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第三十一話(改) 戦争奴隷 1

前話からの続きになっています


(2015.07.03、本文を全て差し替えました)

差別および暴力の描写があります

苦手な方はご注意ください


次話に繋がったお話になっています

 

 

 

 「訓練中に、何をしている」


 掛けられた声に目の前の戦争奴隷たちはびくりと身を揺らし、わたしは瞬間顔をしかめた。


 無表情を取り繕って、振り返る。


 「…わたしが訓練に遅れたため、指示の確認をしていました」


 声を掛けた態度から見なくてもわかったが、案の定、偉ぶった顔の一般兵がふたり、こちらを睥睨していた。階級章と外見から見るに、貴族の坊ちゃん上がりの兵士だろう。


 最悪な相手に、目を付けられた。


 うんざりする気持ちを押し隠し、しれっと、嘘を吐く。

 戸惑いかけた奴隷たちは、睨んで黙らせる。嘘も方便だ。


 「こっちの、機械人形はわたしの指揮する隊の兵ですから、わたしの指示を仰ぎに集まったんです。そっちの戦争奴隷は、それにつられて。自分の隊に集合が掛かったと勘違いしたようですね」

 「そうか」


 頷いた兵士は、持っていた硬鞭こうべんで奴隷たちを容赦なく殴った。


 「自分の隊程度も理解出来ないか。犬畜生が!!」

 「「申し訳ありませんっ」」


 ろくに筋肉も付いていない坊ちゃんの腕で殴られた程度、機械化された戦争奴隷には大した打撃じゃない。それでも痛いし、痣だって出来るけど。

 奴隷たちはよろけもせずに殴打に耐え、深々と頭を下げた。調子に乗ったか兵士が、追い打ちの如く再度硬鞭を振るう。


 …自分の拳で殴る度胸もないくせに、豚野郎どもが。


 満足行くまで殴ったか、腕が疲れたか。ひとしきり奴隷をいたぶった兵士が手を取め、吐き捨てた。


 「さっさと訓練に戻れ。無駄飯食らいの家畜ども」


 …どっちが。


 脂が多くて良く燃えそうな身体の兵士を見る目に、侮蔑が滲まぬように意識する。


 枯れ木のような身体の奴隷たちはわたしをひと睨みして、走り去った。


 走り去る奴隷からわたしへ視線を移した兵士が、硬鞭を振り上げる。


 「離せ、無礼者」


 のろまな兵が硬鞭をわたしめがけて振り下ろすより遥かに早く、θ(シータ)α(アルファ)が間に割り込み、兵士たちの腕を掴んで硬鞭を止めた。

 離せと言われて手は離したが、退きはしない。


 均衡の取れた長身美形と、中肉中背の平凡顔の対比が、なんとも…。あー、うん、よく堂々と前に立てるなって感じだ。

 

