第一話 奴隷と機械と人間と
円満な終わり方は迎えませんので
ハッピーエンド希望の方はUターンお願いします
開始早々ですが戦闘シーンです
生々しい表現はないですが流血があります
苦手な方はご注意下さい
試してるんだ、奴隷がどれだけ使えるか、機械の代わりになるのか。
だから、こんなこと、しちゃいけない。
いけないんだ。
でも、
「止めろぉっっ!!」
何かに突き動かされる身体を止める術を、わたしは知らなかった。
命令違反への警告も無視して、味方の弾道へ飛び込む。
「っ…く」
刺さるほどの衝撃。いや、何発かは防御装置を貫通して実際身体に突き刺さってるだろう。それなりに高品質の防御装置だってのに、つくづく狂った威力だ。痛みと衝撃で折れそうになる膝を叱咤して、わたしはどうにか目を開いた。
警告のせいで明滅する視界に庇った相手を探す。
無事だ。
「逃げな」
唖然とした顔で見上げて来る五人分の瞳に向けて言う。
どの顔もわたしより、五つほど幼いくらいだろうか。まだ、ほんの子供だ。
あっちはこんな子供使わなきゃいけないくらい逼迫してるのか、こっちよりいかれてないのか。
今はっきりとわかるのは、こんなガキじゃ生き残れないってことだけだ。
「あんたたちじゃ敵わない。早く逃げな」
叱責に近い声を出せば、やっと表情が生まれる。浮かんだのは、戸惑いと反発。
目の前の彼らとは敵同士だ。当然と言える反応だが、今は時間がない。
「わたしがここにいる限りヤツらは攻撃出来ない。だから、今のうちに行きな」
命令なしにヤツらは味方を攻撃出来ない。
幸いにもこの隊の指揮官はわたしで、だからヤツらはわたしを攻撃出来ない。わたし以外にヤツらに命令出来る人間が、現状に気付くまでは、だけど。と言う訳で、飛び出したは良いが残念ながらわたしが盾になれる時間は限られている。上が気付くかわたしが耐えきれなくなるか。
どっちにしろ、大した時間じゃない。
「でも…」
反発するのは知らないからだ。
彼らの国の最高の兵器をもってしても打ち破れない装甲に、強固な合成樹脂の盾ですら濡れた紙みたいに簡単に破ってしまう電磁砲。ひとと変わらぬ外見のヤツらが持つ、凶悪なポテンシャルを。
「あんたたち程度で敵うなんて馬鹿げた妄想やめな。敵いっこないんだよ、ヤツらは人間じゃないんだから。今のあんたたちは、素手で戦闘機に立ち向かってるようなもんなんだよ」
吐き捨てた言葉になおも反発しようとした口を殺気で黙らせた。
わたし如きの殺気で黙る。その程度の存在。兵と言うのも躊躇われる、使い棄ての駒。ここで身を挺して守っても、きっと三日後には死んでいる。
でも、飛び出して助けちまったんだから、喩え数日、あるいは数時間に満たなくとも、生き長らえさせたい。
びくつく子供らの尻を叩くために、罵声に近い怒鳴りを投げ掛けた。
「あんたたちじゃわたしにだって敵やしない。死にたくないなら、良いからとっとと行け!!!」
だんっ
凄まじい足音と共に睨み付ければ、ようやく彼らの足が動き出した。それはわたしの言葉を理解したと言うより、わたしに対する恐怖に突き動かされたんだろう。脱兎の如く逃げる彼らは、敵に背を向けることの意味も忘れているに違いない。
遅い。遅い。
わかってる。戦争奴隷にだって質はある。あれは、人間と変わらない質の戦争奴隷。前時代の言い方を持ち出すならば所謂、少年兵と言うやつだ。
機械並に強化されたわたしとでも差は歴然。機械との能力差など言うまでもない。わたしと言う盾がなければ、一瞬で蜂の巣か消し炭だ。予測ではなく確定した未来として、断言出来る。
永遠にすら感じる時間ののち、ようやく感知から消えた彼らを確認して、わたしはくずおれた。
ぱしゃん
自分の血溜りが跳ねて音を立てる。必死なあまり気付いていなかったが、思った以上に血が流れたようだ。警告の明滅がなかったとしても、間違いなく視界は崩れて明滅しているだろう。
このまま、死ねたら良いのに。
どくどくと脈打つ身体を感じながら、わたしはその思考を最後に意識を手放した。
拙いお話をお読み頂きありがとうございました
次話は明日投稿予定ですので
続きも読んで頂けると嬉しいです