に驚きなら、彼の目的がaであることも驚きだったが、何より驚かされたのは、彼がそのことを知らないと言う事実にだった。
知っていて見放したのだと、思い込んでいた。
恐らくだが、aも、飽きられ見捨てられたのだと、思っていたはずだ。
「…知らないのですか?」
「何をですか?」
知らず眉を寄せ問うた私の言葉に対し、男がきょとんと首を傾げる。
このあどけないひ弱で無害そうな男が、恐ろしい発明や実験を繰り返す狂人とは、にわかには信じられない話だ。
機械技師として逃れようもなく憧憬を感じつつも、同時に嫉妬と嫌悪を覚える。aは彼を嫌い恨みながら、誰より、もしかしたら唯一、愛していた。
私には救えなかったルビーを、救える可能性を持っていた男。
憎悪が滲んでしまいそうな視線を、男から逸らして答える。
「aは恐らくもう戻りません。第18小隊として、自爆テロを命じられました」
言い終わるが早いか、暴力的な動きで胸ぐらを掴まれた。
無理矢理に、視線を合わせられる。
「どう言うことです」
怒りに満ち満ちた瞳が私を捕らえていた。
「新世代機種も出て、使い勝手の悪い旧機種は必要ないと判断されたのでは?aも機械人形たちも身体中に爆弾を付けられて、今ごろ敵地の真っ只中にいるはずです。aは上の命令に逆らえません。あの子は、死ぬでしょう」
「話が違う!!」
目の前の男が吠えた。
あまりの剣幕に私は言葉を失う。
「新機種を開発実用化したらaは僕だけのものにして良いって言う約束だったはずだ。aが死ぬ?そんな計画僕は許可してない!!僕の可愛いaに自爆テロだって!?あり得ない。aは、僕の女だ」
鈍器で殴られたような衝撃だった。新機種は異様な早さで開発された。
もしや全てaのためだったのだろうか。
目の前の狂人に、人を愛する心があって、その相手は彼が滅茶苦茶に壊した少女だとでも言うのか。
そんな、馬鹿な。
しかし思い返せば確かに、彼が施したaへの改造は生存率を高めるようなものばかりだった。
大きな怪我をするたびに、四肢の性能や防御機能を向上させて。
怒り狂う男は掴んだ私の胸ぐらを引っ張り、乱暴に揺すった。
「君はaを傷付けないと思ったから口出ししなかったのに、なんて裏切りだ。どうして僕に話を寄越さない!?」
「私にaの所有権は…。すべて上の判断です。私には逆らえない」
私だって、aを失いたくはなかった。
けれど私の言葉など、上層部にはなんの意味も持たなかったのだ。
地獄のような境遇に曝されながら、それでも心を失わない少女。心ないはずの機械の心すら溶かした、奇跡のような存在。
たこにはとても手の出せない、鮮やかに輝くルビー。
汚されること受け入れるなんて、耐えられるはずもないじゃないか。
「私にはあなたと違って代わりに差し出せるものすらないのですから」
立場も忘れて、私は天才科学者を睨み付けていた。
「私があなたに訊きたいくらいですよ。それほどまでに大切ならば、目を離したりしなければ良かったのです。あなたが目を離さず守り続けていたならば、aが自爆テロを命じられるなんて、なかったはずなのですから」
若き天才は私を睨み返すも、その顔は今にも泣きそうだった。
私から手を離し、震える手で顔を覆って俯いた。
「許せない。許せない。許せない」
低い呪詛のような声が、手に隙間から落とされる。
再び顔が上げられたとき、瑠璃色の瞳には明らかな狂気が宿っていた。
「…僕をはめるなど、良い度胸じゃないですか」
度胸を称えて、全力で報復してやりましょう。
何をするかはわからないが、全面的に賛成したい意見だった。
aを冷遇するやつらが嫌っているのは実際のところ、a自身ではなく目の前の彼だ。aは彼に打撃を与えるための、捨て駒にされたに過ぎないのだ。
そんな下らないことで、よくも。
怒りはいくらでも沸き起こるが、けれど狂人を野放しには出来なかった。
それは、結局aを送り出すことになったときと、類似の理由。
「…報復はぜひともやって欲しいですが、周囲に打撃が広がることは、」
「わかってます。aが自分のために、無関係なやつらを虐げられることを望むはずがありません。狙うのも害するのも、思い上がった馬鹿だけですよ」
ああ。確かに彼はaを愛している。
「地獄に堕ちるより悲惨な目に、合わせてやって下さい」
「愚問だね」
狂気を宿して頷く男は、この上なく頼もしかった。
思わず、暗い笑みが浮かぶ。
報復になんの意味がある。
a、きみならそう言うかも知れないね?
でも、やり過ぎは咎めないといけない。
きみの二の舞が増えるのは、きみだって嫌だろう?
報復しても、aは助けられない。
そんなことは、わかっている。
それでもルビーに堕とされた私たちは、憎き相手を潰さずには居れないのだ。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
某狂人さんがaちゃんを救わなかった理由でした
漂うヤンデレ臭…(°°;)
まさかたこまで冒されるなんて…
続きも読んで頂けると嬉しいです




