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第四十五話 はないちもんめ 1

戦闘描写です


怪我の話が出て来ます

苦手な方はご注意下さい

 

 

 

 ひとりで遊撃をやれと言われたところで、結局やることに大した差はない。

 

 敵を殺す、それだけだ。

 

 ただ、命令をして来るやつや、動向を必ず気に掛けなきゃなんない兵が、いなくなっただけ。

 

 前線に立って敵を撃つ、それは変わらなかった。

 

 身軽な立場を活かして、狙撃しやすい場所を陣取って敵を撃つ。狙うのは武器だ。敵国の要は強力な武器なんだから、それを先に壊すに越したことはない。

 越したことはない、のに。

 

 「おい、そこの」

 

 近場にいた機械人形に話し掛ける。無視された。雑談じゃないってのに。

 

 仕方なく辺りを見回し、人間の兵を探す。

 

 「なぁ、あんた」

 

 狙撃している機械化奴隷に歩み寄って、声を掛けた。知らない顔だが、たぶん指揮官だ。

 

 「なんだ」

 

 面倒そうに対応される。顔見知りじゃないから、仕方ない話か。

 無視されなかっただけマシと、さっき感じた疑問を投げ掛ける。

 

 「なんで、兵士を狙ってんだ?」

 「は?」

 

 何を馬鹿なことをと言いたげに見返された。

 いやいやいや、馬鹿はそっちだ。

 

 「機械人形と違って、あっちの兵は烏合の衆だろ?危険なのは兵じゃなくて、兵器だ。味方の被害を少なく抑えるなら、先に兵器を落としとくべきだろ」

 

 なんで、そんな意表を突かれたみたいな顔してんだよ。

 

 髪に手を突っ込んで、掻き混ぜる。

 

 そりゃ、負けもするよ。

 

 「あんた一応、指揮官だろ?頭使えよ」

 

 呆れて言うと、睨み返された。だが、機械人形の標的が変わった辺り、わたしの意見は受け入れられたようだ。

 

 「そんなデータ、貰ってねぇよ」

 「上が馬鹿なのは、わかってんだろ?」

 「…データ作ったやつが、馬鹿なのか」

 

 軽口を叩き合うと、相手の顔が少し友好的になった。

 

 「助言、ありがとな。他の隊のやつらにも、回しとく」

 「ああ、頼むよ。馬鹿に混じって心中したくない」

 「お前、自分の隊は、って、ああ、遊撃、だったか?」

 

 わたしについては、きちんと情報が行ってるみたいだ。

 

 「ああ。前線に出たのはふた月振りだけど、まさかこんな馬鹿やってるとは思わなかった」

 

 θ(シータ)たちやGN-003329(ミミズク)の隊が、頑張ってると言われた理由を理解した。ヤツらは機械人形ではあるが、わたしの指揮下にいたために、どんな攻撃が合理的かを理解してるんだ。

 経験不足な兵より良い動きをするのは、当たり前な話だ。

 

 「…ふた月ブランクがあるやつの動きには見えないけどな」

 

 着実に敵の兵器を壊して行くわたしに、話し相手は苦笑して言った。

 そこは、経験の差だろう。

 

 「前線に出てなかっただけで訓練さぼってたわけでも仕事してなかったわけでもないからな。それに、従軍歴が圧倒的に違う。あんたJ五桁番代だろ?わたしの同期はJなら3000番前後だ。機械人形の第一世代より先に、戦場に立ってた」

 

 その頃の知り合いの奴隷は、ついにひとりもいなくなってしまったけど。

 

 そう考えれば第18小隊の欠員がいまだφ(ファイ)だけなのは、確かに僥倖なのかも知れない。まぁ、運が良かっただけだろうけど。

 

 「…どうやったら、そんなに長く生き延びられるんだ」

 

 呟く彼はもう、前線の命がどれだけ安いかを理解してるんだろう。

 それでも、生きたいと願ってる。

 そうしてきっと、死んで行く。

 

 希望を持たせてやれるなら、持たせてやりたい。

 でも、なんで、わたしが生き延びたかなんて、わたしが訊きたいくらいなんだ。

 

 「スペックと、運、かな?」

 「そこは、努力とか言って欲しかった」

 

 個人の努力でどうにもならないことを挙げたわたしの答えは、彼のお気に召さなかったようだ。希望を与えられなくて、申し訳ない。

 

 でも、本当にそれに尽きると思うんだけど。

 あの狂人は希代の天才科学者らしいし、わたしはたまに化け物みたいな殺戮を行うらしいし。

 

 少なくとも、死にかけて生き残った大体の理由は、他力によるもののような気がする。

 

 機械人形に守って貰ったなんて、抹殺に向かう道を勧めるわけにも行かない。

 

 それ以外で生き残った理由があるとするなら、

 

 「じゃあ、どんな怪我でも基地まで帰還する根性」

 

 たこ技師に生かされた部分も大きいと思う。半死にで帰還して次の日なにごともなかったみたいに起こされた回数は、かなり多い。

 この国の技術者は鬼畜生だが実力だけはある。機械化奴隷なら帰還さえすれば大抵は生かして貰えるだろう。

 

 「どんな怪我でもって…」

 「脚を亡くすと歩けないから、脚は守るのがコツかな。あと、頭と、心臓。ああでもあんた、飛べんのか。なら、脚も亡くして平気だな」

 

 なぜだろう。希望を与えたいのに、どんどん希望を失わせてる気がする。

 戦争奴隷に希望なんかないんだから、仕方ないかも知れないけど。

 

 わたしが自力で帰った中でいちばん酷かったのは、砲弾が直撃して両腕と脇腹吹っ飛ばされた時だな。まだ、人間の隊に所属してたころだ。

 そのときも、よくまあ無事だったとたこ技師に苦笑されたし、気絶して起きたらあの狂人に見下ろされてた。

 

 それ以上に欠損が酷かったときは…

 

 「あー…、わたしの場合、機械人形に人命優先命令が出てた時期もあったからな。やっぱり、運が大きいよ」

 

 機械人形の攻撃に飛び込んだときは、φに運ばれたんだった。

 

 「機械人形に、奴隷を守らせてたのか?」

 

 やっぱり、驚くよな。

 

 苦笑して、頷く。

 

 「ああ。機械人形投入時は、戦争奴隷が極端に減ってた時期だからな。機械人形の能力も未知数だったし、確実に有用な機械化奴隷は、優先的に生存させられてたんだ。あくまで、ほんの一時いっときの話だけどな」

 

 話の途中だが、立ち上がる。

 ここからは角度的に狙いづらい位置の敵兵が、こっちの兵を圧していた。

 

 「悪い。あっちが圧されてるから、移動するよ」

 「ああ。助かった。また、あんたと同じ作戦が良いな」

 「お互い、生きてりゃ機会もあるだろ」

 

 笑って、手を振る。気の良い奴隷だった。

 あいつもわたしも、ひと月だって生き残れる可能性は、きっと低いだろうけど。

 でも、運が良ければ、きっとまた。

 

 その日の作戦はその後危なげなく終了し、わたしは無傷で帰還した。

 

 これで戦績落とすとか、本当に兵の質が落ちてるのか。厄介なのは有能な敵より無能な味方って、本当なんだな。

 それから数回、単騎遊撃をやらされたが、どの作戦でもちょっとした指示で苦労なく勝ちを収められた。

 

 わたしが拾った勝ちが、どんな結果になるかなんて、予想もしてなかった。

 

 



拙いお話をお読み頂きありがとうございます


もう少し日刊出来そうです


続きも読んで頂けると嬉しいです

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