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閑話5 たこにルビー 2 (ギム視点)

たこ技師視点

二話目

 

 

 

 (アト)に、戦争奴隷の友達が出来たようだ。

 本人は気付いていないようだったけれど、元々色々と注目は集めていたし、本人も口は悪いが根は優しい子だ。誰かきっかけになる子がいれば、打ち解けるのは速いだろう。

 

 ただ、優しい子であるだけに、失ったときが心配だが。

 

 危惧した出来事は避けようもなく、ある日彼女に襲い掛かった。

 

 何かを握り締めて、目を真っ赤に腫らした少女。

 作戦もその事後処理も問題なくこなしているだけに、余計に腫れた目許が痛々しかった。

 思えば彼女が泣いたのを見たのは、それが初めてだったと思う。

 

 痛かろうが苦しかろうが、彼女は今まで泣いたことがなかったのだ。

 

 通信機が着信を告げる。

 

 『aは、明日一日休暇です』

 

 手を回したのは、かの科学者か。

 

 与えられた休日、aは基地を抜け出してどこかへ行ったようだった。本来咎められるべきことだが、aに限ってはとある人物の根回しで黙認された。

 根回しした人物が、この国初の実用的な戦闘用殺戮機械人形の作成に成功したのが大きいのだろう。

 

 その後もaと親しい奴隷が死ぬたび、とある人物は彼女の休暇をもぎ取った。

 aは私が根回ししているのだと思っているようだが、残念ながら私にそんな権限はない。

 

 「は…?」

 

 戦争奴隷として直実に経験を積み、遂には指揮官すら任せられるようになったaに、機械人形で構成された小隊の指揮官になるよう伝えたのは、それからどれくらい経ってからだっただろうか。

 取り敢えず、戦闘用殺戮機械人形が実用化されて一年ほど経ってからなのは確かだ。一般兵の指揮の下での試験運営が終わって、実戦経験豊富な戦争奴隷を指揮官に、前線で戦わせることになったとき。

 

 命令を聞いたaは、心底嫌そうな顔で聞き返して来た。

 

 我が国の機械人形作成技術は狂人レベルに高い。

 そもそも娯楽や福祉目的に造られたのが先駆けなため、外見に異様な拘りを持って造られているのだ。そのため、戦闘用殺戮機械人形ですら、パッと見で―良く見てもの方が正しいかも知れない―人との区別が出来ないほど精巧に人に似せて造られている。

 大抵の兵たちは、言われなければ機械人形を人と区別出来ない。

 

 ところがaは、ひと目で、いや、見なくても、機械人形と人を見分ける。

 彼女曰く、魂の有無で見分けがつくらしいが、私はそんな見分け方の出来る人間なんて、a以外には知らない。

 何にしろ、aから見ると人と機械人形とは明確な違いがあるらしく、彼女曰く“魂を持たない”機械人形は、あまり好きでないようだ。

 

 そうは言っても戦争奴隷が上の命令に逆らえるわけもなく。

 

 「なんでわたしが…」

 

 不承不承ながら、aは第18小隊、かの天才科学者が造り上げた機械人形のみで構成される小隊の、指揮官になった。

 

 それから第18小隊は、危険な作戦にばかり駆り出されるようになった。

 

 明らかに、かの狂った天才へのやっかみだろう。

 

 全滅しろと願う醜悪な人々の思惑に反して、aは素晴らしい指揮官適性を発揮し、第18小隊はひとりの欠けも出さずに作戦を遂行し続けた。

 

 aが指揮官としての行動に逸したのは一度きり。

 

 「ギム博士、aを助けて下さい」

 

 何を思ったか身を挺して敵兵を助け、代わりに負傷し失神して、φ(ファイ)に担ぎ込まれたときのみだろう。

 

 あとで衛星映像を確認した所、aが助けたのはごく幼い戦争奴隷だったようだし、同情でもしてしまったのかも知れない。

 aがそれまで顔を間近で見て殺して来たのはaが拾われたときの年齢より年嵩な兵ばかりだった。戦場に立って正気でいられるのが不思議なくらい、優しい所のある子だ。明らかな子供を殺せるような、非道さは持っていなかったのだろう。

 

 可愛そうだが、上の命令でプロテクトを強めさせて貰った。本人はあまり自覚がないようだが、aはかなり性能の高い戦争奴隷だ、叛逆でもされては困る、と言うことだろう。

 

 これも本人は自覚がないようすだけど、aに好感を抱いている兵も多いからね。そこも、上を大いに警戒させたのだろう。

 

 aは不思議と、いいや、不思議ではないね。aはその優しい気質と愛らしい外見のお陰で、無意識に人心掌握をする子だ。頭の回転も速いし、本当に指揮官向きの資質を持った子なのだろう。

 心の腐った奴らばかりの上層部としては、眩し過ぎて目障りな存在、と言うわけだ。

 

 aを抱き抱えてメンテナンスルームに飛び込んで来た、φもきっと、aの魅力にやられたひとりだろうね。

 

 aは気付いていなかったようだけど、今思い返せばこの時点で随分、φはaに執心だった。

 …造り手に、似たのかも知れないね?

 

 私?私は、ただのたこだからね。

 猫に小判。あるいは、月とすっぽん。

 たこにルビーは必要ないし、同じ赤でも格段な差があるだろう。

 

 遠くはないが、近くもない。こんな位置で見守る役が、ただのたこにはお似合いだよ。

 例の彼のように、彼女を守れる権力も才能もないからね。

 たこにルビーは似合わない。そう思っていないと、やりきれなくなってしまう。

 

 



拙いお話をお読み頂きありがとうございます


閑話で更新数稼いでますが

今日で連日投稿一か月達成しましたー(ノ´∀`)ノ

根性なしの作者がここまでやれたのは

ひとえにアクセスして下さる方々のお陰です

本当にありがとうございます<(__)>


拙い作品ではありますが

今後もお付き合い頂けると嬉しいです

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