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ゲームの世界で新しい人生?  作者: 冬生 羚那
行くぞ街の外!
18/26

十七話目

 疲れの抜けきらないまま朝になってました、ユウナです。

 ぼーっとしながら朝食を食べてます。

 あ、宿のおねーさんにジルが暫く戻らないことを伝えると笑顔で返された。

 不思議に思っていると昨日のセシルさんが伝えていたらしい。

 ついでに今までも何回かあったとか。

 どうしてジルが王都に家を持ってないのか不思議だけど……まあ、何か考えでもあるんだろうな。


 美味しい朝食を食べてちょっと元気になった所で部屋へと戻る。

 昨日はばたばたし過ぎて色々確認出来なかったから。

 何がってポシェットの中身ね。

 創造主宛ての手紙がどうなったのか見るのを忘れてたんです。

 それどころじゃなかったけどね。

 ベッドに腰掛けて座れば、隣にタータが丸くなった。

 癒されるわぁ……。

 もうこのまま寝てたいぐらい。

 …………でもある程度やらないと困るのはあたしだもんね。

 膝にポシェットを乗せて中身を確認してみる。

 ウェルセスで買った色々と、ゴブリンと狼……売るの忘れてた。

 後で行こう。

『創造主宛ての手紙』が『ユウナ宛ての手紙』に変わってた。

 おお、ちゃんと届いたみたい。

 画面をタップしてポシェットから手紙を引き抜く。

 真っ白な便箋。

 表に『ユウナちゃんへ♡』って書いてある。

 ……ハートはいらぬ。

 なんていうか創造主って……チャラい。

 神様ってさ、なんていうかイメージがね、なんていうか……幻想的だったり威厳があったりとかさ……。

 言いたい事わかる?

 チャラい神様って少ない気がしなくもないんだけど、どう思いますか。

 ……いや、ここで疲れるわけにはいかない。

 きっとまだ疲れるはずだから……。

 いざ、読むぞ!




 意を決して手紙の内容に目を通したけれど……疲れた……。

 睡眠不足の今、このテンションついてけないわぁ……。

 ぐったりとベッドに寝転がり目を閉じる。

 とりあえずあたしが聞いたことには返事くれたし、何だかんだ言って情報もちゃんとくれるし、いい神様なんだろうけど……本当テンションにだけついてけない。

 引きこもってたせいで体力減ったのかもしれない。

 うん、きっとそうだね。

 そういうことにしとこう。

 よし、商業ギルド行ってみよう。

 思い立ったら動くべし。

 ベッドから下りるとタータを肩に乗せて宿を出た。


 道ゆく人に聞きながら歩くこと十数分。

 冒険者ギルド並みにでっかい建物がそこにありました。

 人が出入りする入口とは別に、馬車を何台も停められるスペースと大きな搬入口がある。

 今も数台の馬車に荷物を積んだり降ろしたりしているみたいで騒がしい。

 活気あるなぁ。

 野次馬みたいになってるけど、気になってちらちらと搬入口の辺りを見ていると見える見える……みみ!耳!

 獣人さんですよ!­

 もふもふぅ!

 ­

 あたしが……というより、リベラール・オンラインでは『獣人』というのは例えを挙げると二足歩行している喋る獣を指す。

 ようするに、サバンナや動物園に居るライオンや虎が二足歩行して人語を話すのだ。

 ついでに荷物も持てるし剣や槍も握れる。

 見た目は獣っぽい。

 人間らしい姿にけもみみや尻尾が生えているだけだと『獣人』ではなく『半獣人』という括りになる。

 見た目は人間っぽい。


 閑話休題……。


 もふもふに心引かれながらもそれを振り切って商業ギルドに足を踏み入れる。

 ……冒険者ギルド程汗くさくない!

 気にするところはそこじゃなかったか。

 受け付けへ向かうと愛想良く受け答えしているお姉さんが視界に入った。

 数人が並ぶ列の最後尾に並んで順番を待つ。

 大して待つこともなくあたしの順番が来た。


「おはようございます。本日はどういったご用件しょうか?」

「えっとですねー、商業ギルドに入りたいんですけど」

「冒険者様でしたらカードのご提示をお願い致します」

「あ、はい」


 言われるままカードを取り出してお姉さんに差し出す。

 受け付け台にある浮かんだ水晶の下にカードを置くとその水晶を見てお姉さんが頷いてる。

 どんな風に情報出てるのか気になるなぁ。


「はい、ユウナさんですね。商業ギルドに所属されたいとのお話でしたが、まずクエストを受けていただきます」

「はい」

「荷物を届けることがクエストになっています。搬入口向かって左側にある事務所にいるツェッペさんの所へ行ってください。全てが終わりましたらまたこちらにお越しくださいね」

