表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/76

第四十九話 はないちもんめ 5

戦闘描写・死傷者ありです

苦手な方はご注意下さい

 

 

 

 叫ぶだけじゃ、状況は変えられない。

 考えろ。どうすればいい?どうすれば。

 

 荒れる視界を目まぐるしく行き来させ、状況を確認する。

 

 とにかく馬鹿な追撃を止め、伏兵を殲滅しないと。

 

 「ミミズク。左右斜面の林地に伏兵。殺られる前に、殺れ!森を、焼き払え!!」

 「ワカリマシタ。追撃ノ撤回モ、命令シマス」

 

 ミミズクに指示を出しながら、わたしも銃をぶっぱなす。

 あれは、火炎放射器か?

 

 盆地の斜面に、火炎放射器。炎の中で笑った、φ(ファイ)の顔が過った。

 

 火計だ。

 

 「撤退するやつらの足取りがおかしい。地雷がある。敵の狙いは火計だ、盆地に入るな!戻れ!!」

 

 単なる火計、そんなはずはない。

 恐らく、それだけじゃなくて。

 

 撃ち落とされた、フクロウの姿が脳裏に浮かぶ。

 

 「飛行兵!むやみに飛ぶな。狙い撃ちにされるぞ!!おい!頭良いならわかっただろ!?追撃の命令を撤回しろ!!」

 

 ミミズクのお陰かいくつかの機械人形指揮下の隊が進軍を止め、プロテクトに生存本能が勝ったのか、機械化奴隷指揮下の隊も、苦しげながら止まる。

 止まらないのは馬鹿貴族指揮下の隊と、ミミズクが指示を出せない隊だ。

 

 「敵が前にいるのに撤回など、許されるわけがない!!」

 「馬鹿野郎こんな広さなら追わなくても殲滅出来んだよ!!」

 

 ああもう。脳みそオガクズか糞野郎!!

 節穴なお前の目と違って、わたしたちはこのくらいの距離で、問題なく狙撃できるんだ。追う必要なんて、一切ない。

 

 「第18小隊!手近な兵を巻き添えにして戻れ!!」

 

 左右の林地が火の手を上げてからしばらくののち、熱でやられたか盆地で爆弾が暴発した。

 やっぱり、火計狙いだ。

 

 わたしの指示に反応して、第18小隊のヤツらが、戦争奴隷とっ捕まえて戻って来る。

 

 間に合わなかった兵が、爆弾に吹っ飛ばされた。

 飛び散る血に、馬鹿貴族が腰を抜かす。

 

 役に立たないくせに、足だけはいっちょ前に引っ張りやがって。

 

 「まともに動けるやつはここから敵を殲滅しろ!絶対に盆地に立ち入るな!」

 

 怒鳴って、自分は盆地に向けて駆け下りる。

 

 「a!?」

 

 誰のものかわからない、慌てた声が耳に響いた。

 

 「貴族見捨てりゃ全員処刑でおかしくないんだよ!!」

 

 足引っ張る馬鹿のせいで危機に放り込まれた挙げ句、自業自得で死んだ馬鹿のために処刑されるなんて、堪ったもんじゃない。

 

 「生きたきゃ這いずってでも、盆地から抜け出せ!!早く!!」

 

 怒鳴りながら走り、へたり込んだ貴族どもの許へ向かう。

 幾つか火傷を負ってはいるが、なんとか生きてはいるようだ。

 失神したり失禁したり、醜いことこの上ない。

 

 拾ってとっとと戻ろう。そう思った瞬間、壮絶な嫌な予感に襲われる。

 

 「固まって屈んでろ!!」

 

 貴族どもを押しこくって固まらせ、その前に立ち塞がった。

 持っていた冷却液を、固まる貴族どもにぶっかける。

 

 僅差で冷却液が間に合って、わたしは爆風と熱風に襲われた。

 燃え盛る炎を、防御装置が弾く。

 

 ひぃっと叫んで、意識を残していた馬鹿貴族も失神した。

 

 熱もある程度操れるように改良された防御装置に、今ばかりは感謝した。

 目の前に広がる、火の海。

 

 守りたかったのに、いったいどれほどの仲間が、赤い海に飲まれたのだろう。

 殺してやりたい。

 そう思うのに殺せない状況に、吐き気を覚えた。

 

 爆風が落ち着くのを待って、もう一度貴族どもへ冷却液をぶち撒ける。

 

 「a」

 「大丈夫デスカ?」

 「手伝イマス」

 「θ(シータ)ξ(クシー)α(アルファ)

 

 ひとりで運びにくい人数に、困っていた所だった。

 と言うか、この糞豚どもを、運びたくない。

 

 それに…。

 

 「…助かる。触りたくないなと、思ってたとこだった」

 「触ラセタクナイト、思ッテ来マシタ」

 

 …おい。

 

 胡乱な目になりつつも、好都合と頷く。

 

