第十三話 機械のオヒメサマ
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流血描写はありませんが苦手な方はご注意下さい
国は戦争奴隷が、十分に増えたと判断したらしい。あるいは戦争奴隷なんていなくても,機械人形がいれば構わないと判断したか。
機械人形に与えられていた人命優先の命令が、取り消された。
怪我しても気絶しても、戦闘終了まで放って置かれるようになった、と言うことだ。作戦中、誰にも甘えられなくなったってこと。もともと甘える気なんてなかったけど。
そう。甘える気なんかないし、その必要もない。
ないってのに、ウチのバカドモは。
「放せ!φ!作戦中に邪魔するな!!」
「右腕二負傷シテイマス。最前ニイテハ危険デス」
「この程度、掠り傷じゃないか。少しも支障なんざない」
今日の戦闘は敵陣が近く、一方的に狙撃出来るようなもんじゃなかった。大抵の攻撃は防御装置で捌けるが、当たり所が悪いと防御を突破して負傷する。わたしみたいに最前線にいる奴は特に攻撃が当たり易い上、わたしの長い赤毛は目立つらしく優先的に的にされる。
飛べなくたって、あんたが切るなって言う髪のせいで、目立って的にされてんじゃないか狂人野郎め。
と言うわけでわたしの許には結構な攻撃が飛んで来て、何発かは命中している。が、命中したって防御装置で随分軽減されていて、大した怪我にはならない。
φが示したのはそんな怪我のひとつで、利き腕だがちょっと削げた程度だ。戦闘に支障は一切ない。と言うか、片腕が消えたって支障出ない程度のスペックにはされている。
φを振り切り睨んで黙らせて、わたしは敵陣をしかと見据えた。
最近は、こんなのがしょっちゅうだ。
φだけ命令の取り消しをインプットし忘れられてるんじゃないかと思うほど、わたしにだけ過保護なんだ。しかも、φに釣られて他のヤツらまで。
馬鹿なんじゃないか。
たこ技師に何度も訴えてるのに、たこ技師の奴ちっとも改善させようとしない。
あのたこめ。
追い回されへばり付かれ、不必要な忠告やらおせっかいやらされて。
本当に、うんざりする。嫌気が差す。
ひとりで生き抜いて来たなんて馬鹿げたこと言うつもりはないけど、戦争奴隷になる前だってなった後だって、誰かに頼って生きようなんて思ったこと、なかったのに。
いらいらしながら銃弾をばら撒いていると、φがさり気なく動いてわたしに近付いた。逆サイドには別の機械人形、θが立っていて、左右の機械人形の防御範囲のお陰でわたしの防御装置は二倍同然になっている。
いちいち、こう言う、扱いが、いらつく。
別にわたしは守られなきゃいけないお嬢さまでも、お姫さまでもないのに。
役立たずとでも言われたようで、知らず眉が寄った。
わたしが撒き散らす銃弾は確かに敵を殲滅し、飛来する敵からの攻撃だって、確実に減って来ているのに。
慢心を持つのは駄目にしろ、危険度の高い状態状況じゃないのは明らかだ。イレギュラーがなければ一時間もせずこちらの勝利で戦闘が終結するはず。上もそれを見越してるのか、直後に次の作戦を用意してるくらいだし。
わたしはオジョーサマじゃないし、手助けの必要な状況じゃない。
過度な手助けは、手助けじゃなくて相手への愚弄だ。
だって。
役に立たないものは、必要ない。必要ないものは、存在が許されない。
それが、わたしの育った世界の条理だった。
役に立たなければ食い扶持が稼げず、喰うものがないことは死に直結するんだから。
役立たず扱いはわたしにとって、死ねと言われたようなもんなんだ。
上手く立ち回れないものは、あまり役に立たない。だから、上手く立ち回れない浮浪児は早死にする。大人たちや他の浮浪児たちの、当て所ない鬱屈の放出先として利用されて。
浮浪児として生きた最後の日、わたしは上手く立ち回らなかった。だから、死ぬはずだった。
けれど、なんの因果かここにいる。上手く立ち回っているかは知らないけど、生き残っている。
でも、誰かのお情けを受けて、生き残ろうなんて思わない。
守られるだけのオヒメサマになるなんて、まっぴらだ。
わたしが役立たずだと言うのなら、守ったりせずとっとと殺せば良い。
放たれた弾丸がまた、立ち回りの下手だった兵の息の根を止めた。
…結局その後は一発の攻撃も受けることなく、その戦闘は終了する。
戦闘が終了した途端わたしはφに引っ捕えられ、猛スピードでたこ技師の許へと担ぎ込まれた。
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