好きな人
とある昼休み。
二人の友人がやってきた。
名前は香奈子と由紀恵。
いつも通りの面子で机を囲み昼食をとっていた時だ。
「━━久保のこと大好きになりそう~www」
「!?」
突然聞こえてきた大声。
彼女はいわゆるメンヘラと言われる部類でそのような言葉は割とよく聞く。
でも、今回の相手が久保なんて!!
「おーい、理緒?まともに聞くなよ?動揺しすぎ」
由紀恵に言われて箸を止めてしまったことに気づいた。
だが追い討ちをかけるように香奈子が言った。
「案外ノリ気だったりしてね」
「~~っっ!?」
思いっきり舌噛んだ……。
「香奈子がそんなこと言うから~」
「やだな、冗談に決まってんでしょ」
涙目になりながらチラッと久保のほうを見ると何故か目が合ってしまった。
「うわっ」
私は咄嗟に目をそらしてしまい、やっちまった……、と早くも後悔した。
二人の友人はもうほかの話題に移っている。
私はこのもやもやとした気持ちを抱えながら、チャイムが鳴る時まで友人との会話で気を紛らわせていた。
授業中。
いつもは子守唄となっている教師の話が今は子守唄の役割すらしていない。
ああああ!どうしたらいいんだ。
いや、どうすることも出来ないんだけどさ。
でも、そのままにしておけるわけじゃないし。
もう、いっそ聞いちゃう?『今日、大好きって言われてたよねwwどんな気分よwww』みたいな。
なんで墓穴掘ってんだよ!!
「おーい、片岡ー」
「あ、はい。なんですか?」
「なんですかじゃないだろ。この問題解いてみろ」
やべぇ!全然話聞いてなかった!
「わ、わかりました……」
えーっと、あれがああだからで、えっと……。
って久保、こっち見んなよ!?
その、なんでそんなに時間かかってんの?って顔やめろよ!?
いや、今は問題に集中だ。
うーん……。
「a>bですか?」
「よし、よろしい」
よ、よかった……。
その後の授業もそんな感じで散々なことになった。
それも全部久保のせいだ!!
その日の夜。
スマホを見ると一通のLINEが入ってた。
相手は絶賛悩みのタネである久保だった。
『今日、おかしかったよ?大丈夫?』
アンタのせいだよ!
心の中でツッコミを入れ、なんともない風に返す。
『大丈夫だよー!ちょっとぼーっとしてただけだから』
『それならいいけど……』
やっぱり聞こう、このままじゃイヤだ。
『そういえば、昼休みん時大好きになりそうー!とか言われてたじゃんwww嬉しかったんだろ?www』
うぅ、これで嬉しかったなんて帰ってたらどうしよ……。
━━ピロン
レスきた……。見るの怖いけど見ないと……。
ええい!ままよ!!
『嬉しいわけないだろwwそれに俺好きな人いるもんwww』
「え?」