第十七話 かわりゆくもの 3
かわりゆくもの 3と4が連続したお話になっています
4は明日投稿予定ですので
途中で話がブチ切れるのが嫌な方は
4が投稿されてから3を読むことをお勧めします
初めての合同訓練は、問題なく終わった。問題があったとすれば、どうにもやはり何かに引っ掛かりを覚えることくらいか。
何が引っ掛かっているのか、わからなくて無性に据わりが悪い。
「ε、と、ξ。オマエらあとで、たこ技師んとこ行け。メンテ受けられるように、連絡しとくから」
「ワカリマシタ」
「イツモアリガトウゴザイマス、a」
汗を拭いながら訓練中気になった隊員に声を掛ける。暑い、通り越して、熱い。滝のように汗を垂れ流す自分の前で、涼しい顔の機械人形たちを少し恨めしく思う。
と言っても涼しいのは顔だけで、機械人形たちだって相応にヒートアップはしているけど。
「ν、ヒートアップが他の隊員より著しい。前から言っているように、もっと効率的な動き方を考えろ。肝心なときにオーバーヒートでも起こされちゃ、堪ったもんじゃない。ん?ああ、ありがとうφ」
φが汗でぐっしょりになったタオルを回収し、代わりに濡れタオルと補給飲料を渡してくれた。
補給飲料を喉に流し込んでから、そんなφとその後ろにいたθに目を向ける。
「φ、オマエとθは関節部の潤滑液、補給しとけ。α、そろそろ膝関節の接合パーツ、交換しろ。μは、右目のレンズ、そこまで傷入ってたらまともに見えないだろ。ったっく、たこ技師の奴メンテ手を抜いてないか…。
オマエらも、少しでも不調や不備があるならちゃんと直しとけよな。判断に迷ったらわたしにでもたこ技師にでも訊け。手抜きすんな。オマエら壊して怒られんの、わたしなんだからな」
同じ隊の面子に訓練中目に付いた不備やら問題点やらを一通り挙げ、ついでに通信機でたこ技師にメンテナンス依頼兼クレームを送り付けると、髪を掻き混ぜた。
さて、第27小隊については言うべきか。
本来ならその辺の管理は隊の指揮官、つまり第27小隊の場合はミミズクが面倒を見るものだけど、今は合同活動中で、わたしは一応ミミズクの指導も命じられている。
ミミズクが隊員に言葉を掛ける様子はなく、仕方ないかと口を開いた。
「GM-500988番…、面倒だな、GM-5と番は略して呼ぶから。00988、11249、14578、15792、εとξと一緒にたこ技師…あれ、あいつ名前なんだったっけ…」
「ギム博士ですか?」
「あ、そうそう。ありがとφ。ギム博士んとこ行ってメンテナンス受けろ。さっき呼んだヤツらな。わたしに言われたって言や、通じるから。で、00989、03552、14441は、股関節のパーツを交換しろ。14441は、腰のパーツもそろそろやばいと思う。07886は左手の握力調整しとけ。右とのバランスが悪過ぎる。えーと、あと、なんだったっけ、あー、15011、15070…と、10536もだ、あと、15085な、早いうちに循環機を交換しとけ、寿命来てる。
それから、これはこの隊全員に言えることだけど、うちの隊に比べて無駄な熱発生が多過ぎる。動きの効率化も改善点だけど、取り敢えず全員もっとこまめに関節部の潤滑油を補給しろ。一秒の差で戦況が動くことだってあるんだ、出来る努力を怠るな。わたしからはそんくらいだな。ミミズク、他に気付いたことはあるか?」
「ナゼ、ソウダト言エルノデスカ?」
「は?」
問われた意図がわからず首を傾げた。
無表情のミミズクを見上げる。
「なぜって、なにが?」
「叱責ノ、根拠ハナンデスカ?」
「別に叱ってるつもりはなかったけど…、主に見た目と駆動音だな。わたしの見立てで原因がわかるヤツには相応の対処法を、わたしじゃ判断付かないヤツにはメンテを勧めてる。ヒートアップは自前のサーモセンサーで細かく判断できるし、油不足は音やちょっとした動きからわかる。
隊員のコンディションに気を配るのも、一応は指揮官の役目だから、気が付いたことは言うようにしてるだけで、叱責と言うより、忠告だな。アンタらが壊れて怒られるのは嫌だから、助言してるだけだ」
生き残るために必死な機械化奴隷と違って、プログラムに従って自己保守するだけの機械人形は、案外不備の見逃しが多い。それを補完するのが機械技師の役目だが、機械技師にだって見落としはある。これをさらに補うのが、指揮官ってわけだ。ああ面倒臭い。
ここまで細かく見なくても怒られないかも知れないし、そもそも上だって戦争奴隷にそこまで期待なんざしてないだろうが、φたちに関しては雑に扱ってどっかの狂人にねちねち言われるのも嫌だし、そもそもたましいを持たない機械人形だろうが、使い潰しはわたしが嫌だ。
だから面倒でも、気を配って不備は指摘する。
たとえ、たこ技師に小姑みたいに細かいとか、愚痴られようとだ。
「ソノヨウナデータハ、与エラレテイマセン」
「そうか。なら、やらなくて良いんじゃないか?合同活動の間、わたしは気付いたことを伝えるけど、アンタは好きにすれば良いよ」
「不必要ナコトヲスルノデスカ?」
ああ、やっぱり何か引っ掛かる。なんだかは、わからないけど。
汗で湿った後ろ髪を掻き混ぜて、隊員たちを見回した。
いくらでも代替の作れる、こころない機械たち。でも、こころない機械だろうが、こころある人間がその限られた時間を使って作り上げたもので。
「わたしは必要ないと思ってないからするんだよ。わたしの一言でなくせた不備で、アンタらが壊れるのは良い気分じゃないからな。でも、アンタが必要ないと思うなら、アンタはやらなくて良いさ」
「シカシ、」
「a、」
言い募ろうとしたミミズクの言葉を遮って、φがわたしを呼んだ。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
自転車操業になりつつあります
連日投稿が無理になったら活報などで一言連絡したいと思っていますが
もし活報なしに投稿が飛んでも
ああ、間に合わなかったんだなと生温い目でスルーして
また投稿された時に読んで頂けると
とても嬉しいです




