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ゲームの世界で新しい人生?  作者: 冬生 羚那
行くぞ街の外!
16/26

十六話目

前話(十五話目)修正

最後の方にある1文

目の色と髪の色が違う→目の色と格好が違う

※矛盾点の修正になります。

 まさか目の前の人があたしが作ったキャラだったと思い当たるわけがない。

 色違いな上、着てるものもあたしが集めたものとは違うから、あたしが鈍いわけじゃない、多分、うん。

 ていうかまさかの自キャラがオネエ。

 あたしがいるのに自キャラが目の前にいるのも不思議な感じ。


「……ねぇ、大丈夫?」

「はっ、大丈夫、大丈夫です!知り合いと同じ名前だったからびっくりしちゃって……はは、あははー」


 我に返ったあたしは心配そうにあたしを見つめる女神様に慌てて取り繕う。

 胡乱げな目で見てくるも深く追求せずに女神様は納得してくれた。

 ありがとーありがとー!

 説明出来ないもんね!

 こんな出会いがあるなんて……これって運命?

 トキメク所?

 …………いや、女神様にトキメクとか難しいわ。

 拝みはするけど。

 あれでも自分が作ったキャラを女神様扱いとかあたし痛い?

 …………い、イケメンオネエさんだから仕方が無いよね!?

 そういうことにしといてくれる!?

 てかあたしは誰に許可取ってるの!?

 あたしか!?

 許す!(※裏声)


「また何処に意識飛ばしてんの?」

「はへっ!?飛んでないよ飛んでない」


 ぶるぶると首を横に振るけど女神様は苦笑いを浮かべてる。

 いけない、話の最中に失礼だったよね。

 自重しよう脳みそ。


 とりあえずイコールで考えるのはやめよう。

 だって目の前にいるんだから、『あたし』じゃない。

 ……だがしかし創造主には答えてもらうからな!


「クラークさんはもしかして色んな所に行くんですか?」

「ええ。それが仕事だもの」


 話を切り替えてそう聞けばウフフと笑って答えてくれた。

 高レベルの冒険者でもある女神様は、どうやらこの王国での位置も高いらしい。

 仕事内容は悪いコを捕まえると説明されたけど、街の警備隊に指示を出したり魔物を退治したりと多岐に渡るものみたいだ。

 まるで国際警察官みたいだね。

 格好良い。

 ただ、そのせいか自由がないとかでちょっと愚痴られた。

 大変そうだ……。

 人に指示を出すのも頭を使うし、自分のしたいように、では済まないことばかり。

 あたしには絶対出来ないわ。


「アンタが使えるならアタシも楽出来そうなのにねぇ」

「女神……クラークさんが困ってる時にお手伝いするのは問題ないですけどねー」

「アンタ、アタシをちょくちょく女神って呼ぶわね……」

「だって女神様みたいなんですもんー」

「ふふ、悪い気はしないけれどねん」


 ウィンク付きで微笑まれてちょっとドキドキ。

 イケメンっていいよね。

 食事も進むし会話も弾む。

 踏み込んだ話はしないけどね。

 食後のデザートに頬を緩ませていると誰かがあたし達に近付いてきた。

 黒いローブを着た男の人だ。


「あなたがユウナさんですか?」


 座ったままその人を見上げれば、なんて言うか、冷たい目で見下ろされてた。


「……どちらさま?」


 初対面だよね、この人。

 何でそんな目で見られてるんだ?


「ジルフォード様からの伝言です。所用の為暫く戻らないとのことです」


 あれー?

 あたしどちらさまって聞いたのに名乗られなかったよ。

 聞き方がまずかった?

