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閑話2 赤い髪の天使 2 (―――視点)

赤い髪の天使 2

1を読んでいないと意味が分からないと思います


読まなくてもたぶん本編に支障はないです

 

 

 

 天使の涙の明確な意味を知ったのは、それから数度目の邂逅ののちだった。邂逅と言っても、ぼくが一方的に彼女を見ていただけだったけれど。

 

 馬鹿な男と笑って欲しい。その頃のぼくは彼女に恋するあまり、こっそり敵性語を独学で勉強して使えるようになっていた。彼女と言葉を交わす機会なんて、きっと一生来るはずもないのに、だ。だから彼女が歌う曲がいつも、別れを悼む曲だと言うことはわかっていた。

 

 いつもは大抵天使が先に来て歌っていたけれど、その日はぼくが天使より先に花畑に来ていた。

 

 今日はいないのか。そう、少しがっかりしていたぼくの視界に、崖を駆け下りる赤が飛び込んだ。登る所は何度か見ていたから、恐らくそうだろうとは思っていたけれど、実際に見ると度肝を抜かれる。

 はっきり言って、人間業にんげんわざじゃない、と思う。

 だって、ほぼ垂直の切り立った崖を、命綱もなしに駆け下りているのだから、異常さはわかって貰えると思う。高原のヤギならともかく、生身の人間、それも年頃の女の子が、やって良い所業じゃない。危険過ぎる。

 

 勝手に冷や冷やしながら見守っていたぼくに気付く様子もなく、平然と地面に降り立った天使は、いつも歌っている辺りに歩み寄ると膝を突いた。

 

 そうしてそのまま、手が土にまみれるのもいとわず素手で穴掘りを始める。

 

 50 cmほどだろうか。顔にまで土を付けて穴を掘り終えた天使は、ポケットから何かを取り出した。どうやら、何かの機械のパーツみたいだ。穴に機械のパーツを入れた天使が呟く。

 

 「ばいばい、テッド、リッキー。死後の世界があるなら、そこでは幸せに」

 

 ぽたりと、涙が土を濡らした。天使が涙もパーツも隠すように、土を被せる。埋め戻された穴の跡をぽんぽんと叩きながら、歌い始める。

 胸を抉る悲しみのこもった、レクイエム。誰かの死を、誰かとの永遠の別れを、悼む歌。

 すでに泣き濡れた頬を何度も、新たな雫が濡らしていた。

 

 ああ、彼女は死んだ仲間を弔っていたのか。

 ようやく気付いた天使の行動の意味に、歌とは違った意味で胸を抉られた。

 

 今まで、薄々気付きながらも、目を逸らしていた事実。

 人間業とは思えない動作を軽々とやってのける身体能力を持つ彼女は、機械化された戦争奴隷、なのだろう。

 

 戦うためだけに生かされ、戦うこと以外許されない、存在。

 

 ぼくらが安全な場所でぬくぬくと生きている外側で、日々傷付き死んでいく存在。

 

 彼女が泣いているのは、ぼくらが戦争をやめないせいだ。

 彼女を泣かせているのは、ぼくだ。

 あんなに、華奢な腕の、愛らしく、優しい女の子が、戦場に立たされ、仲間の死を見せ付けられ続けているんだ。

 

 不甲斐なさに見ていられなくなって、俯いて顔を覆った。

 それでも美しい歌声は、ぼくの耳に突き刺さる。

 

 ひとりで、何が出来る。

 ぼくひとり動いたって、何も変わらない。

 言い訳をしても、気持ちは晴れなかった。

 だって、ぼくは何ひとつ戦争を止める努力をしていないのだから。

 

 情けないことに涙まで出て来て、泣き声を堪えるのに必死になっていたら、知らぬ間に歌声は消え彼女の姿もなくなっていた。

 

 そのことにほっとしつつも、不安も抱く。

 

 彼女は何度も、ここへ足を運んでいる。つまり、それだけ仲間が死んでいると言うことなのだろう。

 戦場では、常にひとが死んでいる。

 

 彼女の番は、いつだ?

 

 彼女がここへ姿を見せなくなったとき、ぼくは自分を許せるだろうか。

 戦争に疑問を抱いても、止めようと動き出せないぼくは。

 

 天使の消えた桃源郷を、ぼくは暫く呆然と眺めていた。

 

 

 


拙いお話をお読み頂きありがとうございます


一方的に好意を持って観察ってストーk…げふんげふん

本編ではあまり書かれませんが

aちゃんはそれなりの美少女です


続きも読んで頂けると嬉しいです

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