 θの影で溜め息を吐いて、口を開いた。


 「…α、θ、下がれ」


 前に立つθの腕を、軽く叩いて言う。


 「デスガ」

 「心配するな。ただの叱責で、訓練じゃない」


 無理矢理αとθの間を割って、兵士たちの前へ顔を出した。


 「済みません。攻撃回避の訓練と思ったようです。わたしの監督不行き届きです。申し訳ありません」

 「訓練に遅刻した挙げ句、監督不行き届きか」


 ちらりと後ろを見やって、頭を下げる。


 「訓練の遅刻は、怪我の治療のためです。メンテナンス担当の…」

 「ギム」

 「…ギム博士の監督下におりましたので必要があれば確認を」


 ああ、殴られるな、と思うのと怒鳴るのが同時だった。


 「動くな!ポンコツども!!」


 突然の罵声に振り下ろされようとした硬鞭と、硬鞭を止めようとした機械人形の動きが止まる。


 顔を上げて、顔をしかめた。


 「重ね重ね、申し訳ありません。邪魔なばかりですので、機械人形は訓練に戻して構いませんか?叱責は、彼らの分までわたしに」


 言えば向けられたのは、覚えのある視線だった。


 ああ、下衆げすの目だ。戦争奴隷として捕まる前に、何度も見た目。


 下衆は嗤って頷いた。


 「良いだろう。散れ」

 「訓練に戻れ。離脱は許さない」


 逆らえば、わたしへの叱責が酷くなるだけ。


 その程度はわかったか、機械人形たちは納得の行かない顔ながら渋々と訓練に戻った。


 途端、振り下ろされる硬鞭。


 笑えるほどとろくさいその攻撃を、黙って受ける。衝撃で動かしたように見える顔や上体の移動が、衝撃を殺すためだなんてこの下衆は気付きもしないだろう。


 「いつから戦争奴隷は兵士に口応え出来るほど偉くなった」

 「申し訳ありません」


 反論しなければどっかのバカどもが間違いなく口を挟んで来た。それを防ぐためだったんだから、仕方ないだろう。


 嘲りが滲んだ表情を隠すために、腰を折って顔を下げる。


 気付かないんだろうか、目の前の下衆どもは。訓練に戻ったはずの機械人形たちが、凄まじい殺気をこちらに向けていることに。


 今は、気付いてくれなくて好都合だけど。

 作戦中の不慮の負傷ですら気に入らないんだ。こんな仕打ち、許したくはないんだろう、ヤツらは。

 本当に、戦闘奴隷のなんたるかを、わかってない。あの、ポンコツども。


 あのバカどもが我慢出来てるうちに、下衆どもの気が済むなら良いけど。


 わたしの希望など叶うはずもなく、下衆は下衆らしく下品な罰を思い付いたようだ。


 「…お前、服を脱げ」


 はぁあ!?


 後ろ上がりの啖呵を、心の中だけに収めたわたしを褒めてやりたい。


 ふざけた要望に顔を上げれば、たまたま声が聞こえる場所にいたらしいさっきの戦争奴隷たちですら、不快と侮蔑をあらわにした顔で下衆どもを見ていた。

 わたしは長髪で短身痩躯、前に立って見れば疑うべくもなく、女である。女で、奴隷。でも、性奴じゃなく、戦争奴隷だ。公衆の面前で意味もなく裸になる、そんなことをさせられるための存在じゃない。


 「犬畜生だ、服の上から殴られた程度では痛くも痒くもないだろう。背中を出せ」


 そう言うことか。


 了解して、溜め息を飲み込む。背中を直に殴ろうという話らしい。下らない。

 どうせ、わたしが女だから辱めてやろうと言う魂胆もあるのだろうが、下らない。


 「わかりました」


 口応えもせず、着ていた上着の合わせに手を掛ける。何を期待しているか知らないが、服を脱いだところでこの身体は生身じゃない。見られて恥じ入るような身体は、とっくの昔に喪っている。

 上着を脱ぎ、下に着ていたシャツを脱いだところで、下着とズボンの間のわずかに露出した腹を見た下衆どもが息を飲んだ。腹にチャックが付いた女なんて、初めて見たんだろう。


 嗤って、自分の腹を撫でた。


 「開けば、この国の技術の一端が垣間見れますよ。内臓も見えますけど。見ますか?」


 チャックのつまみに指を掛ければ、ぎょっとして首を振られた。


 「い、要らん!腹の中身なんぞ見せなくて良いから、早く背中を出せ!」

 「わかりました」


 青ざめた顔に内心爆笑しながら、下着に手を掛ける。


 耳元で機械音がして、視界がぶれた。


 「う、わ…」


 気付けば、機械の腕の中だった。適当に投げたはずの服で、有無も言わせず身体を覆い直される。


 「ちょっと、」


 逃がさない、渡さない、とでも言いたげに身体に絡む腕を叩く。


 「θ、訓練は、」

 「ナゼ」


 腕に囲われているために顔は見えないが、θの声は明らかに怒っていて、それは、集まった他の機械人形たちも同じだった。


 …バカヤロウ、どもが。なんのために、わたしが。

 本当に、コイツらは、わかってない。


 「ナゼ、(アト)ガ服ヲ脱グ必要ガ?」

 「罰則だろ。むち打ちだとさ」

 「…ナゼ、aガ笞打タレル必要ガ?」


 わからない、か。

 さて、わたしにもわからないが。


 「遅刻、監督不行き届き、あと、不敬罪、かな?」


 これから増えるかも知れないけど。


 下衆たちも、何か拘束なり妨害なり受けているのだろう。喧しい怒鳴り声が聞こえる。


 「どけ、貴様らっ!!」

 「機械人形如きが、邪魔をするな!!」

 「…aハ、殴ラレルコトナド、」

 「やったよ」


 顔は見えないけど、言ったのはβ(ベータ)か。θの腕から抜け出そうとしながら、言葉を遮る。


 「殴りたいと思わせた。戦争奴隷が、いや、奴隷が殴られる理由なんて、それで、」

 「なんの騒ぎだー?」


 わたしの言葉の途中で、更なる乱入者が現れた。


 

 


拙いお話をお読み頂きありがとうございます


内容に納得が行かなかったため

全文差し替えさせて頂きました

前のヴァージョンを読んで下さった方には

ご迷惑お掛けしてしまい

申し訳ありません


続きも読んで頂けると嬉しいです

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