表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/76

閑話7 赤い魔女 1 (―――視点)

某ストーk…こほん、敵国の青年視点


今更ですが

どうして閑話だけアラビア数字なんだろう…

謎だ←


殺人描写があります

苦手な方はご注意下さい

 

 

 

 最近この国には、魔女が出るらしい。

 どこからともなく現れる、赤毛、黒服の、人喰い魔女だそうだ。

 

 魔女は突如現れ、人間離れした動きをし、国の要人を殺すのだと言う。

 

 国内のレジスタンス、文官の反発、他国の間者、さまざまな憶測が飛び交っていると言う。

 

 その話を聞いたとき、ぼくの頭に浮かんだのは、赤い髪の天使の顔だった。

 

 敵国に仕える、機械化兵の少女。

 

 戦況の傾きであの花畑に行けなくなって以来、顔も見れていない彼女なら、魔女のように忍び込んで国の要人を殺すことだって、可能なんじゃないかと思った。

 だって、彼女は切り立った崖を生身で駆け下りられるのだから。

 

 叶うなら、会いたい、と思う。

 会ったら最後、殺されるのかも知れないけど。

 

 ぼくは前線に行かせては貰えないし、いくら彼女でもこんな国の中央付近まで忍び込めはしないだろう。

 そう、少し残念な気持ちになったぼくの予想に反して、予期せぬ再会は訪れた。

 

 

 

 さっきから、どうも騒がしい。

 

 静かなはずの研究室に怒号交じりの喧騒が届き、ぼくは顔を上げた。

 何事だろうと、研究室の扉に近付く。

 

 「…だ!!」

 「しょ…ん、…た!!」

 

 扉に阻まれて、何を言っているのか聞き取れないが、どうやら穏やかな雰囲気ではなさそうだ。

 

 危ないだろうかと不安に思いつつ、薄く扉を開いた。

 

 「赤い魔女だ!!」

 

 とたん耳に飛び込んだ声に、危機感も忘れて廊下に飛び出す。

 

 「将軍が、マルクス大将がやられた!!」

 「研究塔に逃げた!追え!!」

 

 外から響く怒号と、廊下を走る黒い影。

 

 「こっちに!」

 

 思わず、呼んでいた。

 

 鮮やかな紅玉が、ぼくを映す。

 

 逃げているはずなのに、なぜかのんきに首を傾げて見せた天使は、にっと笑ってぼくの研究室に飛び込んだ。

 ぼくも彼女に続いて、扉を閉める。

 

 騒がしい声と足音が、少しだけ遠ざかった。

 

 走っていたはずなのに息も乱していない彼女が、ぼくの研究室に立っている。

 

 真っ赤な髪と真っ白な肌を際立たせる、真っ黒なドレス。いつも見ていた軍服とは違うけれど、確かに彼女だった。

 

 彼女の瞳が、ぼくを映している。

 夢みたいだ。

 

 呆然と彼女を見つめるぼくの前で、彼女はふっと微笑んだ。

 

 「わたし、犯罪者だけど、捕まえなくて良いのか?」

 

 幾度となく聞き惚れた声が、ぼくに向けて紡がれる。

 人形のような見た目に反する粗雑な喋り方だが、彼女には不思議としっくり似合っていた。

 

 犯罪者。その通りだ。彼女は何人もの重鎮を殺した、赤い魔女。

 

 「…ぼくに、きみを捕まえる力はありませんから」

 「捕まえるために誘導したんじゃないのか?」

 

 捕まえるために誘導したんだと思ったなら、なんで彼女はぼくの声に従ったんだろう。

 彼女はぼくを見上げて、首を傾げている。

 

 遠くから見て目測してはいたけど、本当に小柄で華奢な子だ。

 わかっていても、兵士には見えない。今みたいに女の子らしい服装をしていると、特に。

 

 「捕まえられると思ったなら、なんで入ったの?」

 「あんた、捕まえる気なさそうだったから」

 

 確かに、捕まえる気なんてなかった。気付いたら、呼んでいたのだから。

 でも、彼女はあの短い時間で、それに気付いたと言うのだろうか。

 

