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エピローグ
教室には30人くらいの生徒が座っている。教壇に女性教員が立ち、その横に一人の女の子が紙を広げて立っている。教室の後ろには父兄が30人ほど。
「〜ボクのお母さん〜2年1組萩原俊恵。ボクのお母さんは女の人なのに自分のことをボクと言います。だからボクも自分のことをボクと言います。なんだかおかしいからそう言うようにしています。お母さんはかんごしさんをしています。病気の人の心をささえる大切なお仕事だと、お母さんは言います。ボクもお母さんみたいなかんごしさんになりたいです。」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ。生徒たちの拍手。
「はい。よくできました。」
女性教員が女の子を褒める。
ぼくと由佳の娘はしゅんくんと同じ8歳になった。大きな病気もせずここまで大きくなってくれた。
須藤くんの由佳への電話
ぼくの五回のプロポーズ
結婚式で流した二人の涙
しゅんくんの日記帳
「あぁっ、そうか。この日のために、みんなこの日のためにあったのか。」
心の中でそう呟き、隣にいる由佳と微笑みあう。俊恵は席に着くなりチラとこちらに振り返りニコッとする。