 「じゃあ、運搬頼む。後方の警戒はわたしがするから、とにかく急げ」

 

 わたしが止めたために、盆地に入り込んだ兵はそこまで多くなかった。つまり、まだ数多くの爆弾が、未発でおかしくない。

 恐らく、至近距離なら防御装置を貫通するような爆弾が。

 

 θたちは幸いにも、わたしの思惑に気付かなかったらしい。

 あっさり了承して、馬鹿どもを担ぐ。幸いにも、自陣営のいる方向はまだ火が回っていない。

 

 「よし。行けっ」

 

 指示を出して機械人形を先に行かせ、わたしも後を追う。

 

 来る。

 

 思った瞬間止まって振り返り、両手を広げた。

 

 「aッ!?」

 「いいから走れ!!」

 

 叫んだ声を、続けざまの爆音が吹き飛ばす。

 

 「ぐっ…げほ…」

 

 防御装置で防ぎきれなかった攻撃が、わたしの身体を抉る。

 肺か、腹か。咳き込んで吐いた唾液には、赤いものが混じっていた。

 

 近場の爆弾は多くなかったらしく、すぐに爆音は遠ざかった。

 

 振り向いて、走り出す。θたちは無事だ。

 

 「早く、戻る、ぞっ…ごほっ」

 「a!!」

 「だいじょぶ、だ。大したこと、ない」

 

 久々の直撃の負傷に、頭がくらくらする。

 

 それでも笑みを造って、θたちに指示を出す。

 

 「良いから、早く戻ろう。また爆弾喰らうのはごめんだ」

 

 急ぐのが得策、そう判断してくれたのだろう。

 不服げながら、θたちがまた走り出す。

 

 背後からいくつもの爆音が響くが、今度は身を抉るほど近くはない。

 

 命からがら、わたしたちは火の海から帰還した。

 

 「そのっ、馬鹿ども、後方の、安全な位置、にでも、棄てて、来い。くれぐれも、殺さな、いよう、に…」

 

 荒い息のままθたちに命じて、ミミズクを探す。

 無事だった。

 

 「a、怪我ヲ、」

 「現状、は?」

 

 ミミズクの言葉を手を挙げて遮り、問い掛ける。

 この程度の怪我なんか、心配してる場合じゃない。

 

 「味方ノ死傷ハ、オヨソ三割。敵ハ約七割ヲ殲滅済デス」

 「良く、やった。このまま、押しきろう」

 

 頷いて、わたしも敵殲滅に加わる。

 頭はぐらつくが、いつ馬鹿が邪魔しに来るかわからない以上、ここで倒れるわけには行かない。

 

 早いうちに火を放たせたのが、功を奏したか、否か。

 間もなく、殲滅は終了した。

 

 虚ろな目で、いまだ燃え盛り爆音を響かせる盆地を見下ろす。

 あの中に、何人の仲間がいるんだろう。

 

 「くそっ…」

 

 もっと良い方法は、なかったのか?

 なぜ、みすみす敵の策にはまった。

 

 「a」

 

 ミミズクが、指先でわたしの頬を撫でた。

 負傷を気にしてだろう。壊れものにでも、触れるような手付きだった。

 

 「泣カナイデ下サイ。ドウカ、犠牲デハナク、救ッタモノヲ、見テ下サイ」

 

 知らぬ間に、泣いていたらしい。

 ミミズクの指先が、涙の雫を掬った。

 

 「アナタノ声ガナケレバ、ココニイル全員ガ、アノ中ニ飲マレテイマシタ」

 「でも、わたしがちゃんと止められていたら…」

 「止メラレナカッタノハ、aダケデハアリマセン。アナタニハ、指示ヲ出ス権限ガナカッタ。ソレデモ諦メズ立チ向カッテクレタアナタニ、私ハ感謝シマス」

 

 ようやく、爆発音が止まりつつあった。

 それでも火は消えないし、恐らくまだ不発弾はあるだろう。

 

 「ココヲドウニカスルニハ、専門ノ知識ガ必要デショウネ」

 「ああ。そうだな」

 「デハ、撤退シマショウ」

 

 ミミズクは断りもなく、わたしをひょいと抱き上げた。

 

 「な!?ちょ、」

 「作戦ハ終了シマシタカラ、負傷者ヲ救護シテモ違反ニハナリマセン。ギム博士ノ所マデ、責任ヲ持ッテ運ビマスカラ、aハモウ休ンデ下サイ」

 

 休めと言われたとたん、どっと疲れに襲われた。

 馬鹿の相手は、精神を削られる上、プロテクトの効果も受け、その上に負傷だ。

 

 世話を焼かれるなんて望んでいないのに、抵抗する気力も完全に萎んで。

 

 「眠い」

 「エエ。オヤスミナサイ」

 

 わたしはミミズクの腕に身を委ねると、そのまま意識を手放した。

 

 



拙いお話をお読み頂きありがとうございます


続きも読んで頂けると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