 「きみは、」

 

 呟いたとき、ノックの音が響いた。

 

 「奥、箱があるから、隠れて」

 

 彼女に奥の扉を差して示す。研究室の奥は仮眠室だが、半物置化している。

 彼女は気配もなく、奥の扉へ消えた。

 

 急かすように、再びノックが響く。

 

 「シュルツ博士、いらっしゃいますか?」

 「はい、いま出ます」

 

 扉の前にいたのは、殺気立った警備兵だった。

 

 追う者と追われる者の落差に、苦笑しそうになる。

 

 「どうしました?さっきから、どうにも騒がしいですが」

 「賊が、研究塔に忍び込みました。部屋を改めさせて頂いても?」

 「…研究室をですか?ぼくの部屋に賊が入り込んだ、証拠でも?」

 

 部屋の中には彼女がいる。そうでなくても、繊細な研究試料に触れられたくはないのに。

 

 「いえ、それは…」

 「だから何度も、監視カメラの設置を主張してるじゃないですか。予算がどうのと出し渋って、って、え?」

 

 わたしの背後から伸びた手が、兵士の首を握り潰した。

 華奢な、少女の手だ。

 

 「庇ってくれてありがとう、お兄さん」

 

 片手でひとりを殺めた天使が、にっこりと微笑む。

 

 「そろそろ暗くなる頃だし、もうお家に帰らないと」

 「…国に?」

 

 訊ねた言葉は天使を驚かせたようだった。

 

 「わたし、訛ってる?」

 「いや、綺麗な発音だよ」

 

 目を瞬いた天使に首を振って答える。

 今更気付いたが、天使は流暢にこちらの言葉を喋っていた。

 

 「でもきみ、機械化兵だろ?あっちの」

 「なんか、そう思うような行動取った?」

 「いや、ぼくが顔を知ってただけ」

 

 天使は濡れた手をぼくの白衣で拭ってから、困ったように頭を掻いた。

 

 「うーん、それ、知られるとあんまり嬉しくないんだけどな…」

 「どうして?」

 「トカゲのしっぽになる、わたしが」

 

 つまり、彼女の独断扱いで生贄にされる、と言うことだろうか。

 

 「口封じ、して良い?」

 「え?ああ、うん」

 

 彼女を危険に晒すくらいなら、ぼくは死のう。

 

 迷いもせずに頷けば、天使はおかしそうに噴き出した。

 

 「なにそれ。あっさり頷いて良い質問じゃないだろ」

 「いや、うん。そうだけど」

 「黙ってて、って言ったら、黙っててくれる?」

 「え?」

 

 殺さない、のだろうか。

 

 「好きで殺してるんじゃないよ。必要がないなら、殺さない。お兄さんは、庇ってくれたしね」

 

 天使が笑って言う。

 確かに、魔女の被害者は国の要人ばかりだった。兵や従軍者の被害もあるにはあるが、あえて殺したと思える人数じゃない。

 彼女の目撃者がいるのが、良い例だろう。本当にばれたくないなら、目撃者ひとり残さず殺した方が良いのだろうから。

 

 でも、彼女の身分を知るぼくを生かすのは、余りに危険じゃないだろうか。

 

 「この国は、科学者を拷問に掛けたりしないだろ?あんたが黙っていさえすれば、わたしはしっぽにならなくて済む」

 「きみが困るなら、喋る気はない、けど」

 「そっか、ありがと、約束な」

 

 にっと笑って彼女はぼくに手を伸ばすと、

 

 「じゃあ、おやすみ」

 

 痛みはなく、ただ視界が傾いで、ぼくの意識は途切れた。

 

 



拙いお話をお読み頂きありがとうございます


彼が死んだか否かは…


aちゃんがドレスを着ているのには

一回目の時に着せられた服が敵国で主流な型だったので

国籍や身分をごまかすために利用したと言う裏設定があります

ドレスが気に入ったとかではないです


別の方の視点に移った閑話8を明日18時に投稿予定です

短めのお話になりますがお読み頂けると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