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ゲームの世界で新しい人生?  作者: 冬生 羚那
行くぞ街の外!
13/26

十三話目

 てくてくと道を歩き、狼をしばきゴブリンを蹴り飛ばしながら王都を目指してるあたし、ユウナでっす。

 お供は魔術師のジルと召喚獣のアルジェンタータことタータ。


 ウェルセスの街を出て早3日。

 もう少しで王都ヴォルベルクに着くらしい。

 曖昧なのはあたしのMAPだと歩いた後でしか確認が出来ないからっていうのと、ジルの記憶と街で買った地図を見ての判断なせい。

 この真っ黒なMAPをいつかは綺麗な地図にしてやるぜ!

 と、意気込んでみるけどどうかなー?

 出来るかなー?

 出来たらいいなー。

 ま、なんにしろまずは王都に行って情報だとか色々集めないとだしね。

 敵を倒す手段も、殴る蹴る以外を増やしたい。

 ナイフは辛うじて使えるって感じだから、強い敵と遭遇した時が怖いんだよねー。

 今でも懐に飛び込むにはちょっと勇気がいるし。

 それに、ナイフの持ち手が悪くなってるのがわかった。

 多分あたしの握力のせいなんだと思う。

 なんせ握った手の形に歪んでるからね、持ち手。

 ナイフを使った回数は数えるぐらいなのに。

 一応メインの石礫はそこら辺の石を拾えばいいからコスト的にも楽なんだけど、その場その場で拾うにも限度あるし、隙を作るからねー。

 こうやって考えると戦闘手段に悩む。

 出来たら近距離は遠慮したい。


「ユウナ?」

「あ、なに?」

「いや、何か難しい顔してるからどうしたのかと思って」

「ああ、武器をね、どうしようかなって」

「なるほど……。ユウナの力に負けないのじゃないとダメだもんね」

「うん。だからって拳もなーって思って」

「王都の武器屋で色々模索するしかないね」

「やっぱそうだよね」


 ジルとの会話にうんうん頷くあたし。

 タータもあたしの肩で同じように頷いてる。

 クソカワでござる。


「あ、ほら。王都が見えてきたよ」


 タータの可愛さに悶えてる間に王都ヴォルベルクが見えてきたようだ。

 ここから見えるちょっと尖った屋根風の何かは王城の天辺らしい。

 今あたしたちがいる場所は小高い丘の上のようで、この先は下り坂だとジルが教えてくれた。


「王城とか見学出来ないのかなー」

「うーん……めんどくさいよ?」

「何が?」

「手続きとか周りの反応とか人間とか権力とか」

「オッケー、行かない」


 てくてく歩きながらそんな会話を楽しむ。

 お城とか興味あったけど物凄くめんどくさそうだから諦めた。

 人間関係ってめんどくさいよね!