「はーい」


 カードを受け取りギルドの入口を出て搬入口の方へ向かう。

 入れ代わり立ち代わり人や荷物が出入りしてるなー。

 指示された事務所の扉の前に立ち、ノックしてみる。

 ……返事がない。

 もう一度ノックしてみるがやっぱり返事がない。


「すいませーん、失礼しまーす」


 扉をそっと開けて中を覗き見ればコの字に並んだ机に積み上げられた荷物、机に向かって書き物をしている人達の姿が目に入る。

 1番手前にいた人があたしに気付き近寄ってくる。


「はいはい、どうされましたかー」

「あの、ギルド加入クエスト受けにツェッペさんの所に行くように言われたんですけど」

「ああ、じゃああの1番奥にいる人だよー」


 指差して教えてくれたその人に頭を下げてお礼を言う。

 そしてツェッペさんの元へ向かう。

 ツェッペさんはどこか草臥れた風貌のおじさんだった。


「おー、ギルド加入希望者かー」

「はい。クエストを受けるように言われました」

「んじゃあちょっと待ってくれなー」


 ツェッペさんはそう言うと書類をパラパラと捲り3枚の紙をあたしに渡してきた。


「その紙に渡す相手が書いてある。そんで受領書にもなってる。荷物を渡したらサインを貰って来い。ダリア、荷物を」

「はぁーい」


 名前を呼ばれた人が立ち上がったのを見てツェッペさんに頭を下げてから向かう。

 ダリアさんに紙に書かれた名前と荷物の中身を告げると手早く用意してくれた。

 流石慣れてるんだなぁ、って感心する速さだった。


「じゃ、頑張っていってらっしゃい」

「あ、はい。いってきます」


 荷物をポシェットにこそっとしまうと事務所から外へ出る。

 配達か……お使いクエストだな。

 頑張ろう。


 タータを肩に乗せたまま道を歩く。

 紙を見て大体の区画を確認し、更に道行く人に聞きながら配達を済ませてゆく。

 南西部の端から北東部まで歩き、最後に商業ギルド近くにいる人に配達をする。

 3人にサインもしっかり貰ったしこれでクエスト完了。

 後は報告だけ。

 街中を歩いているとタータが物珍しそうにきょろきょろとしてるのが可愛かった。

 ツェッペさんに報告を終えて1枚の紙を受け取り、ギルドの受け付けに戻る。

 お姉さんがいたからその受け付けの列へと並ぶ。


「お願いしまーす」


 お姉さんにツェッペさんから受け取った紙とギルドカードを差し出す。


「はい、クエストお疲れ様でした。では少々お待ち下さい」


 水晶の下にカードを置いて暫く待つとほわーんと淡く光り、光が収まれば完了だ。

 返されたカードを見れば商業ランクFと記載されていた。


「ではこちらの書類にギルド規定などが記載されておりますので、ご帰宅後しっかり目を通してください」


 そう言って渡された紙の束は結構分厚い。

 細かく書いてあるのかな……。

 読むのめんどくさそう……。

 ポシェットに紙の束をしまいお姉さんに向き直る。


「あの、王都に家を買おうと思ったらいくらぐらいしますか?」

「立地条件や使用用途等で金額が変わってきますが、どういった物件をお探しですか?」

「動物を飼える普通の……いや、防音もある方がいいかな。要望はそれぐらいなんですけど、値段だけ知っておきたいと思って……」

「では担当の者と代わりますので、あちらの席でお待ち下さい」


 お姉さんに指された席に座ってタータを撫でくりまわして待つこと数分。

 担当さんは若いお兄さんに代わっていた。


「物件担当のクインスと申します。宜しくお願いしますね」

「ユウナです、宜しくお願いします」


 物腰の柔らかそうなお兄さんだ。

 丸い眼鏡を掛けてて笑顔が可愛い。

 クインスさんに簡単な事情説明をすれば頷きながら紙にペンを滑らせる。

 更に話しを聞いて質問を交えながら要点を纏めて紙に書くとか、あたしからしたら職人技だ。

 更に物件が書かれてるであろうどっさりとした分厚い束を捲りめぼしい物件を選り分けている。

 脳みそ3つぐらいあるんじゃないの、この人。

 同時進行って難しいのに、凄いよね。

 あたしの説明やクインスさんが引き出してくれた情報から、妥当な物件をいくつか見繕ってくれた。


「ユウナさんのご希望に合わせますとこれらの物件がいいかと思われます」


 差し出されたのは数枚の紙。

 内容を読んで1枚ずつ捲る。


「…………?……??」


 最後の1枚を読んでいて物凄く違和感を感じて首を傾げた。

 何故なら内容にメイドだとか家政婦を雇ってもいいだとかお貴族様か、っていう内容が書いてあったからだ。

 こんなのあたしの説明にないものなんですけど。

 お兄さんからの提案物件?

