第五十一話 消去 2
ま、にあった…(°°;)
なにかととんでもない誤字とかしていたら
ごめんなさい
昨日の白衣男の要求は、受け入れられたらしい。
目覚めて起き上がったわたしの前に、立っていたのは薄汚れた白衣の、見慣れた顔だった。
「おはよう、a」
やつれた顔。左頬に痣。
「馬鹿じゃねぇの」
「きみならそう言うと思っていたよ」
たこ技師は力なくそう言い、苦笑をこぼした。
「結局なにも変えられず、きみを殺す手助けをさせられる。私はきみを生かすために存在するのであって、きみを殺す手助けなんぞしないと、言っても聞く耳など持たれない。…最悪の二択を、強いられる結果になるとは」
「最悪の、二択?」
「いや、きみは知らなくて良い。助けられなくて、済まない」
心底悔しげな顔で、たこ技師は頭を下げた。
頭を下げる必要なんかないのに。
「別に、助けなんざ求めてないから良い。でも、あんたも、力がないのは同じ、ってわけか」
「私は単なる、平民出の機械技師でしかないからね…。彼のような、抜きん出た才能もなかったし」
無力なのは、奴隷でなくても変わらないのか。
奴隷と平民、国に住む人間、九割近くの声が通らないなら、この国はいったい、誰のために存在するんだろう。
虚しく、顔を覆う。
「…第18小隊を救うのは、無理なのか?」
「今までの記憶をすべて消去して、完全に初期化することが可能なら、まだ使えるだろう、と言う話だが」
言葉に出されないままでも、たこ技師の顔から無理なのは良くわかった。
目を閉じて、息を吐く。
「…あの、糞狂人」
低い声で、唸った。
機能を破壊しないままの完全なる初期化。それが可能なのはあの糞忌々しい狂人だけだ。
他の技術者の手による作品にならともかく、あの狂人が作った機械人形に、根本部分まで壊さず手出し出来るやつなんて、いない。
θたちは、生みの親に、見捨てられたんだ。
「今どうも、彼は第三世代の機械人形実用化に向けた研究に掛かりきりらしくてね。機械人形の初期化なんて、している暇はないらしい」
渋い顔のたこ技師が、苦い顔で語る。
…知るか、あんなやつのことなんか。
「第18小隊以外の兵は?どうなった?」
「戦争奴隷たちは、プロテクトの強化だったな」
その程度なら、まだ手緩い仕打ちだろう。
上も、自分たちの失策について、多少理解していると言うことかも知れない。
奴隷を巻き添えにせずに済んだことに、少しだけ安堵する。
戦争奴隷は無事。ならば、機械人形は?
「機械人形は?初期化、か?」
「いや。ほとんどの機械人形は、問題なしとされた」
「あ?」
問題なし?
「問題なしって、どうして」
「機械人形に関しては、逆らわなかったものと、GN-003329番、きみはミミズクと呼んでいるね、に、指示されて動いたものだからね。GN-003329番以外は、命令に逆らっていないと言うことらしい」
そうだ。
わたしは、ミミズクに指示を出して、ミミズクから機械人形の指揮官たちに指示を回させていた。
だから機械人形は罪に問われなくて、でも、
「ミミズクは」
ならば、ミミズクはどうなる?
「ミミズクは指揮官じゃないか。自分で情報を整理し判断する権限を持たされてる。わたしの指示が妥当と判断しただけなんたから、罪なんてないだろ?」
「でも、彼は機械人形なんだよ」
機械はひとの指示に、従ってれば良いもの。
そんなのは、わかってる。
でも、
「なら、なんで指揮官なんてやらせるんだ」
自分の隊に欠員を出したことを、気にしていたミミズクを思い出す。
簡単に兵を死なせるこの国の人間たちより、よほどひとらしい存在じゃないか。
「ミミズクが指揮官として行動して、いけないって言うなら、最初から指揮官なんてやらせなきゃ良かったんだ」
「…その、通りだね」
歯切れ悪く答えるたこ技師に、答えは訊くまでもないとわかっても、口にせずにはいられなかった。
「ミミズクは、どうなったんだ」
「彼は、第二世代だからね。初期化して、また使われる。もう、初期化されて訓練開始したそうだ」
ぽろりと、涙がこぼれた。
最初から、わかってたはずなのに。
機械は記録を消すだけで、元通りになってしまうんだって。
膝を抱えて、顔を埋めた。
「なにも、覚えてないのか」
「そうみたいだね。新兵として、頑張っているらしい」
「そうか」
だから、だから機械は嫌いなんだ。
漏れそうになる嗚咽を、顔を膝に押し付けて堪える。
最初はにこりともしないやつで、でも、付き合って行くうちに、笑って、怒って、悲しんで。まるで、こころがあるみたいに。
でも、消えてしまう。
少しいじられただけで、元通り。
もう二度と、“ミミズク”には会えないんだ。
第18小隊と同じ。わたしのせいで、ミミズクまで、犠牲になった。
「…なあ、なんでわたしは生きてるんだ?」
何が出来るわけでもない。生きものらしく、子孫を残すこともしない。
ただ機械のように消費され、ただ他を害するだけの生に、いったいなんの意味があると言うんだろう。
わたしに生きる価値は、あるのか?
ぽつりと呟いた問いに、答える声はなく。
たこ技師は途方に暮れたように横に立ち、わたしが泣くのを見下ろしていた。
たこ技師も、生きている意味なんて、わかりゃしないのかも知れない。
いつの間にか泣き疲れて眠ったわたしが次に目覚めたときには、わたしの身体は生きた爆弾に作り替えられていた。
生きる意味もわからないまま、わたしはとうとう死ぬんだろう。
ずっと死を願って来たけれど、ついに死ねる今、それが悲しいのか、嬉しいのか、わからなかった。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
すごく鬱展開で申し訳ありません
今話とか自分で書いていて自分に刺さりました(^-^;)
なんで生きているのとかね…orz
読むと精神にダメージ喰らいそうなお話ですが
続きも読んで頂けると嬉しいです