 冒険者ギルドであったあれそれだけでもうお腹いっぱいです。

 ついでに権力者は好きじゃないんです。

 まともな人ならいいけど、たまにいるよね。

 権力を笠に着て威張り散らす人。

 あれが嫌い。

 だから近寄らないに限るよね。

 とかなんとか考えてたら王都が見下ろせる所まで来た。

 うん、でかい。

 流石王都ってだけある。

 どうやら正面入り口に向かってるようだ。

 そしてその正面入り口から王城まで道があった。

 これ攻め込むの楽じゃね?ってぐらい広めの一本道がある。

 わかりやすくていいんだろうけどね。

 後は横に一本大きな道がある。

 ちょうど十字路になってるみたい。

 その十字に道が交わってる場所は広場みたいだ。

 噴水がちらりと見えてる。


「後一息だね」

「うん、楽しみ!」




 王都へは難なく入ることが出来ました。

 しかし人が多い。

 ウェルセスの街も人多かった気がするけど、ここは流石王都と言うべきか、更に人でごった返してる。

 圧倒される。

 もう夕方なのに辺りは人、人、人だ。

 ジルのマントを掴んでぽかーんと口を開けてしまった。


「さ、冒険者ギルドに行って宿を探そう」

「へ、あ、うん」


 迷うことなく歩くジルに半ば引っ張られる形で王都の道を歩く。

 今はマントじゃなくてジルと手を繋いでる。

 ジルはいいお母さんじゃなかった、いいお父さんになれるよ。

 あっちに可愛い外観のお店が。

 こっちからは美味しそうな匂いが。

 あ、あっちには花屋さんがある。

 ジルに引っ張られながらも視線があっちこっちしちゃうね。


「ほら、着いたよ」


 いつの間にか冒険者ギルドに到着してた。

 ウェルセスのよりでかい。

 縦にも横にもね。

 人が沢山集まるからだろう。


 さて、ここで冒険者ギルドに来た理由を話そう。

 なんのことはない。

 手持ちの狼達を提出する依頼があるかの確認だ。

 依頼があれば受けて狼達を提出するだけ。

 もし無くても素材の持ち込みとしてお金が貰えるって寸法だ。

 あたしの持ち金少ないからね。

 地道に稼いでいるのですよ。


「あったあった」


 依頼の紙が貼りだされた掲示板からお目当ての依頼を見つけて内容を確認する。

 受け付けで話をして狼を提出。

 ギルドカードを渡して水晶に通す。

 はい、終了。

 簡単だねっ。

 1日の間に同じ依頼を2回受けられないから、毎日ちまちま通うことになるんだけど、小遣い稼ぎってことで。


「お待たせー、ジル」


 受け付け脇の椅子に座ってたジルに声をかけたんだけど、何か……ジルの周辺に人がいない。

 遠巻きに見てるって感じ。

 しかもひそひそと小声で話してる。

 あたし的には感じ悪いんだけど、ジルは気にしてる様子がない。

 慣れてるのかな?

 ……嫌な慣れだね。


「ああ、じゃあ行こうか」

「お腹すいたー。あ、でも宿ってどうするの?」


 周辺の様子を無視してジルと普通に話してたら物凄い変な目で見られてる。

 ちょっと不快。

 いや、物凄く不快。

 ジルの手を引っ張ってさっさと冒険者ギルドから出る。

 ジルを見上げたら苦笑いであたしを見てた。

 あたし悪くないもんね、ふんっ。


 2人で暫く厄介になる宿に向かう。

 ジル曰く、高級ではないけれどサービスもいいし綺麗な宿らしい。

 ついでにご飯が美味いとのこと。

 やったね!

 穴場の宿なんだよと説明してくれるジルと宿の受け付けを済ませる。


「お部屋はどうされますか?2人部屋もありますよ」


 この質問にジルが挙動不審になったのは面白かった。

 受け付けのお姉さんも笑ってたからからかわれたんだろうな。

 勿論ちゃんと別々の部屋にしてもらいました。

 置いておく荷物がないから部屋だけ見せてもらって食堂へ向かう。

 宿屋の1階は食堂になってて、夕飯の時間である今は宿泊客だけじゃなく、食事をしに来ている人もいるらしい。

 ジルと席につき食事を待つ。


「で、これからどうするの?」

「うーん……凄く悩んでる。」


 肘をテーブルについて手を組み、そこに顎を乗せて唸る。

 狼やゴブリンじゃ稼ぎもたかが知れてる。

 だけど長く使える武器もないのに無謀なことは出来ない。

 でもいい武器を買うにはお金がいる。

 悪循環だね。


「お待たせしましたーっ」

「まあ、食べようか」

「わーい!いただきまーっす」


 運ばれてきた料理はキャシーさんの作った料理とはまた違って美味しかった。

 でも主食はやっぱりパンなんだよねぇ……。

 お米食べたい。

 美味しいけど。

 ああ……TKG食べたい。

 TKG知ってる?