 にしても何で?

 防音もあるし、防犯設備もしっかりしてる……っていうか高級住宅街にある物件なんですけど。

 これなんの掘り出し物?

 まさか幽霊が出るとか!?

 ………………だがしかし、最後に追記があった。


 追記:クラーク様御邸宅


 おいいいいい!?

 掘り出し物とかじゃないじゃないか!!

 ただの間借り!!


「ああ、そちらはクラーク様がユウナさんにとのことでご用意されていらっしゃいまして」

「何してんのあの女神様」


 お兄さんが笑顔を崩さず言い放った。

 うん……遠い目しちゃった……。

 ていうか、ていうか…………いや、もういいや。


 見なかったことにしよう。


「そちらですと金額の発生はない、とのことです」

「そういう問題じゃないよね」


 思わず真顔になっちゃった。

 昨日お断りしたっていうの。

 とりあえず金額だけ確認して紙を全部お兄さんに返す。

 くすくすと笑いながら紙を受け取るお兄さんに恨めしい視線を送りそうになってしまった。

 お兄さん関係ないのにね。

 八つ当たりいくない。


「とりあえず金額的にはこんなものなんですね?」

「そうですね、今の時点ではそうなります。また違う物件のご紹介も出来るかもしれませんが」

「まあ、あたしも急いでいるわけではないんで、今の所金額がわかればそれでいいんです」

「はい」

「じゃあまた来ます」

「はい、またのお越しをお待ちしておりますね」


 商業ギルドを出て頭をぽりぽりと掻く。

 女神様もなに(あたし)で遊んでるんだか。

 まあ、家を買うのに必要な金額がある程度わかったからいっか。


 リベラール・オンラインでの通貨は『リベル』だ。

 1リベル=100円だと思えばいい。

 家を買おうと思うと安くて7、80万リベル。

 高いとまあ、上限はないかな。

 といってもそんな高い家はいらないから、大体100万リベルを目処に考えれば家は買えるだろう。

 だけど、今見た物件を考えるともう少しお金はある方がいいかな、とも思う。

 家買っても家具とかあるとは限らないしね。

 今ある物件が無くなってる可能性もあるし。

 よし、お金貯めよう。

 金策の定番はレアアイテム狩りだよね。

 冒険者ギルド行くか。


 冒険者ギルドには今日も色んな人が出入りしていた。

 商業ギルドに比べてむさい。


「さてさて、どこへ行くかねー」


 Fランク用の掲示板から順番に依頼書を見ていく。

 あ、狼とゴブリンの提出があるなー。

 これ受けて準備資金にしよう。

 近くでの討伐クエストはあるけれど……ジルの言ってた廃鉱に行きたいし……。

 まあ提出期限が無ければ出来るかな。

 色々な依頼書を確認しているとランクDに廃鉱関連があった。

 廃鉱でのアイテム収集か。

 でもあたしのランクまだFだしなぁ。

 ランクアップってどうするんだっけ。

 確か…………回数こなせばいいんだっけ。

 Eランクの依頼を受けて、レベル上げがてら廃鉱見に行くって感じにしようかな。

 アイテムは自分用にいくつあってもいいしね。

 よし、そうしよう。


 狼とゴブリンの提出クエストを受けて、ポシェットからそれらを取り出して提出。

 そしてEランクの討伐クエストと収集クエストを受けてギルドを後にする。

 宿に戻り昼食を食べてから食べ物屋さんを巡る。

 外で料理するのもありかなーと思ったけど、料理道具を買っても解体がネックで敬遠しちゃってる。

 これもいずれ考えないとな。

 何日間かの食料を買い込み準備は万端。

 これで明日から暫く王都に戻って来れないな。

 あ、ジルどうしよう。

 あ、宿もどうしよう。

 ジルどこにいるんだろう。

 連絡手段がないって不便!

 電話とメールがどれだけ楽なことか!

 うーん……会いに行くか。

 でもどこに行けばいいかな?


 とりあえず近くの警備隊詰め所へと向かう。

 ジルがどこにいるか情報がないかなと思って来たんだけど……曖昧だった。


「多分図書館じゃないかと思うんだが……どうだろうな」

「あれ?今王城にいるんじゃなかったか?」

「王城だっけか?」

「数日前にそう聞いたけどなぁ」

「でもあの人が大人しく王城にいるか?」

「そう言われると……いなさそうだよなぁ」

「となると今どこにいるんだろうなぁ?」


 それあたしが聞いてるんですけど。

 警備隊の人達があーだこーだ言ってたけど、結局どこにいるやら。

 うーん、王城か……。

 そう言えばセシルさんが王命でジル戻れないとか言ってたっけ。

 王城……入れる気がしない。


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