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ゲームの世界で新しい人生?  作者: 冬生 羚那
おいでませ異世界?
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四話目

 どたばたした冒険者ギルドから一転、とっても静かなジルの家で本を読み漁ってます。

 街中から外れた所にあるジルの家はちょっと……いや、結構大きいんじゃないかと思う。

 屋敷と言ってもいい。

 なのにここは本宅じゃないらしい。

 別荘みたいなものなんだって。

 落ち着いたらここに永住する予定らしいけど……。

 とりあえずジルはお金持ちなんだなと自己完結しておこう。

 この屋敷にはメイドさんが一人、小間使い君が一人と住む人は少ない。

 ジルがいない時は二人でこの家を守っているらしい。

 結界があるから家の維持管理が主な仕事だって言ってたけど、それにしても寂しい。


「ユウナ様ー、お飲み物ここに置いておきますねー」

「あ、有難うございます」


 あたしは今本に埋もれています。

 ジルはなんと、とても有名な魔術師らしい。

 ギルドで変人って言われてたけど、あんまり他人に興味が沸かなくて引きこもったりしてるせいってメイドさんが言ってた。

 でも、メイドさんと小間使い君はジルが拾ったんだって。

 ここで一つ、大事なことを発表しよう。

 メイドさんにも小間使い君にも耳と尻尾が生えているのである。

 そう、耳と尻尾。

 耳と尻尾だよ!!

 この屋敷に来る前に本が読みたいなんて言わなきゃ良かった……。

 もふもふ触れない。

 ぺいっとこの部屋に放り込まれて碌に話しも出来なかった。

 ちくしょう。

 早くもふもふしたい。

 もふもふさせてくれるかな……。


「調べたいことあるんじゃなかったの?」

「ふぉ!?」


 急に聞こえた声にびくっと体が揺れてしまった。

 いつの間にかジルがいる。

 ローブ姿じゃなくて普通にシャツとズボン姿になってて更にビックリ。

 ……イケメンって何着ててもイケメンなんだな。


「何を調べに来たの」

「ああ、そうだった」


 ついついもふもふに意識を奪われてたけど、それは後にしないと。

 魔術師らしくここには色んな魔術の本があった。


「初心者用の魔術の本が見たくて」

「ああ、それならこっちにあるよ」


 ジルは奥の本棚に向かうと一冊の本を手に戻って来た。


「ありがとう」


 渡される本に礼を言ってメイドさんが飲み物を置いていったテーブルに向かう。

 ソファーに腰掛けて本を捲る。

 うん、読める。

 魔術を使うには自分に魔力があるか知らないといけないけれど、チート設定だから大丈夫だろうと思ってる。

 だから魔術についてだけ調べに来たのだ。

 この世界では魔法は身近にあるものらしい。

 魔法陣を組み込んだ道具は生活の一部になっていて、この部屋の灯りは光魔法を組み込んだ石を使っているとのこと。

 魔法陣を組み込んだ道具を魔導具(マジックアイテム)というらしい。

 台所だと竈に火を起こす魔導具、水を出す魔導具がある。

 だが魔導具に魔力を込めないと使えない為魔力を持たない人はお金を払っているらしい。

 その為魔導具を使う家庭はどちらかといえば裕福な家庭になるとか。

 まあ、そこはいっか。

 魔術を使うには自分の中にある魔力を制御して、魔術を創り上げて、放つ。

 基本的に三段階あるらしい。

 想像力と創造力が魔術には必要なようだ。

 想像力なら任しとけ!

 問題は創造力の方だ。

 自分の中で創り上げるとはどういうことだろう。


「どうしたの?」

「は、へ!?」


 聞こえた声に顔を上げたらすぐそこにイケメンがいてビックリした。

 隣に座ってたジルが顔を寄せて一緒に本を見ていたらしいのだが、その近さでこっちを見てきたもんだから近い。

 ビックリして思わず仰け反ってしまった。


「何」

「ご、ごめ……近かったからビックリした……」


 イケメンは心臓に悪い。

 口から心臓出ちゃうよ。

 こほん、と咳を一つして、ちょっとジルとの距離を取る。

 本を間に置いて指を指す。


「この創造力がちょっとどんなものかな、って思って」

「……体の中で魔力を練り上げるんだよ」

「だから、それがわかんないんだって」


 ちょっとむっとするジルをむっと睨み付ける。

 何でそんな顔されなきゃいけないんだ。


「こうして……魔力を練り上げて、放つ」


 ジルは人差し指を立てるとその指に光を灯す。

 コイツ感覚派だ。

 理論で教えることが出来ないんじゃあ盗むしかない。

 あ、盗むってあれよ、別に物理的な話じゃないからね?


「もう一回やって!」

「だから、こうやって……」


 あたしはジルが魔術を使う姿を観察する。

 ジルの魔力の動きを。

 ぶっちゃけあたしも頭がいい訳じゃないから見せてくれた方が助かる。

 真似すればいいから。


「もう一回」


 ジルの魔力の動きをなぞる様に自分の魔力を練り上げる。

 練り上げて、放つ。


「……」

「……」


 光った。

 あたしが。

 後光が射す神様的な姿を想像してほしい。

 あたしの全身が光った。


「……ぶふっ」

「ちょ、何で笑うの!?」


 ジルに笑われて顔が熱くなる。

 光も揺れて消えてしまった。

 恥ずかしい!


「まさか(ライトニング)で全身光らせるなんて」

「こ、これはちょっとあれなだけで失敗じゃないし!」

「ぶふ」

「も、笑うな!」


 顔を掌で覆って蹲るようにして笑うジルの背中をべしべし叩いてやる。

 くそ、このやろう。

 放つってとこは失敗したけど練り上げるとこは出来たからまあ良しとしよう。

 火とかも一回見せてもらう方が安心かもしれない。

 攻撃は失敗した時が怖いからな。


「……いつまで笑ってんのよ!」

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