表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/76

閑話3 赤い髪の天使 3 (―――視点)

赤い髪の天使 3


彼のお話はひと段落で

次話はaちゃん視点のお話に戻ります

 

 

 

 ぼくの不安をよそに、彼女はそれからも姿を見せ続けてくれた。

 

 見ている男の存在も、勝手に心配されていることも気付かず、土に汚れながら仲間のパーツを埋め、泣きながらレクイエムを歌って去る。

 彼女に出会わない期間が長く続けば不安で気を揉み、姿が見られれば涙が滲むほどに安堵する。

 名前も知らない、敵国の兵士相手だと言うのに、まるで恋する乙女のような行動だった。彼女を救う努力もしないくせに、勝手に気持ちだけ抱いて。

 

 言葉は覚えても、彼女はいつもひとりだったから、彼女の名前を知ることはないだろうと思っていた。

 天使がレクイエム以外を歌った、あの日までは。

 

 崖の中から響くアリアに、ぼくは驚いて崖の端へ駆け寄った。

 見えたのはいつも通り泣きながら歌う彼女と、30人ほどの兵士。彼女も天使かと思うほどの容姿だったが、彼女を囲う兵士たちも、きらきらしいほど整った顔ばかりだった。

 服装が軍服でなかったら、本当に天使の集団にでも出会ったかと思っただろう。

 

 思わず目を奪われたぼくはしかし、次の瞬間には見たことを後悔させられた。

 

 「―っ!?」

 

 歌う彼女以外の全員が、一斉にこちらを向いたのだ。

 驚嘆か恐怖か、心臓がぎゅうっと縮む。

 望遠鏡を取り落としそうになって、慌てて抱え込んだ。彼らの方はとても、見られなかった。

 

 心臓が破裂しそうな勢いで鼓動を打ち、一瞬で血の気が下がり、身体中からどっと汗が溢れた。乱れた呼吸をなだめるのにかかった時間は、数秒か数時間か。

 

 死すら覚悟して上げた視線の先で、けれどすでに誰ひとりこちらを向くものはいなくなっていた。

 敵意がないと見逃されたか、攻撃されても問題ないと見なされたか、歌い終えた彼女の方に気を取られたか。

 

 明らかに、最後の理由だろう。

 

 彼女を見る兵士たちの視線には、紛れもない恋情がこもっていると感じた。

 名前も知らぬ彼女に奪われたぼくの心が、そう見せるだけかも知れないけれど。

 

 「アト、どうして泣いているのですか?」

 「嬉しがってるように、見えるか?」

 

 天使はアトと言う名前なのかとか、天使と普通に会話を交わせる兵士たちが羨ましいとかも思ったが、何よりそんな不躾な問いを投げる男に憤った。いくら顔が良くても、言って良いことと悪いことがあるだろう。

 けれどそんな憤りは、続く会話で綺麗に驚きへと塗り替えられた。

 

 「人の感情と言う物は、わたしには不可解です」

 「わたしが壊れても」

 「機械だからって」

 

 会話の端々から読み取れる、その意味は。

 

 「―――」

 

 声を上げないようにするので、やっとだった。

 

 瞬きし、首を傾げ、会話をする。髪は風に柔らかくなびき、視線に合わせて瞳が動き、赤い唇から声が漏れる。

 あれが、機械人形?

 

 あり得ない。だって、どう見ても人間にしか、見えないのに。

 

 あそこにいる、彼女以外全員が、機械だって、言うのか?人ではなく、作り物の人形だって?

 

 「ごめんなさい、アト」

 

 愛しくて仕方がないとでも言いたげに天使を抱き寄せ、苦悩と懺悔の滲む声を出すあれが、造られた偽物だって言うのか?

 

 信じられない。そんな、こと。

 

 敵国の技術も凄いのだろう。あの外見や動きは、とてつもなく高水準の技術のすいのはずだ。

 でも、それだけとは思えない。

 

 だって、あれは、本当に意思を持って、動いているように見える。

 

 彼女は本当に天使で、機械にすら心を与えてしまったのではないだろうか?

 

 知り合いに知られれば何を馬鹿なと笑われるような疑惑を、そのときのぼくは本気で抱いていた。

 

 



拙いお話をお読み頂きありがとうございます


続きも読んで頂けると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