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第二十三話 いのちの代償 2  (三人称視点)

引き続き、エーム視点です


戦闘描写・流血ありです

苦手な方はご注意下さい

 

 

 

 笑いが止まらない。


 衛星映像の中で起こる愉快な光景に、エームは笑いを堪えるのに必死だった。


 あれほど苦戦したはずの機械人形が、火炎放射器ひとつで簡単に活動停止するのだ。

 むしろ今までこの方法を思い付かなかった自分たちに、呆れるくらい簡単な対処法だった。


 ひと所に敵兵を集めて、火を掛ける。それだけで、機械人形どもはオーバーヒートでぶっ壊れてしまう。

 火計なんて、戦争ではよくもちいられているはずの計略だと言うのに、まさか機械に効くとは思わず試していなかったのだ。とんだ盲点、である。


 一部の兵は冷却液とやらを所持していたらしく、忌々しくも飛び上がって逃げた。しかし逃げ遅れた兵や飛行能力を持たない兵どもは策にはまり、トリモチに捕らわれた害獣のように無様に動きを止めている。


 動けなくなった兵を狙って、大火力の攻撃をぶつける。厄介な防御装置を吹き飛ばすような威力を叩き付けろと厳命しただけあって、清々しいほどの高火力だ。


 炎で赤く染まる光景の中に、別の赤を見つけて目を留める。


 ガイスラーの策を台無しにした、あのクソ忌々しい赤毛野郎だ。

 改めて見て、女だと気付いて驚く。機械人形かと思ったが、ただの戦争奴隷なのか?それともあちらには、わざわざ女型の機械人形を造る物好きがいるのか?


 とにかく赤毛のクソアマが盛大に散り果てるさまを眺めてやろうと、神にでもなった気分で高みの見物を決め込む。


 やはり指揮官か何か重要な立場の兵らしい。動けなくなった赤毛女に、苛つくほどに整った顔の男が恐らく冷却液を押し付けた。その上奴らに向けて放たれた攻撃から、身を挺して庇いまでして見せた。


 攻撃の直撃を受けた男は機械人形らしく、弾け飛んだ背中からばらばらと機械のパーツを零れさせている。

 赤毛は無傷らしいが、オーバーヒートが治らないのか立ち上がらない。

 機械人形か身を挺して守るような重要な兵を殺せると、エームはほくそ笑んだ。


 エームが笑っていられたのは、そこまでだった。


 一瞬のノイズののち、視界から赤が消え去った。


 「なっ…」


 わけもわからず画面を睨む。

 あれほど燃え盛っていた炎の全てが、跡形もなく鎮火していた。


 「何が…」


 炎の消えた視界からは、あの赤毛もいなくなっていた。

 慌てて視界の範囲を広げ、赤毛を探す。


 映像にはなぜか度々ノイズが入り込み、酷く見にくかった。


 なかなか見つからない赤毛を探すうち、信じられないことに気付く。


 火の消えた戦場に転がるのは、味方の兵と兵器の残骸。

 生き残った敵兵により、こちらの兵の一方的な虐殺が始まっていた。


 何が起こっているのか、わからない。

 敵の被害は甚大。しかし、このままでは味方は全滅しかねない。あのときの、エルゲブルグ壊滅のように。


 なぜ。


 わけもわからず混乱するエームの目が、ようやく赤毛を見つけ出す。

 見つけた赤毛の前で兵が弾け飛び、そして、


 「衝、撃波…?」


 兵が死んだと思ったときには赤毛は視界から消えていた。ノイズと残像。

 その意味を理解して、背筋が凍る。


 「バケモン…が…」


 火を消したのは、赤毛だ。

 音速を超えて動いた赤毛の起こす衝撃波が、燃え盛る炎を一網打尽にしたのだ。

 防御装置に守られた敵兵は無事で、守られていないこちらの兵と兵器は衝撃波に捻り潰される。


 「そんな、馬鹿な…」


 赤毛は他の兵と比べて明らかに小柄で華奢だ。顔立ちも整っているが幼く、とても丈夫な兵には見えない。それが生身の単体で、衝撃波を起こすような動きをする?

 あり得ない。そもそもそんな兵が、存在すると言う話は…、


 「いや、まさか…」


 否定しかけて、思い出す。

 今のように勝ったはずの戦闘を、たった一兵に覆されたと言うおとぎ話を。


 「ベルヴィストクの、赤鬼…?」


 数年前の大きな会戦で、真っ赤な長髪を振り乱し、たったひとりで十万を超える兵をほふった兵がいたと言う、聞いた誰も信じない嘘臭い逸話。そのときの兵も、衝撃波を起こしていたはずだ。同じ赤毛に、衝撃波。まさか同じ兵だと、言うのか?


 信じられない。だが、もしあの赤毛がベルヴィストクの赤鬼なら、機械人形が身を挺して守るのも頷ける。

 恐らくあの赤毛は、敵国の最終兵器だ。


 「クソヤロウっ!!」


 叫んで机を殴る。台無しだ。敵いっこない。

 音速移動可能とか、どこの戦闘機だ。戦闘機に生身の人間が勝つ?無理に決まっている。


 「勝てる、わけがない…」


 握り締めた拳から、血が滴った。噛み締めた唇から、鉄の臭いが香る。きっと今頃映像の先でも、充満しているであろう臭い。

 もはやなんの策も思い付かず悔しさと無力感にさいなまれ、エームはただ画面の向こうで味方が虐殺されるさまを眺めていた。






拙いお話をお読み頂きありがとうございます


次回、aちゃん視点に戻ります


続きも読んで頂けると嬉しいです

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