 その割には用事は伝えたとばかりの表情。

 ……なんだこいつ。


「へえ……ジルが所用ねぇ?」

「……なにか?」


 含みを持たせてそう言いながらじっと男の人を下から見上げる。

 すると片眉をぴくりと動かしてこちらを見下ろされた。

 声のトーンは更に低く、訝しげだ。


「所用ってなんですか?」

「お答えする必要はないかと」

「名乗りもしない、所用について説明も出来ない、と?」

「お答えする必要はないかと」


 一触即発とまではいかないけれど、あたしとその男の人の間には冷たい空気が漂っているのが自分でもわかる。

 女神様は口を挟まないけれど、あたし達のやり取りを聞きながらお酒を飲んでる。

 タータは足元で男の人に向かって威嚇中だ。

 周りにいる人も静かにこちらをチラ見してる。

 見せ物じゃないですよー。

 気にしないけど。


「じゃああなたの言うことは信用出来ませんね」

「は?」

「女神様、連れを迎えに行こうかと思うんですが」


 あたしの言葉に呆気に取られている男の人を無視して女神様にそう言えば、くすりと笑われた。

 使えるものは女神様でも使うよ。

 多分女神様はあたしの考えてることわかってるんじゃないかな。

 目が楽しそう。

 そんな女神様を見てその男の人は目を丸くした。

 その目が『何でこの人がこんなところに』って言ってる。

 教えなーい。


「そうねぇ、連れってジルフォードでしょ。行くところはいくつか思い当たるわよ」

「有名人っぽいですしね、ジル。足取りを追えばすぐわかりますよね」

「私の言葉が信じられないと!?」

「当然でしょう。あたしはあなたを知りません。なのにあなたの言葉を鵜呑みにしろと?」


 怒った男の人に平然とそう言えば、男の人は言葉に詰まった。

 ホントなんだこいつ。

 何をもって信用しろというのかさっぱりわかんないんですけど。

 手紙とかあるならまだしも。


「……私はジルフォード様の部下のセシル。所用については王の命令としか知らん」


 物凄く不貞腐れた顔でそう言われる。

 最初っからそう言えばいいんですよ。

 多分これも女神様が居るから言ったんだろうけどね。


「そうですか、わかりました」


 そう言って再びデザートを食べ出すあたしと笑いながらお酒を飲む女神様に、男の人──セシルさん──はきょとんとする。


「……それだけか?」

「あなたの名前とジルの用事がわかりましたからね。それ以上言うことはありませんけど?」


 名前に至っては観察眼で知っていたからね。

 それにジルが誘拐されるとかは想像がつかない。

 ジルに言う事聞かせるなら、狙われるのはあたしの方だと勝手に思ってるだけかもしれないけれど。

 名前の知られた強い人より、右も左もわかってなさそうな女を狙う方が成功する確率高いよね。

 まあ、これらは最悪の状況になったら、っていう話だから早々ないだろうけど。


 それに女神様がにやにやしながらあたし達のやり取りを見てた。

 多分この人を知ってるから笑って見てたんだと思う。

 そこであたしがどんな対応をするかも見てたのかもしれない。

 ぶっちゃけて言えば、今あたしが信頼出来るのはジルとウェルセスに居るキャシーさんとキール君の3人だけだ。

 ほいほいと他人の言う事鵜呑みに出来ませんよねー。

 いくらセシルさんがあたしの名前を知っていようと、ね。


 全部を疑うわけじゃないけれどある程度は疑いますよ、あたし。

 これもあのジジババ達との経験だなぁ。

 微妙だけど、まあ良しとしとこう。


 でもセシルさんが何故か悔しそうにしてるのに引っかかる。

 何が言いたいんだろう。


「このセシルはね、ジルフォードを尊敬してるのよぉ」

「ああー、なるほど。それでですか」


 合点いった。

 なるほどなるほど。

 尊敬してる人が得体の知れない人物と居ることにムカついてんのか。

 でもそう簡単にジルの手を離すこと出来ないんだなぁ、まだ。

 …………ここで三角関係勃発!?

 やだ、ジルもてもてじゃん。

 いや、片っぽあたしだからあれだけどさ。


「……何故あなたはジルフォード様と王都に?」


 眉間に皺が酷いよ。

 そんなに敵視しなくてもいいじゃん。


「あー……、まあ、お時間あればどうぞ?」


 椅子を勧めればあたしから距離を取って椅子に座ったセシルさん。

 おい、距離取るなよ。

 噛み付かないよ。


「簡単に言えばあたしがお世話になってるんですよ」

「ジルフォード様がお世話……?」

「ジル結構世話焼きでしょ。言う事がたまにお母さんっぽいよ」

「ぶふっ、ジルフォードがお母さん」


 笑われてるよ、ジル。

 でもあたしの中でジルはオカンにも匹敵してるよ。


「何が理由で一緒に王都に来たのかは、あたしの自立のためかな。あたし的には」

「あら、ジルフォードはどうするの?」

「ジルはジルでやることあるでしょ?あたしだってしたいことあるし、いつまでもジルにおんぶに抱っこじゃねぇ」

「じゃあアタシの下で働かなぁい?」

「うーん……自由が無くなるのは嫌なんですよねー。冒険者頑張りたいです」

「うふふ、わかるわぁ」

「でもどこを拠点にするにしてもお金ないし、宿に泊まり続けるのも悩むんですよねぇ……。やっぱりウェルセスを暫く拠点にしようかなぁ」

「何故ウェルセスに拠点を構える?」


 天井を仰いでそう言えば黙って話を聞いていたセシルさんが口を挟んだ。

 それを狙ってたんだけどね。


「ジルのお屋敷にお邪魔してるからですよー。ね、これだけ聞けば何故自立目指してるかわかるでしょう?王都に来たのは足掛かり欲しくて来たんですよ。何でかジルもついてきたけど」


 温いジュースに口をつけてにっこりと微笑んでやる。

 あたしの都合は話したぞ。

 ジルの都合はジルに聞いてください。

 聞きたいことはきっと他にもあるんだろうけど、これ以上の情報の開示はしないぞ。


「王都に家を構えるなら商業ギルドねぇ」

「商業ギルド?」

「ええ、商売人は拠点の商業ギルドに所属してるわよ。一般人も不動産、開業に関して商業ギルドで聞くんだし」

「なるほど。明日行ってみようかな」

「家を買うお金が足りないならアタシが貸してあげましょうか?」

「こき使われそうなんで遠慮します」

「あら、バレちゃった」


 新しい情報ゲット!