 卵かけご飯。

 卵……醤油……。

 探しに行きたい。

 そして食べたい。


「ユウナ、顔」

「はへ?」

「なんとも言えない顔してたよ」


 ふむ、………てへっ。

 そういうこともあるよね。

 食事も終えて部屋へ戻る……と見せかけてジルの部屋にお邪魔してみた。

 ジルは複雑そうな顔してたけど、仕方ないよね。

 これからの話したいし。


「まずはお金を貯めたいと思います」

「僕が持ってるじゃないか」

「いつまでもそれじゃダメでしょ」

「そう?結構持ってるから心配いらないんだけどな」

「ここら辺でいい稼ぎ場ないかな」

「確か初心者用ダンジョンがあったはずだけど」

「おっ、じゃあそこ行ってみようかな」


 いい情報が出ましたよ奥さん。

 ダンジョンといえばレアアイテムもありそうだし戦闘の練習にもなりそう。


「えー」

「なんでー」

「僕が暇になっちゃうじゃないか」

「そこなの?」

「そこだよ」


 まさかの駄々こねられた。

 でもジルは冒険者としてもランク高いし、実力もあるし……ううーん。


「じゃあ鉱山行きたい」

「鉱山?」


 初心者用じゃつまらないというならあたしの実にもなる武器素材拾いに行こうか。

 そしてそれで武器を作ってもらえばいいんだ。

 そうジルに言えば考える素振りを見せた後頷いた。


「じゃあ近くの鉱山……廃鉱かな?それがあった気がするからそこはどう?」

「うん。そこまでどれぐらいかかるかな?」

「北に2日ぐらい……かな」

「じゃあ一応の次の目標はそこへ行くってことで」

「すぐ行かないの?」

「武器屋とかちょっと見てから行きたいから」

「そっか。じゃあ明日は王都を散策しようか」

「はーい」


 元気よく返事してまた明日ね、とあたしは自分の部屋へと戻る。

 宿は楽だけど拠点欲しいよなぁ。

 それにお風呂も欲しい。

 個室にシャワー室はあったけれど、やっぱり浴槽がなかった。

 タータとシャワーを浴びて椅子に腰掛ける。

 タータの水気をしっかり拭ってからポシェットに入っていたボールを渡す。

 楽しそうに転がして追いかけてる。

 なんて可愛いんでしょっ。

 暫くタータと遊んだ後、指をパチリと鳴らしてステータスを確認すれば、新しいスキルを覚えていた。


 《属性魔術》各属性の魔術を行使することが出来る。想像と創造により威力も仕様も変わる。


 ほう?

 ということはこれから魔法が使えるってことか?

 やったね!

 ん?

 下の方に続きがある?


『現在使用可能属性:火、水、地、風、無』


 うん?

 無って何だ?

 無属性?

 わかんないんだが……。

 まあ、追々知ってけばいいか。

 なんにしろ定番の四属性が使えそうでありがたい。

 ただ、上がったレベルに対して覚えたスキルが属性魔術1つってどういうことだろう。

 もしかしてレベル1上がったのに対して属性1つ使えるようになったのか?

 でも、3しか上がってないのに4つ?

 なんだろうこれ……。

 ちょっとよくわからない。

 どうしよっかな……。

 あ、創造主に手紙書けばいいんだ、そうだ。

 いそいそとポシェットからレターセットと羽ペン、インクを取り出す。

 さーて……何て書こうかな。


『創造主へ

 王都にやっと到着しました。でもお金がないので辛いです。

 向こうの知識も欲しいところです。お米食べたい。

 それから召喚獣の卵、ありがとう。可愛い子が生まれました。』


 ……………他に何書けばいいんだ?

 あ、スキルのことと怪力に関してのことも書いておこう。

 使えるものは創造主でも使え。

 思いつくままに手紙を書き、封筒にしまってからポシェットに戻す。

 これで創造主が気付くのかはちょっと疑問だけど、まあ教えてもらえたら儲けってことで。

 悩みながら手紙を書いているうちに結構な時間が過ぎていたっぽい。

 タータがベッドの上で丸くなっていた。

 部屋の明かりを消してベッドに潜り込む。

 タータを押し潰さないことを祈っとこう。

 あたし寝相悪かったっけ……?

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