第十一話 異変
残酷な描写あり
苦手な方はご注意下さい
…なんだか、φの様子がおかしい気がする。
いつからだかわからないが、どうにもおかしな行動の増えたφを、どうにかしなければいけないだろうかとわたしは首を捻った。
他に捨て駒に出来る人間の兵がいないから、と言う理由だが、前線で戦わされる小隊に限り、戦争奴隷だろうが指揮官に任命される。そう言う指揮官にさせられるのは多少なりとも経験を積んだ兵で、戦争奴隷としてなかなかにしぶとく生きているわたしも、そんな七面倒臭い肩書を押し付けられている。わたしは帝国陸軍第4連隊所属第18小隊-大抵は縮めて第18小隊と呼ばれる-の指揮官で、同じ小隊の兵に気を配りコンディションを管理する義務がある。
と言っても第18小隊はわたし含めて総勢28人しか兵がいないし、内27体は機械人形でコンディション調整なんて機械技師が全部やってくれるのだが。
でもまあ一応は気を配らないといけないわけで、気を配った結果気付いたφの異常に頭を抱える羽目になったと言うことだ。ああ面倒臭い。
異常と言っても作戦や戦闘に大きな支障を来すようなもんじゃない。もんじゃないんだけど…。
とにかくなぜか、φがやたらとわたしを気にしているんだ。暇があれば、わたしを見ている。作戦中や、訓練中も常にわたしのそばをキープし、隙あらば見ている。見ている。気味が悪い。
気付いた当初はわたしの自意識過剰かと流してたけども、どうにもやはり見られているんだ。しかも最近、φにつられてなのか他の隊員たちまでわたしの観察をし始めた。やめてくれ。
作戦や戦闘に支障がないとは言っても、標本の虫みたいにじろじろ観察されては、流石にうざったい。本来ならひとに興味なんて持たないはずの機械人形だから、何かバグでもあるのかも知れないし、のちのち責任を問われても業腹だ。
困って対応を決めあぐねていた時、また顔見知りの戦争奴隷が死んだ。それも、数人。
わたしは不参加の作戦だったから、死にざまは見ていない。けど聞いた限りじゃ、相手国の新兵器に対応してない兵ばかり行かせて、対策も講じてなかったそうだから、明らかな作戦ミスだ。機械人形は勿論、戦争奴隷だって、命令されれば逆らえない。口ごたえすれば殺される。だから、作戦ミスは完全に上の責任だけど、上のミスなら奴隷がいくら死んだって、この国じゃ咎められたりしない。ミスしたのが奴隷で被害にあったのが機械人形なら、間違いなくミスした奴隷は殺されるのにだ。
…奴隷とはいえ仮にもひとのいのちを何とも思わないまぬけばかり上にいるから、戦争がだらだら長引いて終わらないんじゃないだろうか。
わたしは夜中に基地を抜け出して、彼らが死んだ戦場へと駆けた。
作戦ミスで惨敗潰走だ。死んだ兵を回収する余裕なんざない。彼らの死骸は野に晒され、ハイエナのような戦場荒らしに無残に喰いものにされる。
その前に、何か、少しでも回収出来ないか。
逸る気持ちが身体を焦らせ、強化された身体の息が上がるほどの速度で、脇目も振らずにわたしは疾駆していた。
フクロウのように飛べない身体が、もどかしくて仕方なかった。
辿り着いた戦場跡は見慣れた地獄絵図を呈していた。
すでに荒らされたあとなのか、転がる機械の姿は少なく、転がる死体はどれも原形を留めないほどに肉を抉り取られていた。機械人形も機械化奴隷のパーツも兵士が持つ武器も、集めれば金になる。戦場荒らしの目的はそうした金目の機材だ。
最早肉塊と言った方が的確なほども荒れ果てた死骸の山から、残っているかもわからない友を見付けられる可能性の低さに、悔し涙が零れた。せめて勝ち戦だったならば、荒らされず死体が回収されたはずなのに。そもそも十分な対策さえ講じれば、被害などなく勝てたであろう戦闘なのに。
なぜ。
なぜわたしはこの戦場に、彼らとともに立たなかったのか。
乱れきった息を整え、血が滴るほどに歯を食い縛って血肉の海に歩み出そうとしたその時だった、
「何ヲ、シテイルノデスカ」
わたしの背に、思わぬ声が投げ掛けられたのは。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
比較対象がしょぼ過ぎるのですが、さり気なく連日更新自己記録更新中です
人間やれば出来るものですね
一話の文字数が少ない上、ほぼ連載前の書き貯めのお陰ですが(^^;)
やれるところまで日刊続けますので
続きも読んで頂けると嬉しいです