 にしてもこき使う気だったんですか女神様。

 きょわい。

 ガタンと音を立ててセシルさんが立ち上がった。


「では私はこれで失礼します」

「はい、伝言ありがとうございました」

「…………では」


 お礼言ったら不審な目で見られたんですけど……。

 何故だ。

 セシルさんは自分の分の代金を置いてさっさと出ていった。

 ま、もう会うことはないかな。


「まさかあの堅物が来るなんてねぇ」

「堅物?」

「ええ、セシルはジルフォードを尊敬してる分ジルフォードに近付く人間の選別が激しいのよねぇ。頭も固いし」

「へえー、迷惑ですねぇ」

「尊敬っていうより崇拝よねぇ、もう」

「いいんじゃないですか。ジルが何も言わなきゃ」

「ま、アタシにも関係ないわね。ところでユウナは明日商業ギルド行くのかしら?」

「ええ、ジルと別行動の間にやれることやっておかないと」

「アタシてっきりジルフォードのお嫁さんになるんだと思ってたのよねぇ」

「ぶふーっ」


 口に入ってたジュースを噴き出してしまった。

 汚い。

 噎せながら慌てておねーさんを呼んで布巾を貰いテーブルを拭く。


「な、でそうなるんですか!」

「だってジルフォードと一緒に居る女の子だから」

「そんな要素お互いにないですけどね!」


 急に何言い出すんだこの女神様は……。

 変にビックリした。


「じゃあ女神様は誰かと結婚しないんですか?」

「うーん……アタシも忙しいからねぇ。予定はないわねぇ」

「……というか女神様は旦那になるんですか?それとも嫁?」

「…………さあ、どっちかしらねぇ?」

「待ってください、何でそんな可哀想なものを見る目してるんですか」

「どうしてかしらねぇ?」

「ええー、なんですかそれー」


 お互い笑いあっていると女神様がにっこりと微笑んだ。

 何か……含みがあるんですけど。

 身構えてしまったあたし。

 何か、危険な匂いがする。

 ……危機!?

 なんで!?


「ところで……また女神様ってのに戻ってるわよ?」

「え、あ?あれ、そうでした?」

「ええ、アタシの名前は?」

「く、クラークさん」

「そうねぇ、女神様ではないわよねぇ」


 な、なんだ一体。

 女神様は微笑みながらテーブルに身を乗り出すと、そっとあたしの頬を指で撫でた。

 その手は筋張ってて指の腹も固くて女神様なんだけど、女神様じゃない。


「ちゃんと名前で呼ばないとお仕置きしちゃうわよ?」


 わ、笑ってるのに目が笑ってないですよぉおおおお!?

 なにこれ何これナニコレ。

 女神様の微笑みが妖艶なんですけど!?

 色気ムンムンなんですけど!?

 あたしの顔が真っ赤になってる気がする。

 耳が熱い。

 ふ、不意打ちにも程があるーっ!


「く、クク……クラーク、さん……」


 いたいけな女子をからかわないでくださいいいいいいい!!


「どうせならクラークって呼んでよ」

「はへぇ!?」

「ほら、クラークって」

「クラ、くく……クラーク……さん?」


 目を回しながら状況を整理しようと頑張ってみるけど、一切頭が働かない。

 やめてー、色気攻撃はクリティカルヒットですぅーっ!


「あらら、真っ赤ねぇ」


 くすくす笑う女神様はさっきまでの色気や危険な微笑みじゃなくなっていた。

 その様子にあたしの顔が更に熱くなる。


「か、からかわないでぇぇええええ」


 思わず両手で顔を覆いテーブルに突っ伏す。

 軽くいじめですからねーっ。


「ま、ゆっくりいきましょうか。とりあえずユウナは王都を拠点にしなさいよ」

「は?何ですか急に」

「だってぇ、王都に居てくれないと会えないじゃなぁい」

「そりゃあそうかもですけど……」

「いっそアタシと暮らしちゃう?」

「いやいや、自立目指してるのにお邪魔してどうするんですか」

「ダメ?」


 こてんと首を傾げて見つめてくる女神様あざとい!

 何の誘惑ですかこれ!


「あたしは自立したいんですーっ」


 足元から頑張れって声が聞こえた。

 タータに応援されちゃった。

 あたし頑張る。

 女神様の誘惑に負けない!


「女神様じゃないってば」


 なんでわかったーっ!?

 有益な情報と女神さmクラークさんとの押し問答が終わる頃には闇も深まり……うん、深夜。

 へろへろになりながら宿の部屋へと戻りました。

 ちょっと今日は疲れたよ……。


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